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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  翼刀VSアインハルト



「翼刀、油断すんなよ」

「アインハルト!!ビビんな。お前のすべてをブチかましてこい!!」


「「はい!!」」



壇上に二人の足が上がる。




拳、肩とを点検するように回して、構えることなく立ち、にらみ合う二人。






「覇王流、アインハルト・ストラトス」

「鉄流、鉄翼刀」




そしてそのまま、短く名乗る。
それ以上の何もいらず、何かあるのはここから先だ。


『試合!!開ァア始ッッ!!!』

プーーッッ!!!



「フッ、ゼァアッッ!!」

「ハッ、ヤァアア!!」


試合開始のブザーが鳴り、最初の一息で一気に構え、駆け出していく二人。

力の塊が、今



バォウッッ!!




ぶつかり合う。



------------------------------------------------------------




初撃を先に入れたのは翼刀である。
だが、そこに至るまでの攻防が凄まじい。



まず、走り出したアインハルトは一回転しながらしゃがみ込み、右足を踵から回して足払っていった。

それを翼刀が飛んで回避し、アインハルトに圧し掛かる形で着地しようとする。


だがそれに合わせて迎撃するように、アインハルトも左蹴りを真っ直ぐに突き出していき―――
それを宙で体を捻り、転がるようにアインハルトの左側へと着地する翼刀。
そしてその勢いをそのまま拳に乗せ、その横っ腹に向けて拳をぶつけた。


普通ならここで決まる。
これが初撃となるだろう。


しかし、まだその結論は早い。



「ふぅアッッ!!」



気合と共に息を吐きだし、アインハルトは回転した。
否、回転した、というのはある意味で錯覚だ。


確かに回転したもののそれは「翼刀の放った衝撃」であり、決してアインハルト自身ではない。
だがその腰を回り衝撃が回り、腕を添えるようにして、なぞるようにして回したアインハルトはその衝撃を以ってして翼刀の顔面に掌底をぶち込んのだ。


ズッパンッッ!!というはじける音がして、翼刀とアインハルトがそれぞれ反対側に吹き飛ぶ。


吹き飛びながらも、膝をつくことなく何とか踏ん張った翼刀。
背中を打ちながらも受け身を取り、後転して膝立ちになるアインハルト。

翼刀の額は赤くなっており、アインハルトの額からは血が流れている。



何が起きたのかというと、掌底がぶち込まれた瞬間に翼刀は不動拳を頭から放ったのだ。
唯子風にいうなれば「パニッシャー・ヘッドバット」だが、頭突きでそれができるあたりはさすが道場の跡取りだった男だ。

しかしダメージがないかと言えばそうでもなく、首を左右に振って意識をはっきりさせようとするくらいには効いた一撃だった。
そしてそれはアインハルトの掌底を弾き返し、彼女は自分の手の甲が額にぶつかった、ということである。



「え?え!?」

「今ので初撃?なんでアインハルトさんが!?」

「あー、ほらおねーさんが解説したげる」


一回戦を無事終え、選手用の観客席でその光景を見ていたヴィヴィオ達はというと、あまりの攻防について行けず、唯子からの解説を受けていた。

一方


「すごいね」

「うん。翼刀君はもともとだけど、そこに食らいついてるアインハルトちゃんもすごい」

「アイツ、衝撃掴んで叩きつけてなかったか?」

「うむ」



なのは、フェイト、ヴィータ、シグナムは翼刀よりもアインハルトの方に感心していた。


確かに、アインハルトは飛ばされてきた砲撃魔法を掴んで流し、打ち返す技能は持っていた。

だがあれだけ接近したうえで「物質でもなんでもない衝撃その物」を打ち返すとは。
発展系ではあるのだろうが、ノーヴェも驚いていることから恐らくは初めてやったのだろう。

