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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  二人だったら、心強い



圧倒、圧勝

まあその言葉に尽きる。
あれだけあった綿毛どもの群れが、無数の弾丸で一気に殲滅されていってしまった。

ものの五分と掛からなかっただろう。
哀れ綿毛どもはその食欲を満たすことなく、黄色の弾丸に尽く撃ち貫かれて消滅してしまった。




「翼刀さん、何しようとしてたんですか?」

「いや・・・・いいよ」

出鼻を挫かれて少し落ち込んた翼刀は、まどか、さやかと共にその光景を眺めていた。



宙に無数に表れたマスケット銃からの一斉掃射。
当たればひとたまりもあるまい。

さらには貫いて地面に突き刺さった弾丸からリボンが伸びて一網打尽にもしている。


「応用性あるなぁ」

「すっごい・・・・」

「あの人も見滝原中学の人なのかな?」

「見たことないけど・・・・先輩かな?」

「発言からしてそうだろうけど」



そんな会話をしながら、翼刀は翼刀で足元に寄って来た綿毛を踏みつけていた。
ソロソロ~、と地味に寄って来たのを、プチプチと。



そうしていると、全て狩り終えたのだろうか。
結界が溶けるように消滅し、彼らは廃ビルではある物の、現実に戻ってきていた。



「ふぅ、お待たせ」

「す、すごいです!!」


息を吐き出しながらも、それはため息に近い。
余裕の表情である少女が一仕事終え、翼刀たちの所に駈け寄ってきた。


「私の名前は巴マミ。キュゥべえを助けてくれてありがとうね」

「キュゥべえ?」

「これのことか?」


巴マミと名乗る魔法少女。
その言葉に疑問を感じながらも、翼刀がヒョイ、とまどかの腕の中の白い獣をつまみ上げた。

掴んだ感じはシリコンゴムな感覚だ。
だが一応体温は感じるので、生き物であることはわかる。


「やあ、助けてくれてありがとう。鹿目まどか、美樹さやか」

「ウゥォウア!?シャベッタァァッ!?」

「きゃ」

「うわ」


抓み上げる翼刀だったが、いきなりそのキュゥべえが言葉を発するモノだから、驚いて放り投げてしまった。
まどかも同様に驚き、さやかは飛んで来たキュゥべえをとっさに避けた。


