世界をめぐる、銀白の翼
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第五章 Over World
それで十分、助けられちゃた
時間は少し戻って
「使い魔も魔女も大したことはなさそう・・・・手早く終わらせちまおっと」
結界内に入り、難無く魔女の間へと到達した翼刀は、全く臆すことなくその扉を開いた。
先にいたのは、見上げるほどの長い椅子を持った椅子。その上に、まるで姫であるかのように座るぬいぐるみのような魔女であった。
お菓子の魔女・シャルロッテ
周囲を使い魔が走り回り、お菓子をかき集めては彼女に貢ぐ。
全く脅威を感じないその佇まいに、翼刀も肩を落として剣を取り出す。
無害そうに見えたところで、やはりそこは魔女なのだ。
周囲を巻き込もうとする嫌な感じが、この結界からはする。
招いた招待客にお菓子を上げる、というそんな優しい相手ではないのだろう。
しかも
ザッ――――
ギョロッ!!!
一歩、翼刀が魔女に向かって近づくと使い魔はこちらを一斉に見てきた。
敵意を向けている。
それでも作業をやめないのはまだ警戒範囲内だからだろう。
更に進めば、撃退範囲に入り襲い掛かってくるに違いない。
だが
「ここから先?じゃあ行かねぇよ」
ズドドドドドドドォッッ!!!
剣の一振るいで刃幕を飛ばし、使い魔を殲滅する。
そしてその刃は魔女の座る椅子の足にも命中し、当然ながらバランスを崩して魔女は落下してくる。
「シっっ!!」
落下してくる魔女に向けて、刃を一本飛ばす翼刀。
それが胴体に突き刺さり、壁にまて吹き飛ばされる魔女。
標本のように串刺しになり、壁がもたなかったのだろう。刃がガラリと抜け、落下してくる。
その落下してくる魔女に向かって、翼刀が疾走した。
(首を狙う。一発で刎ね飛ばして、それでこいつも終いだ)
そうして魔女と翼刀が接近し、タイミングを合わせて腕に力を込めると
「行く・・・・ッ!?」
グバッ!ゴォッ!!!
―――ぞ、というべきだった言葉は途切れた。
小さなぬいぐるみのようなその口から、パペットのような黒い別の化け物が出てきたのだ。
翼刀は理解する。
あの無害そうな姿は擬態だったのだと。
そうして油断させたところで、絶好のタイミングを見計らって本体が標的に食らいつく――――!!
「グゥおっ!?」
こっちから接近し、その首を撥ねようとタイミングを合わせていたのに、向こうからの更なる急接近にそれを崩された。
こっちはこれから振り抜く体勢なのに、向こうはもう自分に食らいつこうと刃が並んだ顎を開いている!!
だから、翼刀は下手な回避は取らなかった。
下に躱せば、首が食われる。
上に飛べば、脚を失う。
左右に飛べば、どちらかを抉り取られる。
後退するには距離を詰めすぎた。
ならば、退路は前しかないだろう。
「ダオァッッ!!」
脚により力を入れ、魔女の大きな口に向かって飛び込んでいく翼刀。
ヘタに力を抜くと、あの歯に引っ掛かって咀嚼されてしまう。
ならば、飛び込む力は全力で。
チャンスは一瞬。
生き残る道はただ一つ。
歯に触れられる前に口内に飛び込み、その向こう側に向かって刃を射出――――!!
ズッ――――ドドドドドドンッッ!!
バチュゥッッ!!
肉(と言っていいのか)が爆ぜる音がして、翼刀が魔女の背中から飛び出してきた。
何かの液体が身体にこびりつくが、それはすぐに乾いて消滅していった。
ドドォ―――と地面を揺らして落ちる魔女の巨体。
こんなものがあの小さな体に入っているとは思わないだろう。
その瞳は白目をむいており、見るからに絶命状態だ。
だが
ズロォッッ!!!
