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真田十勇士

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巻ノ九十九 さらば都その五

「近頃な」
「はい、前よりもです」
「見張りが多くなっています」
「紀伊を守る浅野家だけではなくです」
「伊賀者も増えています」
「服部殿ご自身も来ておられますな」
「かなりの気を感じます」
 十勇士達が幸村に口々に述べた。
「そこまで我等を警戒しておるとは」
「幕府はそこまで我等を危険だと思われていますか」
「そうなのでしょうか」
「我等に対して」
「真田は天下を望まぬ」 
 これは決してだとだ、幸村は言い切った。
「あくまで家を残したいだけじゃ」
「既に家は残っています」
「源三郎様が継がれています」
「その点はもう憂いがありませぬ」
「何も」
「そうじゃ」
 その通りというのだ。
「しかしじゃな」
「はい、それでもですな」
「幕府は我等を警戒していますな」
「大殿についても」
「そのうえで我等も」
「力じゃな」
 幸村は何故幕府は自分達を警戒しているのかわかっていた、それがどうしてなのかを。
「我等の」
「我等の力ですか」
「それを恐れてですか」
「常に警戒しておる」
「そうなのですか」
「並の者なら流罪にすればな」
 それでというのだ。
「終わりじゃ、しかし我等の腕を見てじゃ」
「一騎当千の」
「それをですか」
「父上の軍略もな」
 これも含めてというのだ。
「それにどうやら拙者もな」
「それは当然かと」
「殿の軍略もまた天下のものです」
「天下の軍略ですから」
「幕府も警戒します」
「そもそも真田家は警戒されておる」
 幕府、つまり徳川家からというのだ。
「戦で何度も破ってきた」
「それだけにですな」
「我等は常に警戒されている」
「そうなのですな」
「そうじゃ、おそらく我等が天下からいなくなるまで」
 まさにその時までというのだ。
「幕府は警戒し続けるやも知れぬな」
「ですか、天下からいなくなるまでですか」
「我等がですか」
「その時までは」
「特に父上であるが」
 天下の軍略家である昌幸はというのだ。 
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