この土壇場でそれをこなすとは、彼女もなかなか肝が据わっている。




「この大会って、どういう勝負判定だっけ?」

「色々な世界が交ってるから、簡単になったらしいな」


と、ふとなのはが疑問に思ったことを口にすると、ショウがサラリと答えてきた。
まあ驚くことではない。この男なら大会の参加同意書の内容まで暗記してそうだし。


「どういう?」

「あー、何を参考にしたんだか知らんが「ダウンからカウント10」もしくは「場外」で負けだ」

「天下一武道会!?」

「というかそれ飛べる人有利なんじゃ・・・・」

「飛べない奴が悪い。だがそこはそれ、飛行適性がないのは一回に一歩まで足を付けていいらしい。」

「一試合で?」

「いや、吹っ飛ばされるたびに。だから吹っ飛ばされても着地して一歩でピューンと戻れるならそれでよし」

「へえー」


そんなルールらしいのだが、正直彼等だとコロシアム内だったらどこでも戻れる気がする。


ちなみにアインハルトに飛行適性はあるが、翼刀にはない。
普通なら有利かもしれないが、この試合に限っては場外での決着はないだろう。


そもそも


「ハァッッ!!」

「ヌゥアッ!!」

二人ともそんなことは望んでいないようだが。



アインハルトのラッシュを、翼刀がいなして、躱していく。
最後に放たれたハイキックをバク転で回避し、着地から拳をアインハルトに向かって突きだした。


距離のある、届かない正拳突き。
しかし、直後にパンッ!!という音がして、アインハルトの前面部を、拳から放たれていた衝撃が命中した。
それを腕で顔と首とをガードしながら、ブチ破って走り出すアインハルト。


翼刀はその光景に小さく舌打ちし、走り込むアインハルトに向かって右ハイキックを叩き込んだ。
だがそれは彼女の腕に阻まれ、コンクリートでできたステージの地面が衝撃ではじけ飛ぶ。


そこからアインハルトの足刀蹴りが翼刀の鳩尾に入り、少しばかり後退させられる。

片足を上げた状態からそれを食らい、翼刀の体勢が崩れた。



「今だ!!アインハルト!!一気に決めろォ!!」

「!!」


「翼刀来るぞ!!」

「わかってます!!」


それぞれのセコンドから声が飛び、二人が身構えた。

追撃するアインハルトは、タッ、タンッ!と華麗なステップから一回転して右の後ろ回し蹴りを。
体勢を直すため膝立ち状態の翼刀は右からくるそれを視界に入れながら、右手を顔の横に出しガードしようとする。



そして、カウンター気味に左拳を入れようとしたところで

プーーッッ!!

第1ラウンド終了のアラームが鳴った。

アインハルトの蹴りは翼刀に受け止められており、翼刀の拳はアインハルトの腹部ギリギリでビタリと止まっている。



二人が離れ、セコンドの元へと戻る。



その様子を見ながら、客席の唯子が大声を出した。

「翼刀ーーー!!いじめちゃだめだよー!!」


おーいと声を出して手を振る唯子に、翼刀からいじめてねーよ!と声が返ってきた。
唯子は翼刀が勝つと信じているようだ。


それを見て、ヴィヴィオ達も負けじと叫んだ。

「アインハルトさーん!!」

「がんばってー!!」

「男相手なら股間蹴り上げれば一発よ!!」

「あれ?ルーテシアちゃん!?」

「そういえば出てましたね」

「うっ、この空気感・・・・私悲しい!!」

ぽん


「それが脇役の悲しみだ」

「ショウさん!!私を弟子にしてください!!私も世界食います!!」

「やめい!!」


チョップ!!

「あだー!!」

「あと説教」

「ひぃーーー!!」


------------------------------------------------------------



「私たちもいるのに!!いるのに!!」

「おのれノーヴェばっかりーーーー!!」

「シスターシャンテ、シスターセイン。おとなしくしなさい・・・・はぁ」



------------------------------------------------------------



プーー!!

