指
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第三章
「俺の術で」
「今回はそれで役割分担といこう」
「はい。そういうことで」
「さて。見つかればだ」
それでだというのだ。
「次の段階に進もう」
「逮捕にですね」
「そうだ。全てはそれからだ」
犯人の逮捕からだ。今回ははじまるというのだ。
「本来ならそれで終わりだがな」
「ええ、俺達の仕事は」
「だが今回の仕事はな」
「むしろそこからですね」
「異常者の心理か」
役は考える顔になって述べた。
「これまで何度かそうした犯罪者を相手にした仕事はあったがな」
「それでもですね」
「理解できない相手も多かった」
「今回もですかね。それは」
「理解できない相手はいる」
それが精神破綻者や人格障害者ならだ。尚更だった。
「サイコパスなりカルト教団なりな」
「いましたね、本当に」
「今回はどうだろうな」
「まあ捕まえればわかることですね」
本郷はこう役に応えた。そうしてだった。
役が放った式神達の報告を待った。これは役が式神の目を通じて見ることによって行われる。
すると暫くしてだ。役はこう本郷に言ってきた。
「見つかった」
「あっ、そうですか」
「この町の端にあるだ」
まずはおおよその場所が言われる。
「屋敷だ」
「屋敷の中にいるんですか」
犯人がだとだ。本郷も言う。
「そこですね。今もいますか」
「いる。ただしだ」
「犯人はやっぱりあれですか」
「見ればわかる。驚かないな」
「今更何を見ても驚かないですから」
それだけのものを見てきたからだ。本郷にしろ役にしろ様々な惨たらしい現場を見てきている。それは人によって行われたものだけではない。
だからだ。こう役に答えたのだった。本郷のその返事を聞いて役も納得した顔で頷いた。
そのうえで町の端にあるその屋敷に向かった。そこは立派な門と瓦のある壁に囲まれた二階建ての和風の見事な屋敷だった。庭もかなり見事で手入れも行き届いている。
その立派な門と壁の上から見える松を見てだ。本郷はこう言った。
「とりあえずはですね」
「いい家だな」
「はい、かつての地主さんとかの屋敷ですかね」
「そういうところだろうな。この屋敷の周りはな」
見回すとだ。そこは。
田が広がっている。緑の絨毯に見える見事な田がだ。この屋敷の他にも数件の家があるが屋敷が図抜けて立派な造りをしている。
その屋敷を見てだ。役は言うのである。
「田が多いからな」
「ですね。それで今はですね」
「普通の農家だろうか。それとも」
「他の仕事をしてるかですかね」
「どちらにしろ裕福な家であることは変わりない。屋敷の中もだ」
「立派なんですね」
「中に入ればわかる」
このこともだというのだ。
「確かに立派だがそれでもだ」
「とんでもないことになってるんですね」
「そういうことだ。ではだ」
役はまた懐から札を取り出した。その札を自分と本郷に貼った。すると。
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