魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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EpisodeⅤ:
Melior est certa pax quam sperata victoria
Epica1新たなる始まり~Fresh start~
前書き
Melior est certa pax quam sperata victoria
メリオル・エスト・ケルタ・パークス・クゥァム・スペーラータ・ウィクトリアと読みます。
意味は、望まれる勝利より確実な平和の方がよい、です。
†††Sideアギト†††
プライソン戦役って呼ばれた未曾有の大事件から早2年。んで、あたしアギトが八神家に来てから1年。あたしも今の生活にはもちろん慣れて、あたしを引き取ってくれた八神家の一員として胸を張れるレベルにはなってると思う。
「ふわぁ~」
ベッドの上で目を覚ましたあたしは上半身だけを起こして、「くぅ~」背筋を伸ばす。隣のベッドを見て、「もう起きてんのか」って漏らした通り、すでに誰も居なかった。時計を確認すれば、午前6時20分だ。あの早起きなら、もう起きててもおかしくないはずだ。あたしもベッドから降りるとパジャマを脱いで、Tシャツにキュロットスカートっつう私服をあたし専用のクローゼットから取り出して着替える。
「髪はまた後でいいっか~」
昔から変わらず髪型はツインテールにしてる。自分ひとりでも結えるけどさ。あたしだけがずっと何百年と洗脳されてたんだ。かつての家族に甘えたいって思いがあっても良いと思う。だから結ってもらいたいんだって話さ。
(そりゃまぁ、もう2年も一緒に同じ時間を、同じ家で過ごしてるんだから、甘えなくてもいいんじゃね?ってことになるかもだけどさ・・・)
あたしからして見れば2年も・・・じゃなくて3年しか、なんだよな。だから数百年分の甘えたいなぁ~って・・・。変かな。とにかく、脱いだパジャマを持って部屋を出て、八神家メンバーのそれぞれの私室があるここ2階から1階へと降りる。
「ん。おはよう、シャマル!」
「あら。アギトちゃん。おはよう♪ パジャマ、洗濯かごに入れておいてね~」
エプロン姿のシャマルと朝の挨拶を交わす。シャマルは治癒や補助を担当する湖の騎士だ。今は本局の医務局に勤める医務官で、班を任せてもらえる主任の役職に就いてる。そんなシャマルが今週の洗濯当番だ。だから「うんっ」頷き返して、洗濯機のある脱衣所へ向かう。
「あ、ザフィーラ! おはよう!」
「アギトか。ああ、おはよう」
筋肉ムキムキな人型形態のザフィーラがお風呂掃除してた。ザフィーラは八神家で唯一管理局員じゃない。でもシャマルの護衛としてよく付いて回ってたみたい。そんなザフィーラがお風呂掃除を基本的に担当してる。今はその光景にも慣れてたけどさ。出所してこの家に来て、シグナムと一緒に寝て、朝起きて、ザフィーラがお風呂掃除を始めた時の衝撃と言ったら・・・。
(なんかそんなイメージが無かったんだよな~)
洗濯かごにパジャマを入れた後は、洗面台で洗顔と歯磨き。シャカシャカと磨いてると「おーっす」背後から挨拶を掛けられた。鏡に映るのは「おはよう、ヴィータ」だった。グラオベン・オルデンの切り込み隊長だったけど、今じゃ管理局の戦技教導隊の教導官だ。まぁ昔からアムルの人たちに戦い方を教えてたし。似合ってると言えば似合ってるかもな~。そんなヴィータも洗濯かごにパジャマを入れて、あたしの隣で歯磨きを始めた。
「ガラガラ~・・・ペッ。んじゃお先~」
「おー」
脱衣所から出て、お腹が空きそうな良い匂いが漂って来るリビングに入る。リビングと繋がってるダイニングの奥、キッチンを見る。
「お。おはようや、アギト。朝ご飯、もうちょっとで出来るから待っててな~♪」
「おはよう! ありがとう、はやて!」
