シベリアンハイキング
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第一章 カラケレイト
踏破する者
水面を力強く踏み締め、男がこちらに来た。近づくにつれ更に不思議なことにその男、体が若干発光している。身なりは下半身を粗末な布を腰巻きの様に巻き付けただけで上半身は裸である。体格は決して大きくは無いが筋肉は密度を感じさせる肉付きである。異教徒の行者かとも思われるがその点を熟考するには手がかりが無さすぎる様に思えた。散弾銃を構えるユスフの体が一層固くなる。とにもかくにもまず、この男は自分に害をなす者なのか。その一点が頭の中を占めた。もし、もう一歩近づくならば引き金を引くしかない。そう思った時である。その男はユスフの目を見て語りかけてきた。その男、名をフブルと言い彼の国の言葉で“踏破し、頂に立つ者”を意味するらしい。西よりこの地に逃げて来たという。逃げて来た理由は犯罪を犯しての逃亡か、異教徒故に土地の教会から目をつけられて追われたか。いずれにしても理由は話さなかったが、凡そそんな所だろう。
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