駄目親父としっかり娘の珍道中
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第83話 無邪気な子供は時々残酷な事を楽しむ事もある その1
前書き
お久です、最近仕事や私事が忙しく執筆もまともに出来ない状態が続いております。
今回ちょっと長めになりそうだったので区切って投稿する事にしてみました。
相変わらずグロ注意な展開ですのでそう言うのが苦手な人は戻るボタン推奨でお願いします。
平気な人はそのままお進み下さい。
これは夢か? 夢なら覚めてくれ!
その場に居た局員の誰もがそう願っているに違いない。
何故なら、今目の前に立っているのは明らかにおとぎ話に出てきそうな化け物か悪魔の類に分類される存在なのだから。
ただ、違うとすれば、その悪魔の外見はまだ年端もいかない幼い少女の様な容姿をしている。
それだけであればどれ程良かっただろうか。何しろ、そんな年端もいかない少女の一体何をしたかも分からない突然の攻撃によりその場に居たであろう局員のおよそ半数が殺されたのだから。
先ほど展開した人数がおよそ50人だとするならば、先ほどの一瞬で25人が殺害された事になる。
しかも、内数人はその少女の地団駄により醜い肉塊へと変貌させられている。
これを、化け物もしくは悪魔以外の何と呼称しろと言うのか?
「お前らのせいで、私は大事な家族を・・・大切な人を失くした・・・だから・・・お前ら・・・みんな・・・ココデコロシテヤル!!」
少女から発せられた言葉がそれだった。最期の・・・一番聞きたくない所に関しては完全に彼女の心が壊れた為か不気味に聞こえてしまった。
まるで悪魔の囁きにも聞こえた。
「ひ、ひひひ・・・怯むなぁ! 数ではこちらが上なんだ! 一斉攻撃で沈黙させろ!」
部隊長の指示を受け、我に返る。
そうだ、いかに戦闘力が高くても所詮は一人。しかも子供だ。
俺達は管理局の中でも特殊訓練を施されたエリート部隊。魔力ランクからしてもS級は当たり前の精鋭揃いだ。
こんな子供一人に遅れを取る筈がない。
そう言い聞かせ、一斉に手に持っていたデバイスの切っ先を少女へと向ける。
「良いか、被害は気にするな! 最大魔力で一斉砲撃だ! 撃てぇ!」
合図と同時に速攻でフルチャージした魔力砲を放つ。総数25発の魔力砲を食らえばどんな魔導士でも立っていられる筈がない。
まぁ、この世界では魔力砲のチャージにかなり苦労をさせられるのであらかじめチャージした魔力をカートリッジに装填し、放つ際にそれを使用した。
威力はお墨付きだが半面、デバイスに来る反動も馬鹿にはならない。余り使いたくはない戦法だったのだがこの場面では使わざるを得ないと言え様。
「やったか?」
「へっ、おどかせやがって・・・何がここでころしてやる・・・だ! 俺達精鋭を舐めるんじゃねぇ!」
魔力砲を放ち、黒い爆煙が立ちこもる状態で、誰もが勝利を確信していた。
あれを食らって立っている筈がない。そう、誰もが確信を持っていたのだ。
目の前に居る局員の頭部が吹き飛ばされるその瞬間までは―――
「う、うわああああああああ―――!」
一番近くに居た局員の絶叫が木霊する。それに連鎖反応するかのように全員が頭を吹き飛ばされた局員を視界に居れた。
首から上がごっそりとなくなっていた。切断とか力任せに引きちぎったとか、そう言う部類の傷じゃない。
圧倒的高威力の魔力砲で焼き切られた感じの傷だった。
全員の思考が恐怖一色に染まって行く。
立ち籠る黒煙の中から再度それが放たれた。今度は一発じゃない。
まるで砲撃の雨あられだ。
急ぎ魔力結解を展開したが無駄だった。その砲撃は結解をぶち抜き、術者の心臓を貫通した。
他では腰辺りから真っ二つにされる者も居たし、両手両足に貰い五体不満足になった後に頭部を消された者も居た。
とにかく、皆碌な死に方をしなかった。誰もが見るも無残な、とても残酷な死に方をしてしまったのだ。
「あ・・・あぁぁ・・・あああぁああぁぁ―――」
残っていたのは部隊に指示を出していた男一人だった。他の仲間は皆先の砲撃で皆即死していた。
有り得ない。こんなの有り得る筈がない。
時空管理局の局員の中でも選りすぐりのエリートで構成された部隊がこうも呆気なく殺されてしまうなんて。
信じたくはなかった。夢ならば覚めて欲しかった。だが、現実は非情だった。
黒煙が晴れたそこに居たのは、先の砲撃を直撃したにも関わらず無傷同然の姿の少女がそこに立っていた。
***
目の前の連中から魔力砲の一斉掃射が来るのは何となくわかった。どの道、私には意味がない。
魔力攻撃など、私にわざわざエネルギーを与える行為に過ぎないのだから。
連中がくれると言うのなら有難く頂戴するだけ。そして、貰った分のほんの少しだけお返しをすれば良いだろう。
そうすればこいつらは殺せる。
魔力砲が命中した際に周囲を黒煙で覆われてしまい視界が塞がれたがこれも意味はない。
連中の魔力を感知すれば位置の特定など簡単だ。
ふと、反撃しようとした際に、連中の言葉が聞こえてきた。
「へっ、おどかせやがって・・・何がここでころしてやる・・・だ! 俺達精鋭を舐めるんじゃねぇ!」
そんな言葉が聞こえてきた。
精鋭? 詳しい意味は知らないが要するに普通の奴よりも格段に強い連中って事で良いんだろうか?