局のタイトスカートにブラウス、エプロン姿な八神はやて。八神家のお母さん、歩くロストロギア、チーム海鳴の出世頭なんて呼ばれてる。んで、あたしの保護責任者でもある。そしてかつてのあたし達のマイスター、オーディンですらも解くことが出来なかった“闇の書”の呪いを解いて、本当の名前の“夜天の魔導書”を取り戻させた功労者の1人。海上隔離施設に居た頃から、あたしに良くしてくれてた。
「おはよう、アギト」
「うん、おはよう、アインス」
リインフォース・アインス。みんなからはアインスって呼ばれてる。マイスター・オーディンが名付けたシュリエルリートは、自分と同じように、そして自分以上にシグナム達守護騎士を大事にしてくれる主に出会った時までの時限ネームだったって、施設に居た頃に教えてもらった。
(はやてが付けたのが、リインフォース、だったわけだ)
災厄撥ねし魂・導き果てぬ絆・希望の守り手、シュリエルリート。そして今は強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール、リインフォース。リインフォース・アインスだ。
「料理をテーブルに運ぶのを手伝ってくれ」
「おう!」
アインスもエプロンを着けてて、はやてと一緒に作った朝ご飯のお皿をダイニングテーブルに運んでる。あたしもアインスのお願いを聞いて、キッチンカウンターからテーブルへと運ぶのを手伝う。
「今日も美味しそう♪」
はやてが作ってくれたのは和食っていう、はやての故郷の料理だ。白いご飯にお味噌汁、卵焼き、ブリの照り焼き、小松菜のお浸し。マイスター・オーディンもよく作ってくれてた料理だ。
「パンでもいいけど、やっぱ朝飯ははやての和食が一番だな♪」
「嬉しいことを言うてくれるな~、ヴィータ♪」
ヴィータとシャマルとザフィーラもリビングにやって来た。
「アギト。ご飯が出来たよ~って、シグナムを呼んでくれるか?」
「うんっ!」
外へと直接出られるリビングの掃き出し窓を開けて、すぐ側の砂浜で木刀を振ってる「シグナム~!」の名前を呼んだ。八神邸の目の前にはプライベートビーチがあって、夏は家族だけ、チーム海鳴って言う幼馴染だけで構成された友達を呼んで、楽しい海水浴が出来る。
「アギトか。おはよう」
「うん! 朝ご飯が出来た~!」
「判った、すぐに戻るとお伝えしてくれ」
シグナムと手を振り合って、あたしは「すぐ来るって~」って伝えながら窓を閉めてテーブルに向かう。そんな中、「おはよう!」元気いっぱいな挨拶の声がリビングダイニングに響き渡った。みんなの視線が声の主の方に向いた。銀色の髪、紅と蒼の光彩異色。Yシャツ、短パン、ベストって格好の男の子。
「おはようや、フォルセティ!」
はやてに続いてあたし達も「おはよう!」って挨拶を返した。八神フォルセティ。マイスターの遺伝子を使って生み出されたクローン。クローンにしてはあまりにも似過ぎてるんだよな~。そんなフォルセティをはやてが養子に迎え入れてるから、はやての息子になるわけだ。
「うん、お母さん♪ シグナムお姉ちゃん、ヴィータお姉ちゃん、シャマルお姉ちゃん、ザフィーラ、アギトお姉ちゃん♪」
「ささ。フォルセティも席に着くですよ♪」
「うんっ、リインお姉ちゃん♪」
フォルセティの側に居るのはリイン、リインフォース・ツヴァイ。アインスとそっくりの外見だけど、性格や目つき、目の色、そして何より体の大きさやスタイルが違う。リインは、はやてとアインスのリンカーコアの一部を融合させた、特別なリンカーコアを核として生み出された融合騎だ。一応はあたしが融合騎としての先輩であり姉でもあるけど、どっちが上か下かは決めてない。
「お待たせしました」
「お疲れさん♪ よし、みんな席に着いたな。それじゃ手を合わせて・・・いただきます!」
トレーニングウェア姿のシグナムも合流して、はやてに続いて手を合わせて「いただきます!」をする。箸の扱いもベルカ時代の時に教わったし、この家に来てからも毎日のように使ってるから、我ながら使い方は上手だと思う。