「なにッ!?」
確かに死んでいたその魔女の口内から、新たな個体が飛び出してきたのだ。
体内に溜めた肉体のストック。
今ある肉体が損壊、敗北したとしても、新たな肉体が飛び出してくる。
そう、それはまるで
「蛇かこいつはッ!!」
準備運動と言わんばかりにガチィ!!と上下の歯がきれいにかみ合わされ、そして開かれた口が翼刀に向かって突っ込んできた。
両手両足を使ってそれを阻み、しかし口に捉われてしまう翼刀。
脚はともかく、歯が食い込んで手の平がグジグジと血をにじませ始めた。
「キャぁあああああ!!」
「うォォォおお!?」
魔女の口の中で食われまいとして踏ん張る翼刀。
顎の力を入れても閉じられないことに憤ったのか、魔女は抗議の声を上げた。
ブンブンと頭を振り、一直線に壁に向かって突っ込んでいったのだ。
このままだと押し込まれる。
そうわかってはいた翼刀だが、この状況から脱するには少しばかし無茶をすることになる。
歯に噛まれぬよう口内に飛び込み
身体を舌に絡め取られる前に、落としたヴァルクヴェインを手元に再出現させ
嚥下されるより早く刃を射出して体外に飛び出すのだ
(できるのか!?それ!!)
無論、不可能ではあるまい。
だが突破した後、この魔女と戦えるかどうかは保証しきれない。
(昔読んだ漫画にあったな。1、仲間が来る 2、いい考えを思い浮かべる。んで3は―――!!)
翼刀の思考は回る回る。
だが、時間は確実に経過する。
それは壁の接近を意味しており
(誰も来ない―――現実は無情であるってか!?ふざけんな!!)
であるならば。
それ以外の行動を、咄嗟の判断で実行するしかない。
「ここで死ねるかァ!!」
翼刀が腕を放した。
それは同時に顎の上下が組み合うことを意味している。
迫る歯/刃。
その鋭さは、一噛みで翼刀を二分割してくれるだろう。
だが、接触した瞬間。
その一瞬は「まだ」斬れていない。
(刃の接触は一瞬!!!その一瞬で――――)
刃が降り―――
―――拳を握り
噛み千切らんと襲い掛かり―――
―――迫る刃へと、腕を延ばし
そして、その二つが接触した瞬間
「不動!!」
ビギッッ、バンッッ!!!
「キュァアアアアアア!!!」
翼刀の拳が、刃を砕いた。
だがタイミングは完璧ではなかった。
右拳からは血が流れ、うっすらと血が流れ出ている。
しかし、現状の危機は脱した。
歯を砕かれた激痛か、はたまた砕かれたことへの怒りか。
いづれにせよ、魔女は壁への突進をやめ、大きく頭を振った。
その勢いで口内から飛び出していく翼刀。
宙で反転し、その手にヴァルクヴェインを再顕現させる。
そしてそれを壁に突き刺し、足場にして立つ。
(あのストック、何個ある?―――何か特殊な手順じゃないといけないなら、俺だけじゃ無理だぞ!?)
コツン、と右拳を剣に当て、その傷を癒す翼刀。
再び首が迫ってくるも、それを飛び降りながら切り落とし、着地する。
だがだめだ。
新しい首が再び現れ、その攻撃を無為の物にしてしまう。
着地した翼刀に、魔女は一切のタイミングを与えず突っ込んできた。
「ッ!!クソ・・・・」
振り返ると、敵が迫ってくる。
この状況を見て、間に合うかどうかを翼刀は瞬時に計算した。
正確には計算、というよりは直感になるが、この際どっちでもいい。
(ギリギリッッ!!)
剣を振りあげ、刃の盾を作り出そうとする翼刀。
だが、その構成は完璧ではなく、所々に隙間ができている。
そしてそれを埋めるよりも早く、魔女は翼刀へと到達――――
「伏せなさい」
しなかった。
ドドドドンドンドンッッ!!!
声と共に魔女の下腹部が爆発し、その体が宙に浮く。
咄嗟に伏せた翼刀の頭上を、未完成の壁を崩しながら魔女が突っ込んでいって地面へと倒れ伏した。
「な・・・・・?」
「危なかったわね」
「お」
フワリと
翼刀の隣に、暁美ほむらが立っていた。
パンパンと膝をはたき、翼刀が立ち上がって礼を言う。
「ありがとな。で、ちょっといきなりだけど・・・あの魔女、無限再生か?」
「体内にストックがあるの。すぐに全部潰さないと、また体内に溜まっていくわ」
「うへぇ・・・・詳しいね」
「・・・・・それなりよ」
カチャリ
お手製だろうかほむらはどこからともなく爆弾を取りだし、そのスイッチを入れた。
後は放り投げるなりで爆発するだろう。
「魔法少女だよな?」
「魔法少女よ」
「・・・・・銃火器?」
「気にしないで」
ほむらの武器は、銃や爆弾などの現代兵器だ。
ちなみにほむらの本来の魔法は時間操作による停止や加速である。
この先は、原典に詳しい諸兄ならばわかるだろう。
時間停止で魔女の口内に爆弾を放り込み、爆破。
再生してきた瞬間に再び同じ手順で口内に放り込む。
それを繰り返すことで、傍目には魔女が飛び出してくるたびに連続して爆破されているように見える。
そして、最後の一体に向けて、ほむらの爆弾が炸裂した。
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「クッッ!!」
ズシャァ!!