第二ラウンドのブザーが鳴る。



だがさっきとは違い、二人ともすぐには動かず、まだストレッチのように体を動かしていた。

そして、同時にそれを解いて構える。


翼刀は脇を適度に空け、拳を構える形。
アインハルトは掌を腰の高さに沿え、顎を護るように左手を構えている。


そこから



ゴガァッッ!!

「なッ!?」

「覇王」


バゴゥッッ!!!


「断空拳!!!」

バガォウッッ!!!


特殊な歩法か、はたまた縮地か。
そのステップで翼刀の懐にまで一息で踏み込み、そこから覇王断空拳を打ち下ろしてくるアインハルト。

両腕をクロスさせて上からの振り下ろしを受け止める翼刀だが、ズンッ、という重い一撃に多少なりとも顔をしかめた。
アインハルトはそこから更にもう一歩踏み込み、左拳での断空拳を放つ。


「断空」とは、そもそも脚先から練り上げた力を、拳や足に乗せて打ち出す技量だ。
しかし彼女はまだ、打ち下ろしとストレートパンチでしか使えない。

その二つを今、連続して使ったわけだが



「まだまだッッ!!」

ズパンッ!!


翼刀が腹から不動拳を発し、更に不動脚で踏み込み、アインハルトの足場を崩した。
グラリと彼女の体勢が崩れ、思わず地面に手がついた。

好機とばかりにアインハルトに掴みかかっていく翼刀。
どうやら投げて場外につけようとするらしい。


が、その思惑は外れ



「断空脚!!」

「なんッ!?」

ゴスッ!!

右肩を地面につけ、両腕で支えながら回転し、肩を離して逆立ち状態でのアインハルトのキック。
それが翼刀のこめかみに命中し、その体を場外ラインぎりぎりにまで押し戻させた。


やっと入った、まともな一撃。
頭を抑え痛みに耐えながら立ち上がる翼刀。
その翼刀の後ろでは、蒔風が本気で感心していた。


「(断空は足先からの力の伝達。確かに、逆立ちでもできることは出来るんだろうが、ここでそれを行うとはな・・・・)翼刀!!」

「解ってますよ」


翼刀も言わんとしていることはわかっている。
アインハルトは積み重ねもさながら、その応用力を実践で発揮する。

聞く話では、なのはたちも交えたチーム戦での模擬戦闘の時もそうだったらしい。
なのはのカウンターバインドを、習ったばかりの水切りの要領で咄嗟に脱したりした。


つまり、長引けば長引く程何をしでかすかわからない子なのだ、アインハルトは。



そう、解ってる。
解ってはいるのだが・・・・


「すんません!!楽しくなってきちゃいました!!」

「は?」

「簡単に終わらせたくないんす!!だから・・・」

「・・・・はぁ、わかった。ま、十分にやれ!!後悔だけはすんなよ!!」

「もちろん!!」



翼刀は、今この戦いが楽しみになってしまったのだ。

このトーナメント、ただ勝ち残ればいいわけではない。
出した技は必ず対処される。つまり、技を温存していくのもまた必要なのだ。


だが、それを差し引いても翼刀は全力を出したかったし、出させたかった。

蒔風もそれを了承し、翼刀も吹っ切れる。
そして、セコンドとしてのアドバイスを飛ばした。


「で、アドバイスだが・・・・」

「なんです?」

「目だ!!目を狙え!!」

「あんた時々サイテーですよね!?」



「おいあのセコンドつまみ出せ!!」

「ショウさん落ち着いて!!」

「冗談だから!!きっと冗談だから!!」


客席が少々騒がしいが、当人たちは気にしない。






「アインハルト!!」

「なんです?」

「こっからは!!」


話しかける翼刀。
だがそれは途中で止まり、顔面の前で腕をクロスする。

そしてそれを開きながらおろし、両腰に持ってきて


「全力で・・・・・」


ズパンッッ!!