「今日はシャマル、休みやったっけ?」
「あ、はい。そうですよ、はやてちゃん」
「ちょう重いんやけど、お米が足りひんくなってきたから買って来てもらえるか?」
「判りました。足りない食材や日用品もついでに買っておきますね。ザフィーラ、手伝ってくれるかしら?」
「承知した」
「おおきにな。シグナムとアギトは、首都防衛隊での仕事やね」
「うんっ」「はい」
あたしも今や管理局員。まぁまだまだ新米の三等空士だけどさ。それでもちゃんとあたしのロードであるシグナムの補佐として頑張ってる・・・と思う。それから談笑しながら朝ご飯を食べ終えて、シグナムがお皿を洗って、あたしが布巾で皿の水気を拭い去って食器立てに並べてく。
「「ただいま~!」」
そんな頃、エントランスから2つの挨拶が聞こえてきた。リビングでテレビを観てたフォルセティが満面の笑顔を浮かべてソファから立ち上がって、ドタドタと慌ただしく階段を駆け下りて来る音が聞こえてきた。
「おかえりなさい、お父さん、アイリお姉ちゃん♪」
「ルシル君、アイリ、おかえり!」
声からして階段を下りて来たのははやてで、フォルセティと一緒にアイリとルシルを出迎えた。リビングに入って来たルシル達にあたし達も「おかえり!」って挨拶をした。帰って来た内1人はマイスター・オーディンやフォルセティと同じ顔のルシル、ルシリオン・セインテスト。着てる局の制服はワインレッド色で、本局・支局合わせて18人しかいない調査官のものだ。マイスターもその一員だったセインテスト家の直系で最後の1人。マイスターと同じ、“エグリゴリ”の救済を目的としてる。
(バンヘルドを相手に全滅食らったあたし達だったけど、ルシルは単独でグランフェリア、シュヴァリエル、レーゼフェアと、3体のエグリゴリをすでに救ってるって話。明らかにマイスターより強い)
残るのは、あたしが洗脳されてた間に一緒に行動してた(まったく憶えてないけど・・・)って言うフィヨルツェン。本局の総務部の総部長リアンシェルト、そして“エグリゴリ”のリーダー・ガーデンベルグの3体だ。
「ふわぁ。ねむねむだよ~」
ルシルと一緒に帰って来たのは、次元航行部の青制服を着たアイリ。眠たそうに大きなあくびをしてる。アイリは、あたしの妹にあたる氷結の融合騎だ。ルシルもそうだけど八神姓を名乗ってなくて、昔と変わらずセインテスト姓を名乗ってる。あたしもマイスターから貰ったセインテスト姓を名乗るかどうか迷ったけど、今のマイスターはオーディンじゃなくてはやてだし、ロードのシグナムも八神姓だし、だから八神アギトになった。
(にしても、本当にデカイよな~、アイリの奴)
人間サイズに変身する魔法、ヴァクストゥームフォルム。アレ、元はあたしがアイリに教えたものなんだけどさ、10代前半くらいの背丈しかないあたしとは違って、アイリの背格好は大人なんだよな。変身魔法を発動して大きな体にするには、それなりの魔力やリソースが必要になってくる。以前のあたしやアイリには大人に変身・維持するだけの魔力も無ければ、変身する必要も無いから、こんな子供の姿なわけだけど・・・。
(アイリは本当にルシルの事が好きなんだな。ルシルの身長を追い越さないように設定して変身してんだから)
妹の恋路を応援したいけど、はやてもルシルの事が好きだしな~。しかも人同士だし。融合騎は人のようだけど人じゃない。寿命で死ぬことも無いし、子供を産むことも出来ない。アイリには悪いけど、あたしははやてを応援しようと思ってる。
「夜勤お疲れ様です、ルシル君、アイリ。朝ご飯はどうします?」
「ありがとう、リイン。食事は次元港で済ませてきたよ」
「シャワーだけ浴びて、すぐに寝るよ~」
「お疲れ様、お父さん、アイリお姉ちゃん」
「ありがとう」
「ありがと~♪」
アイリがそんなことを言いながらフォルセティにおぶさるように抱き付しめて、プニプニほっぺに頬ずり。そんなフォルセティにルシルが「出かける前に顔を見れて良かったよ」って頭を撫でた。
