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魔弾の王と戦姫~獅子と黒竜の輪廻曲~

作者:gomachan
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第20話『混迷の時代の願い星~勇者の新たなる旅立ち』【アヴァン 】

 
前書き
ちょっとフリージングについても触れています。(物語の都合上ご了承ください)
ではどうぞ。 

 
これは、『古の時代』の物語である。
地球歴2060年、アオイ=源吾のもたらした二つの衝撃――パンドラ計画に伴う生痕移植問題と、マリア=ランスロット問題に、既存の信仰界は大きく揺らぎ、肯定否定に賛否両論を繰り返してきた。各国の信仰界は、異次元体襲撃を『神罰』として、なんとかそれらを信仰体系に組み込むために、安易な論理で理屈理論を展開するか、あるいは信仰を保持しようと、『ノヴァ』という目にも明らかな現実的脅威を拒み続け、やがて『正義』として掲げ合って論争を展開した。
些細な典範の一文にさえ停醜し、維新の論理に耳をふさぎ、やがて続く討論は当初の問題提起さえも見失わせていた。
そんな信仰界に民草は失望し、小さな背を国々に向けた。
そして幾万年の月日が流れた。
のちに賢者――そして勇者と呼ばれ、『人』と『人ならざるもの』、双方のうちに多くの信仰者を持つことになったガヌロンも、もともとは信仰団体に属する者の一人だった。彼もまた、自らの信仰するものに疑念を抱き、果て無く続くヒト同士の論争に飽いて法衣を脱ぎ、人里を離れて山奥の森へ隠居したのだった。
だが、いつの時代もそうであるが、人々は常に心の安住を求める。あらゆる価値、信仰、神々への敬意が崩壊する時代であるからこそ、人はより一層、自らの『(メチタ)』を繋ぎ止める信仰体系を求めた。
そんな彼らにガヌロンが与えたのは、古の時代より埋もれていた『僅かな思想』のみだった。
あまねく全ての生命は種子を問わず、みな同胞であり、同じ大樹になった果実である。そして彼らの中より勇気の帆を貼り、新たな大樹へ導いてくれる者が現れるであろう。

時代の荒波を超越し――

数多の枠を超越し――

そして、人と人以外を区別するものは何なのかを、常に問い続けるもの――

彼らは『理想世界を先導する超越者』――人と、それ以外の世界を融和し、全ての生命に『夢』をもたらす、起源なりし存在。神々を先導するもの。
学会名は『・Unite・Natural・Lasting・Identical・Manifold・Infinite・Transcendence・Evolutionary・Defiance』――アンリミテッド。

獅子王凱。
天海護。
卯都木命。
アオイ=カズヤ。
サテライザー=エル=ブリジット。
ラナ=リンチェン。

この青き星に住む、数億という生命体が満ち溢れているにも関わらず、約束された存在はごくわずかだった。
かつて古の時代より展開させてきたシスター=マーガレットの理念とアオイ=源吾の理論を、ガヌロンは聖窟宮で見つけ出して自らの思想に『喰らう』形で取り込んで見せた。
先導するもの――それは王や戦姫、英雄に限ったことではない。竜具や王冠……弓を手にしたところで、人が人であることに何ら変わりはない。

例え魔物を喰らい、人でなくなりつつあったとしても――心は何も変わらないはずだ。

例え瞳の色が左右とも違っていても――見える景色は変わらないはずだ。

故にガヌロンは『アンリミテッド』を信仰する――人と人以外を区別するものは『心』という、友人シャルルの『人』をむずびつける言葉がある為に。
人と魔の抗争時代より遠退いた現代(いま)だからこそ、肉体の改革ではなく精神の変革が必要なのだと訴える。
ガヌロンは誰を相手にして拒まず、おのが信じる道を語った。ヴァレンティナ=グリンカ=エステスにしても。フェリックス=アーロン=テナルディエにしても。
そんな彼の姿勢は、一部の『底知れぬ陣営』に多くの共感(シンパ)を得ることとなる。
ティル=ナ=ファが人と魔という二つに分かたれて戦う時代から始まったからこそ、そんな彼は各国を訪れ、調停者としてそのたびに平和への思想を説いた。『人』は『魔物』とは違うということを示すために――
だが、ガヌロンの言葉に耳を傾けるものはおらず、例え賛同者がいたとしても、その切なる声は、栄養素を求めるためにより多くの戦いを誘う声にかき消され、戦火は幾度となく燃え広がるばかりだった。まるで幾面にも連なる楽譜――終曲の見えない輪廻(アンコール)のように。
そういう獣のような論理もまた、人の本性なのだろうか?
別の側面でも、やはり『人ならざるもの』と『人』は何ら変わりはないのだろうか?
『不死のコシチェイ』という魔物を喰らい、寿命というリミッターが外れた彼は、そういった人の外れた道を幾度となく見てきた。見らざるを得なかったのだ。
我々は何もわかっていないのだ。見えざる敵とその姿に。
神の身でなければ出来ないことと、神の身では出来ないことは、本質的に同じかもしれない。
だが、神を超える者――アンリミテッド、その名が示すように無限を示唆してくれるなら、いつしか本当の理想世界が訪れるであろう。
それとも、人々の間に往来する律動は、終曲(フィーネ)を得ることなく、ただ暁の炎に焼かれる運命にあるのだろうか? 
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