「ハぁぁァァアアアあああ!!!」
魔女の全身を、マミのリボンが縛り上げていく。
だが魔女はそれを笑うように回避し、仮に捕まっても、引きちぎって逃げいていく。
「マミさん!!」
「その結界から出ないで!!あなたたちまでやられるわ!!」
巴マミは今、魔女と戦っていた。
何の魔女かはわからないが、周囲に立ちこめる異臭のする空気は、間違いなく
(このガスの中じゃ、撃った瞬間にみんな共倒れだわ!!)
そう、ガスだ。
しかも、まともに吸えば身体の自由が奪われ、その後、溶けるように消化されていく。
まどかに結界から出るな、と言ったのはその為だ。
今二人は、マミの張った結界の中にいる。
そのおかげでまだガスの脅威からは守られている状態だ。
だが魔女と戦っているマミはそうもいかない。
魔女の周囲は必然的に濃度が濃く、さらにはマミは得意の魔法が使えない。
リボンによる攻撃、縛り上げしかできないのだ。
無論、それで斬りつけることも可能だが、この魔女を切るには火力不足だった。
ソウルジェムでガスの浸食は防げているものの、魔力の消費が速い。
このままではいずれ戦えなくなり、結界も維持できなくなってしまうだろう。
(翼刀さんもいない・・・・でもあの人がやられてしまったわけがない。となると・・・・別の魔女!?同じ場所に二体もいるなんて、聞いたことがないわ!!)
そう
翼刀とマミが戦っている魔女は、全く違うものだ。
同じ場所に二体の魔女。
そんなことは本来はありえない。
時に魔法少女がグリーフシードを取り合うように、魔女同士だって人間を喰らい取るのだから。
だが、何の因果か。
否、そもそもその因果が歪んだ結果か。
確かに今、この場には、二体の魔女が二つの結界を展開しているのだ。
しかし、ここでそれよりも特筆すべきことがある。
マスケット銃が使えない
まどかたちの為の結界
ガスからの自分自身の防護
これだけのハンデを抱えながら、巴マミはすでに八分近く戦闘をこなしていることだ。
もし、これがいつもの調子だったならば、彼女は根負けしてしまっていただろう。
もし、まどかたちがいなかったら、彼女はガスに気付かず、発砲と同時に吹き飛んだだろう。
つまり、マミがここまで踏ん張れたのは
(私の友達―――ずっとずっと、一緒にいてくれるって言ってくれた、私の友達!!!)
(そんな二人を、絶対に――――!!!)
魔女の周囲を駆けまわり、リボンで削り出していくマミ。
が、その魔女も飽きたのか、標的を新たに二人へと向けた。
その視線に、結界の中で息をのむ二人。
キュゥべえが契約を促しているが、二人はそんな場合ではない。
魔女の触手が伸び、結界へと襲いかかる。
「させないわ!!!」
バシュウァ!!!
結界に迫る触手。
それは地面から伸びたリボンの壁に阻まれて止まった。
バラリと崩れるリボン。
役目を果たしたと言わんばかりにほどけ、ばらけていくリボンの隙間から、マミの双眸が魔女の全身を睨みつける。
「私の友達は――――絶対に傷つけさせやしない!!!」
マミの宣言。
同時に、ほどけて行っていたリボンが息を吹き返す。
一斉に魔女へと伸びたそれは、瞬時に全身を縛り上げ、その身動きの一切を封じる。
「マミさん!!」
「そこで見ててくれるかしら?」
ジャカッ
「私の、魔法少女としての戦いを!!」
マスケット銃を手に、マミは跳躍する。
雁字搦め状態の魔女の、その頭上にまで飛び上がったのだ。
するとマミのスカート下からリボンが噴出されていった。
それは渦を描き、周囲に風を巻き起こしていく。
必然、この状態でかき集めていくものなど一つしかない。
「よっぽど自慢のガスなんでしょうけど、だったら自分で吹っ飛びなさい!!」
だんだんとドーム状へと集まりだすリボン。
そしてそれは周囲のガスをかき集め、魔女ごと一気に閉じ込める。
マミが着地するころには、そこにはリボンのドームが。
その一点に、小さな穴が開く。
瞬間、漏れ出たのか、マミに向かって伸ばしていたのか。
ガスが外へと出てきていた。
だがマミは一切気にしない。
そこに向かって、マミはマスケット銃を回し、銃口を向け
「ティーロ!」
ドンッ!!