「うん。僕もお父さんやアイリお姉ちゃんと挨拶できて良かった♪」
「ああ。じゃあお父さん達は休むから。また帰って来てからな」
「うんっ!」
ルシルがリビングを出て行こうとしたら、「ルシル。一緒に入ろう❤」ってアイリが付いて行こうとした。そんなアイリを「ちょう待ち」ってはやてが止めた。はやてとアイリの身長はほぼ同じで、目線が合ってる2人の間になんか火花が散るのが幻視できる。
「な~に、はやて? アイリ、疲れてるんだよね~」
「それとルシル君と一緒にお風呂に入ることとは関係あらへんと思うんやけど?」
「2人とも夜勤で疲れてすぐに眠りたい。けどその前にシャワーなりお風呂なり入りたい。別れて入ると時間が掛かる。なら一緒に入った方がお得♪」
「いややわ~。そこはちょうアイリが耐えて――」
「うわ、それは酷いよ、はやて!」
わいわい言い合ってるはやてとアイリを背に、ルシルは「先に入ってこい、アイリ」って苦笑しながら冷蔵庫へ向かって、ミルクをコップに注いで飲み干した。うん、こうなることは割と判ってた。だからアイリも「ざ~んね~ん♪ じゃあお先に頂きま~す❤」そんな暢気な声を出してリビングから出て行った。
「フォルセティ。ヴィヴィオの家まで送って行くから用意してくれ」
「はーい! あ、アインスお姉ちゃん! お父さんのバイクで行きたい!」
ビシッと挙手したフォルセティ。アインスは嘱託魔導騎士にして融合騎として管理局に登録してるから基本的に家に居て、当番と一緒に家事全般を担当してくれてる。朝の仕事はフォルセティの送り迎えだ。
「ああ、待ってくれ。ルシル。お前のマクティーラを借りても良いだろうか?」
「いいぞ。キーは壁掛けに掛かっているから持って行ってくれ」
「判った。では皆、行ってくる」
「いってきま~す!」
アインスとフォルセティがエントランスに向かうのに、後片付けの手を一旦休めてあたし達も続く。ザンクト・ヒルデ魔法学院の指定の鞄を背負ったフォルセティがシューズを履き終えた後、「お母さん。いってきます!」ってから体を屈めたはやての頬にキスした。今度ははやてが「ん。いってらっしゃい!」ってフォルセティの頬にキスした。
「え? もう行くの!? ちょっ、もうちょっと待ってね!」
バタバタと脱衣所の方から慌ただしい音と声が聞こえてきたかと思えば、「アイリも見送りする~!」って水色のブラとパンツの下着姿で駆けて来た。シャマルが「風邪ひいちゃうわよ?」って呆れた。
「温かいから大丈夫! フォルセティ、アイリにもチューちょうだい♪」
「あ、うん。アイリお姉ちゃん、いってきます!」
「んっ。行ってらっしゃい、フォルセティ♪」
アイリもフォルセティの頬にキスのお返し。大体これが朝の日常風景だ。ルシルのバイク(車種はリバーストライクっていうらしい)・“マクティーラ”にアインスが跨って、サイドカーにフォルセティが乗り込む。
「ではいってきます!」
「いってきま~す!」
庭先でアインスとフォルセティに向かって手を振って見送ったあたし達も、「そろそろ出勤の準備しないと」ってことで、「あ、シグナム。髪結んで~」ってお願いしながら家に戻って身支度を始めた。
†††Sideアギト⇒アインス†††
フォルセティを、幼馴染であるヴィヴィオの元へ送り届けるため私は今、ルシルの愛車・リバーストライク(車名はマクティーラという)に乗り、ミッドチルダを縦断するレールウェイのステーションへと向かう。
「なのは。これからレールウェイステーションへ向かう。そちらのステーションに8時10分着のレールウェイに乗るつもりだ」
『いつも通りのですね。判りました、よろしくお願いしま~す♪』
なのはもまた大きく育ったものだ。私が一度天に召されてから復活するまでの10年間、私が宿っていた指環からずっと主はやて達やなのは達を見守ってきたから、それほど驚くことはないのだろうが。なのはとの通信を切り、渋滞に巻き込まれることもなくステーションに到着。“マクティーラ”を駐車場に停車させて、「危ないから手を」とフォルセティと手を繋ぐ。
