NARUTO日向ネジ短篇
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【守り続けたいもの】
前書き
アニボル18話にネジおじさんが居たら……という妄想です。
「──ヒマワリの様子はどうだ、ボルト」
「あ……ネジおじさん、来てくれたのか」
ヒマワリが風邪を引いたと聴いて、ボルトが看病を手伝っているヒマワリの部屋にそっとやって来るネジ。…ヒナタの方はヒマワリの為に色々と買い出しに行っているらしい。
「先週プールでめっちゃはしゃいでたもんなヒマワリ……。おじさんと久し振りに遊べてうれしかったんだよ。その反動でカゼ引いちまったんだと思うってばさ」
「そうだな……ヒマワリはとても楽しそうにしていたとはいえ、責任を感じてしまう」
額に濡れタオルを置かれ、熱が出ているせいで頬が赤く息が苦しそうにベッドに寝ているヒマワリに、ネジは申し訳なさそうな表情を向ける。
「別におじさんのせいじゃないって、しょうがないってばさこればっかりは」
「ネジ……おじ、さん……?」
眠っていたヒマワリが、ふと目を覚ます。
「あぁ……ごめんよヒマワリ、起こしてしまったか?」
「おじさん……ヒマのために、来てくれたんだ……。うれしい」
掛け布団から少し顔をのぞかせたまま、ネジに笑みを向けるヒマワリ。
「……おじさんは来てくれても、父ちゃんは帰って来ないけどな」
「ボルト……それは言わないでやってくれ」
火影で多忙な父親に対して不満げなボルト。
「ネジおじさん……ヒマ、ハンバーグ食べたい……」
「ヒマワリが元気になったら、俺がとびきり美味しいハンバーグを作ってあげるから、ちゃんと風邪を治そうな。……今はとにかく、ゆっくりお休み」
「うん……」
ネジの優しい言葉を受けて、ヒマワリは再び眠りについた。
「──ヒマワリがこうしてカゼで弱っちゃってるとこ見ると、あの時のことがウソみたいに思うってばさ」
「ん? あの時の事……?」
ボルトがふと呟いた言葉に、ネジは首を傾げる。
「ほら……父ちゃんの火影就任式の日の──」
「あぁ……ヒマワリが一時的に白眼を開眼させた日でもあったな」
ボルトは思い出すだけで身震いし、その様子を見てネジはつい笑ってしまいそうになるのを堪えた。
「あの時は……マジで死ぬかと思ったってばさ……。ある意味、母ちゃんより怖かったからさ」
「俺はその場には居なかったとはいえ、話に聴いたヒマワリの柔拳ロックオンは、あのナルトですら一撃で動けなくなる程の威力だからな……」
「あの時からおれ、二度とヒマワリを怒らせたりしないって心に決めたんだ……」
「あぁ、賢明な判断だよそれは」
ボルトとネジが小声で話している所へ、ヒマワリの部屋のドアが勢いよく開く。
「ヒマワリ、大丈夫かってばよ…!?」
「と、父ちゃんっ?」
「ナルト……?」
七代目火影のナルトが心配そうな面持ちでヒマワリの部屋に入って来る。
「ヒマワリが熱出したって聴いてよ、居ても立ってもいられなくて──」
「どーせまた影分身なんだろっ?」
「違うってばよボルト、影分身の方を火影室に置いて来た。後の事はシカマルに任せて来たんだってばよ。……ネジもヒマワリを心配して来てくれてたんだな、ありがとよッ」
「あぁ、ナルト……よほど慌てて来たんだろうが、火影の羽織りを逆に着ているぞ?」
「げッ、マジか…!? 気付かなかったってばよ」
「はん、ダッセー火影だってばさっ」
ボルトはそう言いつつも、本体で父親のナルトが帰って来た事が内心嬉しいようだった。
「──まだ治ってねーけど、ヒマワリがハンバーグ食べたいって言ってんだからハンバーグ作るんだってばさ!!」
「駄目だボルト、風邪の時は消化の良いお粥だってばよ!!」
「お、落ち着けボルト、ナルト。余り騒いでいると…!」
台所で二人の仲裁に入ろうとするネジだがその時、ただならぬオーラを発したヒナタが───
「ちょっとあなた達……ネジ兄さんはともかく、騒ぐなら外に出ててちょうだいっ!」
ネジはお咎めを喰らわなかったようだが、ボルトとナルトは晩ご飯抜きで外に追い出された。
「ひ、ヒナタ……何も二人を家から追い出さなくとも──」