引き金を引き、一発だけの弾丸をブチ込んだ。
銃口のもとまでガスは伸びていたのか。
発砲と同時に銃口から炎が柱のように伸び、派手に爆発の尾を引きながら、銃弾がドームの中へと突っ込んで行った。
そして、それがドーム内部の空気と接触した瞬間!!!
ドゴォウッッ!!!
ズズンッッ!!ドォンッッ!!!
凄まじい爆音と、凄まじい地響きを起こし、結界全体を揺らしながらそれは爆発した。
まどかとさやかはその光景にペタリを座り込んでしまった。
一方マミは爆風に暴れる髪を抑え、ファサと整えてから二人のもとへと近づいた。
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「む?」
ザッ
その頃、翼刀たちは
お菓子の魔女を無事撃破し、結界の外に出てきていた。
だがマミ達の姿がない。
しかし、その瞬間にもう一つの結界の気配と、それが大きく振動したのを感じ取った。
「これは・・・・!?同時に魔女が二体も!?」
「そんな・・・・こと・・・!!」
驚愕するほむらだが、事実だ。
翼刀は該当する空間に手刀を入れ、斬り裂いていく。
結界は確かにそこにあった。
中に入り、進んで行く。
その道には使い魔は一体もおらず、魔女の間へとは一直線であった。
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「マミさん!!大丈夫ですか!?」
「えぇ。あなたたちのおかげよ」
「?」
「私たち、何もしてないですよ?」
「ふふっ、それで十分助けられちゃったわ」
魔女撃破後の、ある種の達成感
そんな雰囲気が、三人を包んでいた。
結界はじきに消えて外にも出れるが、それでも歩いていこうとしてまどかとさやかが踵を返していこうとする。
そしてその後をマミもついていき――――
だが、そんな中でキュゥべえは不気味に沈黙していた。
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「結界はあるけど魔女の気配は薄いな」
「えぇ。ソウルジェムの反応からも、おそらく魔女は討たれた直後でしょうね」
「踏み込み損?」
「そうでしょうね」
結界の中を進む翼刀とほむら。
じきに結界も消えるだろう。
そして、数分前にマミ達が開いた、魔女の間への扉に手を懸けた。
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直後
マミは二人に追いつき、その背中を突き飛ばした。
踵を返して、二人のもとに歩き出した瞬間だ。
一気に飛び出した彼女に突き飛ばされ、二人はあっけなく地面に倒れる。
そして、二人は倒れながらマミに向かって振り返った。
そこで、最後に見た光景は
自分たちを守るようにドーム状に展開されるリボンが視界を覆い、その隙間から
自分たちとマミの間に、ガス状となって再生していた小さな魔女がいて
その魔女と自分たちの間に一瞬で回り込み、自分たちを守ろうとこちらに背を向けながら巨大な銃口を魔女に向けるマミで
マミの結界が閉じ切った瞬間、小さく一声だけ聞こえてきた。
「―――ティロ」
「マミさんダメェッッ!!!!」
しかし声は届かず、最後の彼女の声は
『フィナーレ―――!!』
結界の外から聞こえてきた。
ドォンッッッ!!!
「お願い!!マミさんを死なせないで!!!!」
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ドォンッッ!!