どの道、私からしてみれば雑魚でしかない。だけど、あんな事を言われたのは少しムカつく。
さっき無線みたいなので指示をしていたあの男もだけど、あの男は最期に取っておく事にする。
数でどうにか出来ると誤解してる奴に社会の厳しさを教えてやろう。
でだ、最初の生贄にと選んだのはさっきのムカつく言葉を放った奴だ。
相当自信があるみたいだし、それじゃ犠牲者第一号となっていただきますよ。
私は右手をそいつの頭部に合わせ、人差し指を伸ばすと、その切っ先に魔力を集め、放った。
一瞬の閃光、それが指先から放たれ、一瞬だけ激しく輝き、消えた。
それとほぼ同時に、標的にしていた局員の魔力感知が出来なくなった。
黒煙でどうなったかは分からないが、恐らく手ごたえはあっただろう。
「う、うわああああああああ―――!」
黒煙の向こうで局員達の悲鳴が聞こえて来た。どうやら命中したんだろう。
大の大人がビビりまくって大声挙げて喚き散らすなんて情けないったらない。こちとらまだ年端もいかない子供なんだからもう少し大人の威厳ってのを見せて貰いたいところだ。
まぁ、こんな薄汚い大人たちから学ぶ事なんて何一つとしてないのだけど。
今度はさっきと同じ位の力を込めて複数の閃光を放った。狙いなんてつけない。ただただ当てずっぽうに放つ。それだけで良い。
それで当たって倒せれば儲けものだし、倒せなくてもその時は【直接】やれば良い。
時間からして数分と言った所だろうか。
余りにも気軽に撃てるものだからついつい奮発して撃ちまくってしまった。
未だに黒煙が晴れず流石に鬱陶しくなってきた。だけど、どうやら粗方の標的は片づけられたみたい。
別に狙って撃った訳じゃないんだけど、まぁやれたんだし其処は深く追求しないで置くとしよう。
残っている反応は一つしかない。反応からして例の命令をしていた奴のようだ。
残ったこいつも同じ様に消そうかと思ったが・・・止めた。
こいつには最期まで残った栄誉として直接手を下してやるとしよう。
うん、それは名案だ。私の正確な狙い〈嘘〉をかわして生き残ったのだからそれ位のサービスはしてやらないと。
あぁ、私ってば何て優しいのだろう。余りの優しさに江戸中の人たちが涙する事だろう。
はいはい、ふざけるのは此処まで。いい加減こいつら雑魚と付き合ってても時間の無駄だし、さっさと最期の処理を済ませるとしますか。
そう思い、私は目の前の黒煙を片手で軽く振り払って前へと勇み出た。
***
来る、奴が来る!