「避けるなんてひどいなぁ」

「こらキュゥべえ。驚かせちゃダメでしょう?」

「そんなつもりはないんだけどね」


当たり前のように会話をするマミとキュゥべえ。

その後の会話でわかったことだが、まどかとさやかは誰かの助けを求める声に呼ばれてキュゥべえを発見したそうだ。
その声の主はもちろん彼である。

彼は何者かに襲撃され、それから逃れる際に負傷、助けを求めたらしい。



と、そこで翼刀が言葉を切り出した。

「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょうか?」

「さっきの、なに?結界とか、綿毛とか」

「・・・・あなたにはキュゥべえが?」

「ん?見えるよ」

「そう・・・・じゃあ、教えます。でもその前に・・・」

カチャ


マミがマスケット銃を手に、一本の柱に向けた。
まるでそこに誰かがいると言わんばかりに。


「出てきたらどう?」



短い勧告。
するとそれに応えて、一人の少女が柱の向こうから現れ、積まれた廃材の上に立つ。

マミと比べてスマートな服装だが、おそらく彼女も魔法少女と呼ばれる者なのだろう。


「ほ、ほむらちゃん・・・・」

「知り合い?」

「暁美ほむら。うちのクラスの転校生です」

「ふーん。同級生か」


さやかの言葉で名前を知り、マミが暁美ほむらに質問した。

「あなたも魔法少女ね?」

「そうよ」

「何故キュゥべえを?」

「答える必要はないわ」

「・・・・」

「・・・・」


マミの質問に、そっけなく返すほむら。
二人の間に気まずい空気が流れていく。

話に聞くと、キュゥべえを襲ったのは彼女らしい。
マミからすれば、敵でもある。

ほむらがその理由を話せばいかようにもなるのだが・・・


「言ったところで無駄」

「そう。だったら速く行きなさい。魔女は逃げたわ。今なら追いつけるでしょう」

マミの言葉。
何やら魔法少女間だけでわかる会話のようだ。

だがほむらは小さく首を振り、いつの間にか手に握っていた拳銃をキュゥべえに向けた。


「魔女は関係ないわ。用があるのは、そいつ」

「解らない子ね。見逃してあげるって言ってるのよ」


緊迫。

もはやいつ引き金が引かれてもおかしくはない。
まどかとさやかは目の前の状況について行けず、おどおどと両者を見やっていた。


まどかとしては、転校してきたばかりなのにどうにも気になるほむらと、危機から自分たちを救ってくれたマミの二人だ。
話し合えば分るのだろうが、二人の魔法少女の間にはそれを越えて何かが取り交わされていた。


あくまでも部外者。
眺めることしかできない。


そう、まどかやさやかは。




「ちょーっとまった」

軽い言葉。
タン、と軽いステップで、翼刀が二人の間に割って入った。

そう、この場の空気など、まるで無視して。


「な」

「誰」

驚くマミだが、ほむらは抑揚もなく聞く。
その言葉に、翼刀は日常会話のように、軽快に話しかけた。

「俺は鉄翼刀。まあなんだ、とりあえず俺にもわかるように説明してくれ。キュゥべえってのはなんだい?というか、あの結界のことも聞きたい。君らももう少し互いを知ろうとしようぜ?」


「危ないです。下がってください」

「あなたに話す必要なんてないわ。どきなさい」

「わーお、上から目線」


だが二人は翼刀を一蹴。
あくまでも自分たちの問題だと言って聞かないようだ。

「だからさ、互いの事情も分からないわけだろ?そんな物騒なもん仕舞ってちゃんと」


「「くどい!!」」

ダンッッ!!


この場を収めようと、なおも声をかける翼刀。
だが二人は業を煮やし、横に飛んだ。

マミは右、ほむらは左。
翼刀を対角線上から外して、互いが互いを狙い、引き金を引く。


発砲音。
弾丸はそれぞれ飛び出し、標的に向かって突撃する。


だが


バキィ!!



発砲音に驚いて目を閉じてしまったまどかが、瞳を開いて見た光景は驚くべきものだった。


翼刀が二人の動きに合わせ、再び直線上に移動している。
左手には剣を握って振り上げており、右手では黄色の弾丸を掴み取っていた。


「な」

「そんな・・・・」


驚愕するほむらとマミ。
当然だ。弾丸を掴み取るなど、通常の人間の所業ではない。



「もう一度言う」



ゴリッ、と
右手の弾丸を握り潰して粉にし、それを地面に落としてから翼刀が言う。

その口調はさっきまでのものではなく



「二人とも、武器を置け」



完全な命令口調。
だが、それだけの絶対性が彼には合った。
翼刀一人に、場を呑まれた。



「くっ・・・」

「動くな!!」

バガガンッッ!!



その状況に、ほむらが左手に装着されている盾に手を伸ばした。
が、それを翼刀が見逃すはずがない。

直後にヴァルクヴェインからの刃が飛翔し、ほむらの後ろの柱に命中した。
コンクリート製のその柱には無数のヒビが入り、ビキビキと音を立てて鉄骨をあらわにした。


驚愕する一同。
そこで翼刀が身分証を取りだし、マミとほむらに勧告した。



「「EARTH」局員、鉄翼刀だ。今すぐ武装を解除しろ。言いたかないけど、これは――――」



―――命令だ。





------------------------------------------------------------




「驚きました。「EARTH」の人だったんですね」

「というか君がお隣さんだということの方が驚き。あ、これ引っ越しのあいさつ」

「あ、どうも」



時刻は19時。
ほむらを除いだ翼刀たちは、巴マミのマンションの一室に足を運んでいた。


あの時、翼刀の命令の後



ほむらは消えた。
一体どんな方法を使ったのかは知らないが、忽然とその場から消えてしまったのだ。


それはしょうがないとして、翼刀がマミの方を見ると彼女は変身を解除した。
服装を見滝原中学の制服姿に変えた彼女は、話をするからうちに来ませんか?と彼らを誘ったのだ。