「ウぐっっ!!?」
「キャァッ!!」
開けようとした扉。その中の部屋での爆発。
それによって、扉を開けようとしていた翼刀とほむらは吹きとばされて壁に激突した。
直後、結界は解け、目の前には黄色いリボンのドームと、もうもうと煙を上げる爆心地だけがあった。
「な・・・・爆発の影響が現実にも!?」
「どんだけ派手な・・・・・・な!?」
その光景に、よろりと立ち上がる二人。
だが目の前のドームがほどけて、その中の人物の姿が露わになって、表情はさらなる驚愕に包まれた。
キュゥべえを抱えたまどか。
座り込んでしまい、目の前の状況に今にも泣きそうだ。
そして、その光景を立ち尽くして眺めるさやか。
問題なのは、そのさやかの服装が
「美樹さやか・・・・あなた、契約したの・・・!?」
魔法少女のものになっているということだ。
「よ・・・くとさん・・・転校生・・・・」
「さやかちゃん!!どうした!?」
「マミさんが・・・マミさんが・・・私たちをかばって・・・それで、私マミさんが死んじゃうと思ったら、すごく嫌で・・・それで・・・それで・・・・!!」
言えるだけを言って、グズグズと泣き始めてしまうさやか。
翼刀に抱きつくようにして崩れてしまい、翼刀はそんな彼女を落ち着かせる用にヴァルクヴェインの刃を、握らせた。
といってもキーホルダーほどの大きさで、刃は潰しているから危険はない。
ただ、彼女の癒しにはなったようで、徐々に落ち浮いていってその変身も解けた。
その後
翼刀が状況を二人に説明した。
マミは無事に発見できた。
さやかの願いが効いたらしい。たたそれでも身体の怪我は大きいらしく、ほむらが病院に送ったそうだ。
マミさんは死んでない
そう知らされ、パァッと表情を明るくする二人。
そんな二人をみて笑顔で頷く翼刀だが、ピッと人差し指を上げて注意する。
「でも重傷なのは変わりないから、しばらくは安静が絶対。医者も納得させるために、数週間は面会も禁止だってさ」
「「えぇ!?」」
「だって明らかに大爆発に巻き込まれた怪我なのに無事なんだぜ?正直に言うわけにもいかないんだから、それくらいしょうがないって」
「そうですか・・・・」
「でも生きてるんなら。無事なら、いつかまた帰ってくるんですよね!!」
「あぁ」
それなら良かった
そう言って、さやかとまどかを帰路に返す翼刀。
さやかはその道中、魔法少女になったことを話題に持ち出した。
誰かの命を助けるために魔法少女になれたのなら、私は後悔ないよ、と。
笑顔で手を振って見送る翼刀。
だが、直後にその隣にほむらがフワリとやってきた。
「書類とかはあなたの言うとおりにしてきたわ。「EARTH」ってすごいのね」
「あぁ・・・それで?」
「医者は驚いてたわ。こんなのでよく生きていたれたねって」
「だろうな。それが奇跡なんだろうよ」
「・・・・・・」
「さやかちゃんが望んだ「死なせないで」は、あんなんじゃないだろうがよ・・・!!!」
病院
その集中治療室内
そこには巴マミが横たわっている。
全身に管を巻きつけられ、包帯で体は包まれ、四肢のうち両足と左腕がなくなっていた。
翼刀の言うとおり、医者は驚いていた。
こんなになるような爆発じゃ、人は生き残れないだろうと。
「言ったの?」
「言えるわけないだろ・・・あんな状態の彼女のことなんて・・・・!!」
「これがキュゥべえの契約よ・・・・今回は彼女の方にも要因はあるけど」
同時に発見した巴マミのソウルジェムは、黒く濁っていた。
もう少しで真っ黒になるところだ。
しかも、何故か翼刀にはそれを戻すことはできなかった。
巴マミ、生存。
しかし、その姿は死よりもなお惨たらしかった。
to be continued
後書き
巴マミ、脱落。
しかも原典よりも幾分もひどく。
普通ならば、さやかの願いでマミは完治してます。
しかしガスの魔女の最後の爆発で、マミは「自分の死」を悟ってしまいました。
ゆえにソウルジェムも一気に濁り、かといってさやかの願いもあるので死なず、それ以上濁らず、という状態になったのです。
ガスの魔女はこれで完全に死にました。
最後のはほんの少し残った身体をガスにして、せめて道連れにしてやる、という悪あがきでした。
この先の展開も、多分こういう暗く重いのがあると思いますが、どうかよろしくお願いします。
杏子あたりが癒しになるかもしれません。
自分の死を悟ったマミさんは目覚めるのか。
しかし、この状態では目覚めない方が幸せなのかも・・・・・
そりゃ言えませんよ。
翼刀の言葉ももっともです。
さやか
「次回!!何も知らない私たち・・・知らない、ってどういうことなんだろ?」
翼刀
「あーこら!!見ちゃいけません聞いちゃいけません!!」
ではまた次回
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