「うんっ!」
それからステーション構内に入り、年間パスを使って改札を通過。フォルセティが「こっち~♪」と私の手を引いて先導してくれる。ルシルに似て聡い子だ。これまでの道中も一度で全て記憶した。そしてホームへと上がって、目的地である北部のザンクト・オルフェン内にあるステーションの1つ手前のステーション往きのレールウェイ乗り場へ。
「この車両だよね、アインスお姉ちゃん!」
「ああ。そうだ。発車時刻までそうはない。もう乗っておこう」
特別急行車を選んで先頭車両に乗り込む。クロスシート仕様であるため、2人掛けの座席に座りフォルセティと談笑していると出発ベルが鳴り、ステーションよりレールウェイが発つ。
私が再びこの現世に生きることを許されるようになって早2年。私をこうして蘇らせてくれたルシルには、感謝しても感謝しきれない程の恩が出来た。しかし、それと同等に悲しみを背負ってしまっている私が居る。ルシルの“エインヘリヤル”として登録されたことで、私はルシルが主はやて達に隠している真実を知った。
(再誕戦争。アンスール。神器王。ヴァルキリー。エグリゴリ。テスタメント。かつての主であるオーディンとルシルが同一人物・・・)
そう。私たちは何1つとしてルシルの事を知っていなかったのだ。彼を1人の男性として愛している主はやてにも、家族として想い慕っているシグナムら家族にも、親友として仲の良いなのはら幼馴染にも、本当は話してしまいたい。聞いたところでなんだ、と思われるかも知れないが、ルシルは主はやて達に嘘を吐き、騙していることに心を痛めている。それを当然の罰だとして己に課している。
(いつか自分を追い詰め過ぎて壊れてしまわないかが心配なのだ)
少しでもルシルの心の負担を軽くしてやりたい。そして手伝えることがあれば全力で力になりたい。彼の真実を知っているのは私とアイリ、そしてシャルの前世の人格・シャルロッテ・フライハイトのみ。あと数人、先の次元世界と呼ばれるパラレルワールドからの生まれ変わりがいるわけだが、記憶が無い以上は期待は出来ないだろう。
(だが皆には一言も伝えることは出来ない。そういう契約だからだ・・・)
今の私は、指輪に宿っていた私の魂、“英雄の居館ヴァルハラ”にあった“エインヘリヤル”としてのかつての体、そして先の次元世界での私――リインフォース・リエイスの体の3つから成り立つ。先の次元世界でも、私はルシルの手によって蘇ることが出来たのだ。そして新たに主はやてより、リエイス、という名を授かった。そんな彼女とも私は融合している。そしてそれが、今の私の戦闘力・空戦SSSに直結しているのだ。・・・。
(ルシルは、私をエインヘリヤルから解放し、この現実の世界に生きる独立存在として固定する条件として、真実を他者に伝えてはならない、行動を妨害してはならない、という制限を課してきた)
これによって私は、ルシルが今後執る行動の意味を察しようとも、主はやて達には何も言えないのだ。アイリはルシルを第一として考えているため、万が一にもルシルが主はやて達にとって不利益な行動を執ったとしても、最期の最期まで付いて行くだろう。そんな日が来ないことを祈るばかりだ。
「アインスお姉ちゃん・・・?」
「ん? どうしたフォルセティ」
「なんか悲しそうだったから・・・」
フォルセティが私を心配してくれた。私はあの子の頭を撫でつつ「ありがとう。大丈夫だ」と礼を述べた。オリジナルであるルシルと同様にとても優しい子だ。
「さぁ。もうすぐ着くぞ」
「うんっ!」
窓の外の景色が勢いよく流れて行く様を、窓側に座るフォルセティがうきうきしながら眺めるのを微笑ましく見守る。いくつかのステーションを通過して、高町邸最寄りのステーションに到着。ホームにて停車を待つ客の中に「ヴィヴィオ♪」と、彼女の母であるなのはが居た。2人も私たちに気付き、手を振り返した。車両が停車し、客が続々と乗り込んで来る中、「おはよ~♪」なのはとヴィヴィオが私たちの座席へとやって来た。