「行かせてもらう!!!」


それを沿えたところで、全身から気合と音が噴き出した。
まるで身体からは蒸気のようにチリチリと煙が上がっており、その構えは明らかに今までの物とは違う。


構えの形ではない。
その質が違っている。


目を瞑る翼刀。

そしてそれがゆっくりと開かれ、右手を前に、左手を引く。
構え、そして出した右掌を返し、チョイチョイ、と誘った。


「来い」

「・・・・行きます!!」



その構えに若干怯みながらも、すぐに気合を入れ直し、アインハルトが一気に攻めて行った。

突き出される拳。
当然ながら断空拳。

だが

パンッッ!!


「あっツッ!?」

それが翼刀の右手を掠った瞬間、衝撃に叩かれて弾けていった。

何が起きたのか、などと考えること自体無駄だ。
そんな答えは出ている。


鉄流不動拳



恐らくは右手がすれ違うように掠って行った断空拳に触れた瞬間、それは放たれたのだろう。


だが掠ったのは先端ではなく、腕の側面だ。
まさかそんなところからまで衝撃を発せられるとは彼女も思っていなかった。

と、なるならば


「ハアァアァアアアああ!!!」

ス、パパパパパパパパパンッッ!!!

「ヅっ!!」


アインハルトの猛攻。
翼刀はそれを腕やひじ、膝や掌で受けていく。

動作はそれだけなのだ。

だというのに、ダメージは攻撃しているアインハルトばかりに通る。


打ち込もうが蹴り込もうが掴みかかろうが、触れた瞬間に不動の打撃が叩き込まれるのだ。
翼刀の肌すべてがカウンターとして機能する、と考えていいだろう。


しかし、だからと言って攻めなければいいという分けではない。



スッ・・・・・



翼刀が一歩踏み出す。


アインハルトに向け、拳を伸ばし、それを彼女が回避する。

そこから翼刀が一気に腕を振った。
両掌でそれを咄嗟に受け止めるアインハルトだが、その威力には耐えられず吹っ飛んで行ってごろごろと転がった。


翼刀には動不動拳、いわば唯子の言うところの「真パニッシャー」はまだ使えない。
だが、そうでなくとも別に殴りかかる攻撃それだけでもいいのだ。不動じゃないと攻撃できないわけではない。


蹴りを避け、軸足を足払いしようとして逆に脚を弾かれるアインハルト。

そのアインハルトに向けて、不動脚でステージの全プレートを剥がし、体勢と視界を封じる翼刀。
恐らく、次の試合ではこのステージは使えないだろう。


グラつくアインハルトに向けて、両掌底を腹部に向けて叩き込む翼刀。
それを何とかして着地し、断空の両拳で迎撃するアインハルト。


威力は相殺し合い瞬間、アインハルトが拳を離して後退した。





「へぇ、やっぱりわかるか」

「拮抗したら衝撃を叩き込まれるからな」

「善い判断だな。師匠がいいからか」

「師匠じゃねーよ。あくまでコーチだ。あたしだってまだ修行中だしな」

「いやいや成長したって。あの地下道の全身タイツが懐かしいぜ」

「言うなぁ!!」


それを眺め、セコンド同士が話していた。
あ、ドロップキック喰らった。




プーーー!!

と、そこで再びアラームが鳴り、選手がセコンドの元に戻る。




「ふう・・・あれ?どうしたんすか?」

「いや・・・ちょっとドロップキック喰らってた」

「なんで!?」



「ノーヴェさん・・・」

「おうアインハルト。あれどうすっかねー」

「・・・? 顔赤いですよ?」

「いや、昔のことをちょっとな・・・アインハルト」

「なんです?」

「全身タイツだけは絶対やめとけ」

「は、はい?」




プーー!!



そして、ラウンドのアラームが鳴った。
もしこのまま場外でもカウント10でもなければ、非公開で記録されている体力ゲージと様々なポイントから考慮されて勝敗が決まる。


だが、この勝負はそんな終わり方にはならない。



「翼刀さん」

「なん・・・だっっ!!」

スパァン!!