そしていま、マミの部屋でお茶をごちそうになっている。

「で、単刀直入に聞く。魔女ってなんだ?」


色々と聞きたいことはあるが、まずはそれだ。
お茶が用意され、茶菓子も並んだところで翼刀が前置きもなく切り出した。


「教えます。あなたたちも大丈夫?」

「あ、はい」

「教えてください!あれ、なんなんですか!?」


三人の共通の質問に、一息ついて答える。
所々キュゥべえの解説も入れながら話は進む。




魔女というのは、この世に呪いを振りまくモノ。
結界を張って隠れ潜み、人間を迷いこませて喰らいつく。

魔女は人間の悲しみや絶望を糧とすることもあり、不可解な事件や自殺などの原因には魔女の影が潜んでいるらしい。

そうして人の命を食らった魔女は、より力をつけ更に大きな呪いを振りまく。
そしてさらに人間を食らい、強大化するのだ。


「今日あなたたちが迷い込んだのも、そういう結界よ」

「じゃああの綿毛が?」

「いいえ、あれは使い魔よ」

「君の?」

「まさか。魔女のです」


翼刀のふざけた質問に少し笑いながら答えるマミ。


使い魔は魔女によって放たれる。
こいつらも結界を張って人を食らう。

そうして人を食らった使い魔は、いずれ魔女となるのだ。
魔女の幼虫、と考えるのが妥当か。



「で、それを討つのが」

「魔法少女、ですか?」



魔法少女。
魔法の使い、キュゥべえと契約を結んだ少女たち。

契約の内容は皆同じだ。


「君の願いを言ってごらん。どんな奇蹟でもかなえてあげるよ」

キュゥべえはそういって、魔法少女の素質がある人間に近寄り、契約を迫る。
もちろん、それを断るも受けるのも少女たちの意思だ。

キュゥべえは一切の強要をしない。


そのたった一つの奇蹟をかなえたのち、少女たちには魔女を倒すという使命が与えられるのだ。


言うは易いが、それはいつ終わるともしれない命がけの戦いに身を投じるということ。

少女たちは考える。
その人生を投げ打ってでも、叶えたい願いはあるのかと。

そうして苦悩の末に奇蹟にすがった少女たちが、魔法少女となるのだ。



魔法少女は戦い続ける。
自らの街を、魔女の脅威から守るために。



「ふぇ~」

「なんか正義の味方みたいでかっこいいですね!!」

感心するまどかとさやか。
しかも今までは、この街にはマミ一人しか魔法少女がいないそうだ。

他にもいたことはあったのだが、ケンカ別れしてしまったらしい。


「つまり今までマミさんが一人で守ってたってことですね!!」

「すごいです!!」


「・・・・魔法少女と魔女、そしてキュゥべえについてはわかった。だけどなんでそれを「EARTH」に教えてくれないんだい?」

「「EARTH」って最近できた組織ですよね?」

「あー、あのよくわかんないところかー」

「でもちょっと前に物凄い戦いをしたって、ニュースでやってたわよね?」

「いつ?」

「さやかちゃん、ニュース見ないからねぇ」

「な、まどかぁ!私をバカみたいに言うなぁ!」

「うひゃあ!?さ、さやかちゃんごめん!!」



姦しく戯れはじめた三人娘は置いといて、翼刀は思考する。


確かショウや蒔風の話ではこの世界は新たに引き寄せられ、結合した世界だ。
恐らく、それによって基礎知識の流布、統合、整合が世界修正されたばかりなのだろう。

本人たちにも、それにほかの土地の人々も、結合などに気が付きはしない。
気が付くことができるのは、世界の構成を理解したものや、翼人のみだろう。

というか、自分も結合したことなんて気づかなかったし。


もし最近に結合したなら、「EARTH」の知識もいつの間にか知ってたということになる。
なるほど、それなら通報されないのも無理はない。


