提督はBarにいる。
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秋ナスがダメなら夏にナスを食べるのです!・その3
「あふっ、あふっ……」
蕩けたチーズとトマトソースがナスとズッキーニに絡み付き、絶妙な味を醸し出しているが出来立ての為に如何せん熱い。フォークでどうにか一口サイズに切り分けて、はふはふと頬張った後に熱気を口の外に逃がしてやりながらどうにかこうにかパルミジャーナを味わっている電である。そんな時、カランカランとドアベルを鳴らして2人の客が入ってきた。
「うぃ~っす提督ぅ、今日もやってるねぇ♪」
「こんばんはー提督」
「来やがったな酔いどれコンビ」
毎度お馴染み隼鷹と飛鷹のコンビである。毎日のように酒を嗜み、他の鎮守府でも飲兵衛として知られる2人が、ウチで飲兵衛でないハズがない。今宵もどこかで引っ掛けてきた後らしく、若干ではあるが足元が覚束ない。
「ん~……おやおやぁ?そこで飲んでるおチビさんは電ちゃんじゃあないかい?」
「チビ言うなっ!毎日牛乳飲んで、すぐにでも追い抜いたるからな!」
「あっはっは!その意気込みは買っとくよ。ところで提督、今日のオススメは?」
ぎゃあぎゃあと喚く電を軽くいなして、カウンターに腰かける隼鷹。
「今日はナスの美味いのが入ってるぞ」
「ナスか!いいねぇ、時期だもんなぁ……そうだ、ビールかワインに合うツマミ作ってくれよ」
「そうね、日本酒はさっきたっぷり味わってきたもの」
「へいへい」
《ナスのミラノ風カツレツ~スパイシーソースを添えて~》※分量4人前
・ナス:2本
・塩:少々
・胡椒:少々
・薄力粉:大さじ1
・卵:1個
・パン粉:40g
・粉チーズ:小さじ1
・パセリ:少々
・マヨネーズ:大さじ4
・牛乳:小さじ2
・カレー粉:小さじ2
・黒胡椒:少々
さて、手早く作っていこう。ナスはヘタを取ったら厚さ1cm位になるように縦長に切って、下味として塩、胡椒を振っておく。パセリはみじん切りにしておく。
香味パン粉を作るぞ。パン粉に粉チーズと刻んだパセリを混ぜておく。ダマにならないようにしっかりとな。
カツに合わせるスパイシーソースも先に作っておくぞ。マヨネーズにカレー粉と牛乳、粗挽きの黒胡椒を混ぜておく。
さぁ、カツを揚げるぞ。フライパンに油を多めに引いて熱し、薄力粉、溶き卵を準備。下味を付けたナスを薄力粉、溶き卵、香味パン粉の順番に衣を付けたら、油で揚げ焼きにしていく。パン粉に粉チーズが入ってて焦げやすいから気を付けて揚げるようにな。
良い色に揚がったら、バットで油を切って盛り付け。付け合わせはベビーリーフなんかオススメだぞ。仕上げにスパイシーソースを散らせば完成だ。
「ホラよ隼鷹、『ナスのミラノ風カツレツ』だ」
「おおっ!美味そ~じゃんかぁ!早霜、スパークリングワインの白!大至急ね!」
待ちきれない、といった様子の隼鷹を見て、飛鷹も何を注文するか決めたらしい。
「提督、私ナスのはさみ揚げ。でも、ちょっと変わったのがいいな」
「あいよ、任せときな」
《ナスのエスニックはさみ揚げ!》※分量2人前
・ナス:2本
・鳥挽き肉:200g
・韓国青唐辛子:1本
・韓国唐辛子:1本
・パクチー(みじん切り):大さじ1
・ネギ(みじん切り):大さじ2
・おろししょうが:大さじ1/2
・おろしにんにく:少々
・卵黄:1個分
・ナンプラー:小さじ1
・酒:小さじ1
・塩:少々
・胡椒:少々
・片栗粉:大さじ1~2
・薄力粉:適量
・スイートチリソース:お好みで
さて、ナスのはさみ揚げといえばメジャーな料理だが、今回は中に挟むつくねをピリリと辛い物に仕上げていく。ナスはヘタを取って2cmの厚さの輪切りにして、切り離さないように肉だねを挟む為の切れ込みを入れる。青唐辛子と赤唐辛子は粗く刻んでおく。辛いのが苦手なら種を取り除いておこう。
肉だねを作るぞ。鳥挽き肉に刻んだ唐辛子2種類とパクチー、ネギ、生姜、にんにく、卵黄、ナンプラー、酒、塩、胡椒片栗粉を加えて練り、肉だねを作る。片栗粉はつなぎなので、肉だねの様子を見ながら調整する。
ナスの切り口と全体に薄力粉をまぶし、肉だねを挟む。後は170℃に熱した油で揚げて、しっかりと油を切ったら完成。盛り付けて、お好みでスイートチリソース等を添えて。
「ハイよ、『ナスのエスニックはさみ揚げ』」
「まずは味見からね……」
飛鷹ははさみ揚げの1つを箸でヒョイと摘まみ上げると、そのサクサクの表面にガブリとかぶりついた。サクッと揚がった表面を破ると溢れ出すのは、ナスの旨味の詰まったジュースと、鶏肉の肉汁。そこに大量の薬味とスパイスが混じり合い、口に含んだ瞬間に汗が滲んでくる。
「け、結構辛いわね……」
確かに、辛い。でも止められない。そしてこれは酒の欲しくなる味だ。
「提督、ビール。ジョッキでね」
「あいよ」
キンキンに冷えたビールを流し込み、そこに再びピリ辛のナスを放り込む。もう止まらない。
「んで?何で電ちゃんこんなに飲んだくれてんのさ」
「あ~何というかな、溜め込んでた物が噴き出したというか……」
そこで俺は2人に事情を説明してみた。
「ふ~ん……でも電ちゃんは何も悩む必要ねぇと思うけどな」
「なんでや?」
先程までカウンターに突っ伏していた電が反応する。
「だって電ちゃん、アタシ等を始め色んな娘を助けてんじゃん」
言われてみれば、駆逐艦『電』の戦歴は衝突の歴史の多いドジっ娘の歴史のように見えなくもないが、輝かしいまでの護衛や味方の救助の実績があるじゃないか。
「戦いたくなけりゃ極力戦わなくてもいいのよ。アタシ達がその分頑張って、そのアタシ等を守ってくれればおんなじ事でしょ?」
そう言って電の隣に腰掛けていた飛鷹が頭を撫でてやる。電の顔が真っ赤に染まっていったのは、決して酒のせいだけじゃ無いはずだ。
「そうだねぇ、でも守って貰ってても衝突されて怪我増やすのは勘弁な♪」
「ちょっと隼鷹!一言余計よ!」
「悪い悪い!にししし♪」
ったく、この酔っ払いはたま~に良いこと言うくせに恥ずかしいのか照れ隠しに余計な事を言いやがる。でもまぁ、
「そっか……普段通りに頑張ればえぇんやな」
言われた本人には良い影響があったみたいだし、良しとしときますか。
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