アインハルトの呼びかけに、翼刀がさっきの状態になって応える。
それに対し、アインハルトが構えながら話を進めた。


「ありがとうございます。全力で相手していただいて」

「いや、別に・・・・」

「ラウンドごとに合わせてくださってるんですよね?」

「そんなことはないよー?」

「隠さなくても・・・・」


あくまでも本気だと言い張る翼刀だが、顔を見ればわかる。
彼はアインハルトの全力に合わせた全力で戦っている。


「だから、私も本当に全力で行きます」

「お?」


翼刀が気付く。
アインハルトの構えは内股で、前腕の甲の部分を前に出している形だ。

空手で言うと「三戦」と言われる型。


それ自体は珍しくない。
この形はある種の完成形なので、どの武術でもこの形に近いものになるだろう。



だが、彼が驚いたのはそこからだ。



「はァァァアアアアア!!!」

「な、これは・・・・!?」

「出し惜しみなんてしません。ここで全てを――――」


ドォッッ!!


「出し切ります!!」


瞬間


アインハルトの全身から独特の魔力光が発せられていき、更にその光に、虹色の光が織り混ぜられて行っていた。


「あぁぁあアアアア!!メディテーション!!!」

「馬鹿な・・・!!」



「うっそ!?あの子こないだの私見て習得しちゃったの!?」

「覚えのいい子だとは思ってたけど・・・」

「すご・・・・」



「うお!?ちょっとあたしも知らないんだけど!?」

「魔力っつー門があるから幾分かは確かに習得しやすいかもしれないがよ、これはさすがに俺もびっくりだ」

「ってかこの魔力量さ、非殺傷とか防護フィールド効いてるからってまずくないか!?」

「あー、俺の方でもバリア張っとくかー」



「うわ、リング外周防護壁のレベルがマックスになった」

「いっけー!!アインハルトさん!!」

「勝っちゃえーーーー!!!」




噴き出す気力と魔力。
そのブレンドが、光の粒子となって吹き荒れる!!!


「行きます!!」

フッ

「ッッ!?」

ドォンッッ!!!


アインハルトの声。
それと同時に彼女の姿が消え、次の瞬間には翼刀の目の前に現れていた。

その際ストップの為に踏み込んだ足がステージを砕き、小規模な爆発が巻き起こった。

そう、まだ攻撃は行われていない。


その中で翼刀はしっかりとアインハルトを捉えていたし、アインハルトも攻撃の準備は出来上がっていた。


「是ァッ!!」

バガァッ!!


そして、神速の振り下ろし。
それを翼刀が最初にこの技を受けたときのように腕をクロスして受け止める。


アインハルトの足先からは力が絶えず流れだし、次々と腕に送り込まれて行っている。

一方、翼刀もこれをガードしていた。
クロスした腕でガードし、その接点から不動拳を叩きこんでいる。

が、今回に限ってそれはガードと呼んでいいのかどうか。


衝撃を以って弾くのはいいが、すぐ彼女の腕は少し浮きあがるだけですぐに戻ってきてしまうのだ。
つまり、何度も叩きつけられている状態である。

無論、アインハルトの腕や、これだけの状況では全身にまで不動拳の衝撃が叩きつけられている。



つまりここからは我慢比べである。


「うォォォォオオオオオオオオおお!!!」

「ハァァァあああああああああああ!!!覇王!!」

ベキィッっ!!



アインハルト、気合一発。
気合と共にさらに力を押し込んだことで、翼刀自身は耐えられてもステージの方が崩壊していった。


そしてここから!!!


「断!!」

がゥッ!!

「空!!!」

ビキッ、ボゴゥッっ!!

「拳ッッ!!!」

ゴッ、ドォォオオンッッ!!!