「あの、じゃあ最後に質問いいかな?」

「なんですか?」

「ワルプルギスの夜、って・・・知ってる?」

「・・・知らないですね」

「そ」


翼刀の質問に、マミがちらりとまどかたちの方を見てそっけなく答える。
それに気づき、翼刀もそれ以上は聞こうとはしない。



「キュゥべえの姿が見えるということは、あなたたち二人にも魔法少女の素質があるということね」

「俺にも見えてるけど?」

「君には無理だね。そもそも君は少女じゃないじゃないか」

「そう言うもんなの?」


翼刀の素朴な疑問だが、キュゥべえは興味内容でぷいっ、とまどかたちの方へと視線を送る。


「どうだい?君たちには、叶えたい願いはないかい?」

素質があるならば、即座に勧誘。
まるでセールスマンのようだ。

だがそのキュゥべえにコラ、と声をかけるマミ。


「こーら、急かす男子は嫌われるわよ」

「そうなのかい?」

「そもそもこいつは男子なのかい?」

「二人とも、急なことでまだよくわからないわよね。それで・・・・どうかしら?少しの間、私と一緒に魔女退治を見学してみない?」

「スルーですか」


魔法少女になる、というのは単純に正義の味方になることではない。
命がけという宿命を背負うのだ。

なればこそ、容易に契約をすべきではない。



もともとマミは、交通事故で死にかけた時にキュゥべえと契約をした身だ。

生きたい。

その願いを以って、彼女は魔法少女になった。
迫りくる死に、考える時間も余裕もなかった。


だからこそ、時間のある彼女たちにはちゃんと考えてもらいたいらしい。


「うーん・・・」

「えっと・・・・」


マミの言葉に、頭を捻って考える二人。
だが、それに対して翼刀は笑いながら二人の頭に手を当てた。


「なに、無理になる必要はないんだろ?素質があるからって、その存在になるのが一番いいとは限らないし」

「素質があるのに、ならない方がいいことってあるんですか?」

「ああ、あるね。その素質ってのがあるせいで、街一つ丸焼けにした男も、昔いたし」

翼刀が悲しそうな顔をして、自虐的に笑う。
まどかたちには真意をつかみかねるが、何か聞いてはいけない気がした。


「っと、時間大丈夫か?中学生が夜遅くまで外出ってのはまずいだろ」


そういって翼刀が時計を確認する。
見ると針の位置は、そろそろ20時近くを指し示していた。


「あ、やっば!!」

「ママに電話しないと!!」


バタバタしながら携帯を掴み、帰り支度をする二人。
その光景を、ほほえましそうに眺める翼刀。


「おぉ・・・・」

「何を感心してるんですか?」

「いや、母親のことを「ママ」って呼ぶ人初めて見た」

「そこですか」


そして淡々と突っ込むマミ。

翼刀は送っていくかと聞くが、二人はダッシュで帰りますから!と飛び出していってしまった。
どうやら結界に取り込まれてしまう恐怖より、親に怒られるほうが怖いらしい。


バタン、と扉が閉まり、部屋が一気に静まり返る。

玄関前を走る二人の足音が遠のき、翼刀がマミに顔を向けた。



「で、ワルプルギスの夜って?」

「・・・・ワルプルギスの夜は、魔法少女の間ではよく知られた存在です」


翼刀の質問に、今度は答えるマミ。
だが両者ともわかっているので、言葉には出さない。


「私もキュゥべえから聞いた話ですけど、最強の魔女、らしいです」

「最強の魔女・・・か」

「現れれば大災害級の破壊を振りまき、一人の魔法少女では決して勝てないそうです」

「怨念の塊、って聞いたけど?」

「そう言う説もありますね。なにぶん、噂でしか知らないので・・・・」

「なんで」

「出会って生き延びた魔法少女が、いないから?」