すっかり戦意を喪失した隊長へゆっくりと少女が歩み寄ってくる。
まるで死刑宣告だ。
しかも、本人もそう思っているのか、嫌に楽しそうにゆったりと歩いて来る。性質が悪いなんてもんじゃない。考え方からしておかしいとしか言いようがない。
まずまともな神経を持つ人間がこんな惨劇を起こせる筈がない。それも年端も行かない子供なら尚更の事だ。
最早勝ち目云々の話ではない。それどころか生きて此処から戻れるかどうかすら危うい程だ。
戦力の殆どが一瞬にして消滅。しかも頼みの魔力攻撃が全く通じないと来た。
恐らくバインドも無意味だろう。先も見たが対S級ロストロギア用のバインドを苦も無く引き千切った相手に対人間用のバインドなど意味がない事は考える事もなく分かる。
「数じゃ、どうにもならなかったね。今の気分はどぅ?」
質問をされたが隊長に答える余裕などない。それを認識して質問を投げ掛けて来たのだとしたら意地悪にも程がある。
無論、隊長にその質問の返答をする気力など無いに等しかった。ただ茫然と目の前に起こった惨劇を目の当たりにしながら口をパクパクし続けている。
そんな光景を見て初めは面白半分にそのまま放置しようと思ったが、時間の無駄だと判断し、正気を取り戻させる為にまずは男の右足に向かい思い切り自分の右足を振り下ろした。
グシャリッ!! 肉を潰したかの様な音と共に男の足は潰れ、体から離れた。
その直後、放心状態だった隊長の目の色が戻り、同時に激痛が体中を駆け巡りだし、奇声を挙げながら転げまわりだした。
「質問に答えてくれない? 私はあんたの盆踊りなんかに興味ないんだけど」
痛みに転げまわる光景を盆踊りと蔑み、まるでゴミでも見るかのような視線を向けて来た。
まるで、何時でも殺せるのを敢えてわざわざ生かしてあげてると言った具合だ。
「く・・・狂ってる! 貴様・・・本当に人間なのか? 人間の子供が・・・なぜ、こんな狂気じみた事を平然と出来る!! この・・・悪魔が!!」
痛みを堪え、涙目になりながらも男は叫んだ。叫ばずにはいられなかった。そんな男の顎になのはの手が差し向けられる。
ギリギリと音を立てて潰れるか潰れないかの瀬戸際の力で男の顎を掴み上げた。
「狂ってる? 悪魔? 自分の事を棚に上げて良く言うね。最初にやったのはあんた達の方でしょ? 私は寧ろ被害者だよ。あんた達のせいで、私は大事な家族を亡くしたんだよ。その責任をどう取るつもりなの?」
「ふが・・・ふがもがふが!!」
弁解しようとしているようだが、顎を掴まれている為に思うように喋れない。
突如、鈍い音と共に男の顎が砕かれた。もうこいつから聞く事なんて何一つない。それに、もうこいつに用もない―――
「最期に何か言い残す事はある? ないならそのままバイバイするけど」
(この・・・クソガキ!!)
男は咄嗟に腰のポーチに手を伸ばす。そして、中に閉まっていた物を手に取り、なのはに向けてそれを突き出した。
肉の裂ける音と共に男の持っていた小振りのナイフがなのはの右胸に突き刺さる。
刺さった箇所から鮮血が拭き出し、辺りに飛び散っていく。
(や、やった! 確実に心の像に刺さった! これで、この悪魔もお陀仏に―――)
「お陀仏になる・・・そう思ってるでしょ?」
「!!!!!」
男の予想とは裏腹に、ナイフを刺されたと言うのになのはの表情に変化はない。嫌、寧ろ先ほどより輪を掛けて凶悪な笑みを浮かべだした。
その刹那、ナイフを突き刺した男の手を掴むと、そのまま力任せに引き千切ってその場に放り投げた。千切られた男の腕があった箇所から血が噴き出す。
「―――――!!!!」
「酷い事するねぇ・・・結構痛かったよ」
言いながら、なのはは自分の右胸に突き刺さったナイフを掴むと、何事もなかったかの様に抜き取り、その場に捨ててしまった。
刺さった箇所からは、血が流れ続けていたのだが、それも少ししたら塞がり、元通りに治ってしまった。
(回復魔法! 嫌、違う! 最早そんな原理の話じゃない! こいつの自然治癒能力とでも言うのか? こんな怪物・・・俺達にどうやって捕獲しろって言うんだよ!!)
「このバリアジャケットって・・・案外不便なんだね。魔法攻撃はある程度防げるみたいだけど、さっきのみたいな刃物を防ぐにはもうちょっと魔力を注いで強化しないと防げないなんてね」
刺さった箇所の空いた穴を摩りながらなのはは呟く。全くダメージを負っていない。それどころか、先の不意の一撃のせいで彼女の怒りが更に増大したかの様に思われる。
「さてと・・・覚悟は出来た?」
最後勧告と共に、なのはの腕に魔力が集まっていくのが見える。集まった魔力の束はやがて腕に纏わりつき、青白いオーラを放ち始めた。
「出来てなかったんなら・・・ご愁傷様」
そう言い残し、魔力を貯めた方の腕を男の顔に取り付ける。そして、ため込んだ魔力の一切を男の頭部へと一気に注ぎ込んだ。
余りに膨大な量の魔力を一気に注がれた為か、男の両の目は潰れ、脳は破裂し、頭蓋は砕け、その残骸が口から垂れ流し状態となった。
完全に息の根が止まったのを確認したなのはは、掴んでいた男の頭部を何の未練もなく握りつぶした。
頭蓋が砕けていた為にまるで果実を握ったかの様に意図も容易く男の頭部は潰れ、頭部を失った体は生気を失い重力に従い動かなくなった。
屍と化したそれをなのははその場に放り捨て、空を見上げた。
空には、まだ先ほどやってきた管理局の戦艦が漂っている。
恐らく、先の惨劇は既に連中の目に届いている筈。
だが、そんなの関係ない。
今のなのはにとっては、奴らは只の標的でしかないのだから。
その2へつづく
後書き
流石にやり過ぎたかも知れない(汗)
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