爆発。
そう、爆発だ。そうとしか見えない。


耐える翼刀に、攻めるアインハルト。
その二人の姿が、砕け散った闘技場の土煙に消えていった。



「!!!」

「二人は!?」


その光景に、観客だけでなく周囲で試合を行っていた選手すらもが固唾をのんで見守る中、その土煙がゆっくりと晴れてきた。


二人の態勢はそのままだ。
ただ両者とも攻撃はしておらず、その態勢のままで固まっている。

ステージは割れ、さらに大きな穴が開いており、その穴の中に翼刀とアインハルトはいた。


ステージの台座がなくなればそこは地面、つまりは場外だ。
二人とも足をついている。

この場合、翼刀は一歩動くことが許されているので、残されたステージに足を伸ばせば勝ちだろう。

しかし、二人はその場から動かない。



「ジャッジだ!!!モニター!!」



その二人を見て、蒔風が叫ぶ。
すると空中に巨大モニターが出現し、そこに試合の光景が映し出された。


シーンは、翼刀とアインハルトが土煙に消えた瞬間だ。
足元を拡大する。


土煙の発信源だけあって最初こそは何も見えないが、着地の衝撃ですぐに払われる。
ステージが割れて、その先が見えた。


二人の足が着地する。


瞬間



翼刀の右足が、勢いに耐えられなかったのか、わずかなバランスの崩れか

一歩、その場から後退していた。



ザワッ!!
オオオォォォォオオオオオ・・・・・・

観客がざわめき、関心の声が上がる。
じゃあ引き分けか?ポイントはどうだ?



だが蒔風がそれを制し、審判がカメラを手にしてアインハルトに近づく。

その足元にカメラを向け、モニターに移された。



そして、彼女が足をゆっくりと持ち上げると



そこには、砕けたステージのかけらが、しっかりと挟み込まれていた。




「オオオオオオおォォォォォおっォォオオオオオオオオオ!!!!」


『ご覧頂けましたでしょうか!?何という幸運、なんという奇跡!!あれだけの衝撃の中、まさかこんな小さな石っころが砕けることなく彼女の足元で支えていたとは!!まさに縁の下の力持ちとはこのこと!!!』


司会者が興奮して叫ぶ。

その結果がまだ頭に入ってきてないアインハルトの体が、ぐらりと揺れて翼刀に支えられた。



「しっかりしろよ。おめでとう。君が勝者だ」

「え・・・あ・・・はい?」



ワァァアアアアアアア!!!



いまだ何が起きているのかよくわかっていないアインハルトだが、この熱気の中やることだけはわかっているようだ。


翼刀に肩で支えられ、疲労で立たない足は半分引きずられながらも、彼女は拳を握りしめ――――


バッッッ!!


空高く、思いっきり突き上げた。


ウォォォオおオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



その動作に、観客が一層沸く。

ヴィヴィオ達の迎える控室に入るころには、アインハルトは寝息をたてて眠ってしまっていた。



外ではまだ、司会者が叫んでいた。




「この勝負!!確かに運が作用したかもしれませんが、一体誰がそのことをとがめましょうか!!なんという剛胆!!なんという優美!!なんという技量!!我々は知っている!!決してこれは運ではないと!!彼女の実力のうちであると!!この結果に不満を持つ者はいないでしょう!!!それほどに見ごたえある、素晴らしい勝負でした!!!ありがとう!!鉄翼刀!!そしておめでとう!!アインハルト・ストラトスーーーーー!!!!」






to be continued
 
 

 
後書き

・・・・あれ?
アインハルトが・・・・・勝っちゃったよ?


私は燃える展開を書いた。
そしたらアインハルトが勝った。


何を言ってるのか分からないかもしれないが以下略。


彼女ならあれくらいは習得しそうな気がして怖いです。
まあ、他の試合に使おうとしたら準備動作でぶっ叩かれて終わりですが。


決して翼刀がアインハルトより弱いというわけではありませんのであしからず。
というか場外でなければ、普通に受けきって勝ってるしね。




というかステージとか勝手に変えたけど大丈夫だろうか?
イメージは完全に天下一武道会だし(ステージとルールだけ)。







唯子
「次回!!試合のその後と、次は私と!!」

コロナ
「私の番ですっ!!」

ではまた次回 
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