「じゃあなんで・・・・あ、キュゥべえか」

皆やられてるなら、じゃあだれが伝えているのかという疑問になるが即座に納得する翼刀。

ともあれ、マミからのワルプルギスの夜の情報に、目新しいものはない。
恐らく翼刀が知っている情報と同程度の物だろう。


まどかやさやかの前では話せないだろう。

現れた時点で負けが確定するような、そんな化け物の話は不安させるだけだ。



「でも翼刀さんはなんで魔女のことを?だれも通報とかはしなかったんですよね?」


と、ここからマミが質問する。
マミにしてみれば、翼刀は急に表れた部外者だ。

まどかやさやかの話から人柄はよさそうだが、まだ完全に信頼しきっているわけではない。


「・・・・数日前、ミッドチルダにワルプルギスの夜が現れた」

「な!?」


ミッドチルダ、というと地名は聞いたことがある。
大きな都市で、なにやら特殊な力や技術があるとかなんとか。

だが今の驚愕は、そこではない。
ワルプルギスの夜が、そこに出現したということだ。



「そしてそこで・・・・オレは大切な人を奪われた」

殺されたってことじゃないけど、と翼刀が捕捉を入れる。
そして、彼はそれを追ってきたのだ。


「お、追ってきた?」

「正確には、ここに現れる可能性があるから張ってる、って言った方があってる」

「じゃ、じゃあこの街にワルプルギスの夜が?」

「来る」



その言葉に、マミの顔がどんどん青くなる。

当然だ。
今まで勝利した魔法少女がいない規格外の化け物が、自分たった一人しかいないこの街に来るというのだ。


「そ、そんなこと・・・そんな・・・そんな・・・・・」

さっきまでの態度とは違う、怯えたマミがそこにいた。
恐らく後輩の前だったからだろう。気丈にふるまっていた彼女だが、今は年相応の少女でしかない。


その様子に、翼刀がふぅ、とため息をついて肩に手を当てた。



「まあ座んなよ。で、ちょっとキッチン借りるよ」

「あ、はい・・・」


落ち込み、意気消沈したマミを座らせて、翼刀がキッチンに向かう。

失礼します、と誰に言うわけでもなく小さく言って、冷蔵庫の中の物を取り出していった。




------------------------------------------------------------




「ほい」

「え」

「飲みなよ。落ち着くよ」



そうして五分。
翼刀がマグカップをもってやってきた。

中には茶色の液体が入っている。
匂いからして、ココアのようだ。



「うち、実家道場でさ。大会前とか模擬試合前とかになるとガッチガチに緊張する奴とか出てくるわけよ。そん時作ってやんのがこれなわけ」

そう言いながら窓を開け、ベランダに出てズ、と自分のをすする翼刀。


「道場内でも一、二を争うくらいに元気っ子なのにプレッシャーに弱くて、さらにそんな実力もないのに勝つんだ勝つんだって息巻いて余計硬くなるんだ、そいつ」

はは、と笑いながらマミに語る翼刀。
マミも一口付けてみると、甘い味が一気に口内に広がった。



「翼刀さんって、ブラックコーヒーとかが大好きな人だと思いました」

「ん?ブラックとかダメだよ。砂糖にミルクに蜂蜜とか入れないと飲めないぜ?」

「甘党なんですね」

「そうなんだよなぁ。似合わない、ってよく言われる」




「・・・・さっきの話の人」

「ん?」

「その人ですか?さらわれたのって」

「・・・そだよ」


話し方から大体わかった。
さみしげだけど、また会ってみせるという凄味があったから。


「俺は綺堂唯子を必ず取り戻す。そのために、ワルプルギスの夜だってブチのめす」

「できるん・・・ですか?」