「大丈夫よ、きっとナルト君が一楽のラーメンにでもボルトを連れて行ってくれるだろうから。……それに、たまには二人きりにさせるのもいいと思うの」
「まぁ……そうだな。ナルトが火影になってから、なかなかそういった時間も取れていないからな」
「えぇ、いい機会だもの。……その代わりと言っては何だけど、ネジ兄さんは私と一緒にヒマワリの看病をお願いしますね」
「あぁ、もちろん」
「──ヒマワリ、ハンバーグはまだ駄目だけど、お粥を作って来たわよ。食べられそう?」
「うん……食べる……」
「じゃあ……お母さんとネジおじさん、どっちに食べさせてもらいたい?」
「え、いや、それはもちろんお母さんであるヒナタが──」
「ネジおじさんが、いいなぁ……」
「え…? いいのか、俺で」
「ヒマワリがいいって言ってるんだもの、食べさせてあげて、ネジ兄さん」
「あ、あぁ……それじゃあ──」
ネジがスプーンに掬ったお粥をフーフーして冷ましてから、ヒマワリの口にそっと運んであげる。
「……どうかな、ヒマワリ?」
「うん……あんまり味わからないけど、もう少し食べれるよ……」
「そうか…、風邪を引くと味覚が鈍くなったりするからな……。じゃあがんばってもう少し食べような、ヒマワリ。そのあと、お薬も飲まないとな……」
「──ヒマね、将来ネジおじさんのお嫁さんになりたいの……」
お粥を食べ終え、お薬を飲んでベッドの中で安静にしている最中、ヒマワリは熱で火照ったぼんやりとした表情でネジを見つめ、ふとそう言った。
「な…、何を言い出すんだい、ヒマワリ」
「ふふ……いいじゃないネジ兄さん、私は許しちゃうよ」
「あ…あのなぁ、ヒナタまで──」
ネジは少し顔を赤くして困った表情になる。
「大体、ヒマワリが大人になる頃には俺も大分歳を取ってだな……」
「大丈夫……ヒマ、おじさんの介護してあげるから……」
「い、いや、そこまで老人というわけでも……」
「ネジおじさん……ヒマのこと、キライなの……?」
今にも泣きそうに瞳を潤ませるヒマワリに、ネジは慌てて首を振る。
「そんなわけはない。す、好き……だとも」
「えへへ、よかったぁ……。──すぅ」
若干戸惑い気味とはいえ、ネジの笑顔と言葉に安心したように瞳を閉じて眠るヒマワリ。
「……さっきのは、うわごとのようなもの、だよな」
「そうかしら、女の子って案外本気だったりするから侮ってはいけないわ、ネジ兄さん」
どこか楽しそうに微笑むヒナタ。
「そ、それはともかく、あれだな……ヒマワリが一時的にも白眼になって強烈な柔拳を使って見せたのはやはり、ヒナタ譲りだな」
ネジは話を逸らそうと努める。
「私にっていうより……ネジ兄さん譲りだと思うわ。きっと修行を積めば、ネジ兄さんのように強くなる。けれど……日向の術を受け継ぐ事や忍の道だけじゃなく、色んな将来の道が開かれているから、ヒマワリには何も縛られず自由に自分の道を見つけてほしいわ」
「あぁ……そうだな、俺もそう思うよ。今はまだ難しくともボルトもきっと、父親としてのナルトも火影としてのナルトも理解出来るようになる日が来るだろうな」
「えぇ、そうね……。ナルト君にとって里のみんなも家族。その大きな家族を大切に守って行きたいというのが、ナルト君の想いだから」
「──ナルトには及ばないだろうが、俺も今ある目の前の家族を守って行きたいと想っているよ」
ネジはふと写真立ての方に目をやり、自分も共に写っている新生うずまき一家との笑顔の写真に、愛おしそうに目を細めて微笑みを向ける。
「ふふ……ありがとうネジ兄さん。私だって、日向の家族やネジ兄さんを守って行くからね」
「フフ、ありがとう……ヒナタ」
「──・・・ネジおじさぁん、ヒマが、介護してあげるねぇ……むにゃむにゃ」
「あら、ヒマワリったら夢の中でネジ兄さん……ネジおじさんを介護してあげているみたいね」
「いや、まぁ……ヒマワリに介護されるのは嬉しくないわけはないが……、ははっ」
ネジは照れたように、小さく笑った。
《終》
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