「おはよう、ヴィヴィオ、なのはさん♪」
「ああ、おはよう」
1つ前の2人掛け座席を半回転させ、2つの座席を向かい合わせにする。そうすることで私たちは顔を合わせてお喋りが出来るというものだ。
「ねえ、フォルセティ。宿題やってきた?」
「うん、もちろん。答え合わせする?」
「それはコロナと一緒にやろう!」
「あ、そっか。うん、そうしよう!」
フォルセティとヴィヴィオも、すっかり学生生活を満喫している。夕食時にも学校で何があったか、と嬉しそうに話してくれているからな。その様子だけでどれだけ楽しいのか察することが出来る。
「なのは。今日は休みなのか?」
「あ、はい。アインスさん、何か用事があればフォルセティを預かりますけど・・・?」
「いや、大丈夫だよ。今日はシャマルも休みだからね」
嘱託とはいえ管理局員である私も、仕事に出なければならないことが少なからずある。その際は八神家の誰か1人が休みを取得するようにしてはいる。が、それが叶わない日はなのはにフォルセティを預けることもあるのだ。
それから目的のステーションに到着したことで一旦降車して別のホームへと移動。次に乗車するのはザンクト・オルフェンの南部ウィンザイン、その南区内にあるヴェラーステーションへと向かう車両だ。車内では学院の制服を着た生徒たちの姿が目立つ。フォルセティとヴィヴィオは学院初等部では有名人のようで、「ごきげんよう!」と他の初等部生徒と挨拶を交わす。
「お友達が居るならお話しして来てもいいんだよ?」
「フォルセティも行って来たらどうだ?」
なのはと2人でそう提案するがあの子たちは首を横に振って、ヴィヴィオは「今はママ達と一緒に居る~♪」と笑い、フォルセティは「僕もアインスお姉ちゃん達と話す~!」と笑った。そんな2人に私となのはも笑顔になった。
「「と~ちゃ~く!」」
そうしてヴェラーステーションのホームに降り立った私たちの耳に、「ヴィヴィオ~、フォルセティ~!」2人の名を呼ぶ可愛らしい声が聞こえた。
「「コロナ!」」
大手を振って駆け寄って来た1人の少女。名はコロナ・ティミル。フォルセティとヴィヴィオのクラスメイトで友人だ。
「あ、おはようございます!」
「うん。おはよう、コロナ♪」
「おはよう」
お辞儀をして挨拶してくれる、本当に礼儀正しい子だ。私となのははここまでだ。ここからあとは他の友人たちと共に学院まで向かうし、教会のシスター達が学院までの道の要所要所で見てくれているからな。何も不安な事は無い。
「じゃあヴィヴィオ。ママはここまでだから」
「私もだ、フォルセティ。ヴィヴィオとコロナが一緒ならば寂しくはないだろう?」
「「うんっ! いってきます!」」
「「いってらっしゃい!」」
フォルセティとヴィヴィオとコロナが談笑しながら去っていく姿を、私となのはは後ろ姿が見えなくなるまで見届けた。
後書き
お待たせしました~! エピソードⅤを開始します!
本エピソードの大まかな流れですが、テイルズオブイクスヴェリア(笑)をオリジナルを交えて描きたいと思います。すっ飛ばそうにも、イクスを再登場させるためにエピソードZEROで彼女を出したので、すっ飛ばすわけにもいかなくなりました。
イクスヴェリア編の後にオリジナルのベルカ再誕編となり、その後に日常のVivid編をちょろっと出して終わりにしたいと想います。アインハルトもチラッと出しましたしね~。というか・・・
Vividって先月26日に完結してるじゃないですか!!
自分はコミック派なので、完結していることについ最近まで気付いてませんでした。
でもだからと言ってVivid編は最後までやらないですけどね。
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