「・・・・出来る出来ないに関係なく、って言いたいけど、その時は仲間の力を借りることになるね」

「仲間・・・・」

「でも今一番頼れるひとたちは傷ついて動けない。だから」



そう言ってコン、と手すりにマグカップを置いて、巴マミに手を差し出す翼刀。


「それまで、というか、もしそうなっても、俺と一緒に戦ってくれるか?マミちゃん」

「翼刀さん・・・・」

「俺だって一人のつもりだったんだ。二人だったら、心強い。それにそっちの方が魔女との戦闘経験は多いんだろ?」

「わかり・・・ました」

「じゃあ、お願いな!!」


そういって、手を打ち合う二人。
ここに同盟は成立する。

じゃあオレは帰るわ、と翼刀がマグカップを置いて部屋を出る。
と、玄関先にマミがやってきて見送りに来た。


「翼刀さん、ありがとうございます」

「ん?」

「私、不安だったんです。一人で戦うのが・・・」

「あー、一人で戦うのは気楽だけどきっついからなぁ。ま、がんばって行こうぜ」


そうして、靴をはいて立ち上がる翼刀。
その背中に、マミが一言言った。


「翼刀さん」

「なに」

「これ、甘すぎですよ」

「マジか」

マミの言葉にショック!という顔をして、自室に戻った翼刀。






この日、巴マミは何年ぶりかの安眠を取ることができた。





鉄翼刀は決意する。

仲間が出来た。
戦う力を持つ、仲間が。



今度は守ってみせる。
そして、綺堂唯子を、必ず取り返して見せるのだ。



「待ってろよ、唯子」



ベッドに寝転がり、天井に向けて拳を上げる翼刀。



こうして、この街での初夜は更けていくのだった。





to be continued
 
 

 
後書き


翼刀のリラックスココアの作り方。

牛乳をレンジでチン
ココアパウダー入れて溶かす。

そして重要なのが

好きなだけ砂糖、シュガー、シロップをぶち込む。
誰かに渡すときはちゃんと量を聞いてから入れよう。


更に重要なのが

ヴァルクヴェインの癒しの力を投入!!!


翼刀
「これは昔にはできなかったことだけど、今回ブチ込んでみました」


これでリフレッシュココアの出来上がり!!

ココアパウダーなかったらどうするつもりだったんだ。


翼刀
「チョコレート溶かせばいい」

え、それで更に砂糖とかシロップも?

翼刀
「ぶち込まない理由が見当たらないんだけど」


ダメだこいつ早く何とかしないと。
マミさんもおいしいとか言いながらがぶ飲みしてると太るぞ。


さて、今回は説明会のため長くなりましたね。


世界結合のタイミングとかはなんとなくで済ましてください。
ほら、私たちだって世界の有名な都市の名前は知っててもそう言うところかは詳しく知らないじゃないですか。あんな感じで。

本当は整合性とれればいいんだろうけどねー・・・・




というか翼刀たちが勝手に動きすぎて笑った。

でも周回プレイの時にマミとまどかはほむらに何も言わなかったから、多分ここでも言わない。


そうして二人きりにしたらなんだあの二人



歯止め効かねェンだけど!!
唯子とのノロケ話はじめたらと思ったらフラグっぽいのがニョキニョキとッッ!?

おい唯子!!
さらわれてヒロイン力上がってるからって油断すんなよ!!

まあ翼刀に唯子以外の子がイメージできませんけど。



というわけでここまで!!


まどか
「次回!!見学!!魔法少女のお仕事!!」



ショウ
「魔法少女、ねぇ」

なのは
「なにかな?(ジャカッ)」

ショウ
「ナンデモアリマセーン」



ではまた次回

 
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