ブレイブソード×ブレイズソウル~偽剣と共に歩む者~
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目覚めだすナニカ
そんなこんなでグラムサンタによる特訓(とは名ばかりのリンチ)は丁度1ヶ月に差し掛かる
1ヶ月も普通のモンスターではなく、冥獣を相手に戦闘訓練を積んでいれば当然それに見合うように力も付いてくるわけで…
「よっ…と」
ザシュッ
【ガァァァァ!?】
『…そろそろ普通の冥獣では相手にならないわね』
「お陰様で…なっ!」
ズンッ!
【ァァァァァァ!!】
『教えた私が言うのもなんだけれど、マスター
貴方、少し異常よ』
「誰のせいだ誰の」
コンコンと魔剣を小突きながら他人事のように呆れている少女に言う
それと同時に辺りにワラワラ湧いて出てきていた冥獣+α
は残らず消えていた
『上達する速度が速すぎるのよ、普通ならこんな短期間で冥獣を単独討伐なんて出来ないわ』
「…それが分かってるんならなんでΩ級が出てきた時は放置したんですかね…」
魔剣を肩に担ぎ上げながら戦闘態勢を崩し、呆れの表情で剣に視線を向ける
『まぁ、過去のことは水に流しましょう?』
「はいはい…」
…いやホントにあの時生き残れたのは奇跡なんじゃないかな…Ω級なんか間違っても一般人が相手取るもんじゃねぇし…
………もう俺一般人じゃないか
静かに考えに耽っていると魔剣が輝き、グラムサンタが姿を現す
「どうかしたのかしら?急に黙り込んで」
「別に…もう俺一般人じゃないんだなぁ、と」
「物凄く今更ね」
それっきり、また会話が途切れる
…なんだ、この付き合いたてのカップルみたいな気まずさは
いやコイツが彼女だなんて、全く想像が出来ないが…
「そ、そういやさ、お前の元になった魔剣…グラムってどんな奴なんだ?」
気まずさを誤魔化す様に咄嗟に思い付いた事を聞く
「どんな、と言われても…ね
私も実際に会ったことは無いからハッキリとは分からないわ」
「そ、そうか…」
また、会話が途切れる
………だから、なんだこの(ry
「……暇なら、もう1戦やりましょうか?」
「うぇ…パスで、流石に動きたくない」
「そう、やりたくなったら何時でも言いなさい
まだ日没までは時間があるし、ね」
……いやもうなんか気まず過ぎる、別に何もやましい事とか無いはずなのになんか気まずい
…取り敢えず、魔力の制御練習でもしとくか…
スっと目を瞑り、意識を自らの内に集中させる
最初に思い描いたイメージとは中々消えないらしく、今もどデカいダムが黒い水(魔力)を堰き止めている
…最初の頃より増えているような気もするが…今は気にしない
少しだけ門を開けて、魔力を引き出す
その引き出した魔力を血液の様に身体中に循環させて行く
これが基本となる身体強化のやり方だ、これは何度もお世話になっているのもあって発動するのも容易い
…曰く、余り魔力を込めすぎると身体が爆発四散するとかなんとか…(グラムサンタ談)
…気を取り直し、次は手に持った魔剣に魔力を流し込む
すると、いつものように白い輝きが生まれ刀身から魔法陣が現れる
この状態から色々と派生して攻撃や防御に使うのだが…これは無意識に出来ているので余り練習する意味は無いか
後は魔力弾の生成、だが…どーも俺は魔力弾の適性が無いらしく、出来ても数個が限界だ
これだけはいくら練習を重ねても上達しなかった…うん、しなかったからといって毎回冥獣を差し向けるのはやめて欲しいんだ、うん
死ぬ気でやれば出来る、とかじゃないから、やる前に死んじゃうから
他にもBlazeDriveの練習…とかがあるのだが…まぁ今ここでやるのは流石にダメだろう、被害がとんでもない事になる
「マスター?」
「…っと、ん?なんだ?」
意識を切り替え、顔を上げる
グラムサンタの方を見ると少し不思議そうな顔でコチラを見ていた
「急に魔力を纏ったり纏わせたりしてるものだから、どうしたのかと思ったのよ」
「ただの練習だよ」
「あら感心ね、それだけ余力が残ってるならまだやれるわよね?」
「今日はもー勘弁」
両手を上げながら無理無理、と言わんばかりに手のひらをパタパタと動かす
「私も今更な事を言うけれど…この森もかなり異常ね」
「…?何がだ?」
「考えてもみなさい、冥獣がこんなに短期間で100は軽く出現してるのよ?
そんな危険な場所、とっくに封鎖されてる筈よ」
「前までは全く冥獣なんて居なかった筈なんだけどな…」
「休眠でもしていたのでしょうね、それを私の魔力波で起こしてしまった、って所でしょう」
「十中八九最初の歪みの時のせいですね、わかります」
あの時は酷かった、ホントに酷かった
吹き飛ばされるわ追い掛けられるわで散々だったわ…
「それでマスター、気付いてるかしら?」
「何g…「ガガガガガッ!!!」…あー、なんだろ、こんな事に慣れてきてしまった自分が怖い」
死角からの弾丸を魔剣を盾にして防ぐ、それも全く後ろを振り返らずに
ホントに化け物じみてきたよね、俺の身体…
そこで漸く振り返り魔弾の射手を見据える
そこには何時ぞやのアルバレスト冥獣が佇んでいた、
確かに倒したはずなんだけどな…
「やっぱり、甘かったみたいね」
小さな舌打ちと共に苦い表情でグラムサンタが呟く
「あの時ちゃんと消滅させられてなかったせいね、失敗だわ…」
【…………】
圧倒的な程の魔力を解放している【ソレ】はジリジリと距離を詰めて来る
身体は傷だらけだが、力は以前よりも増している…いや、増しているなんて話じゃない
―――これは
「気を付けなさい、その【冥獣】…以前とは比べ物にならないわ」
「分かってる」
ギチギチ…と音をたてて冥獣の身体が軋む
――魔剣を構えた瞬間、ソレは弾けた
ダンッ!!!
数瞬まで冥獣が立っていた地面は消え失せ、それと代わる様に後ろに膨大な魔力が収束し始める
ゴッッ!!
「っ…!?ぐっ…!」
反射的に魔剣を持ち替え、防御に徹する
超至近距離からの銃撃
――否、それは最早砲撃と呼べる代物であった
脳を揺さぶられるような衝撃と身を焦がすような熱量が身体を襲う
だが、それは至近距離で放った冥獣も同じで…
【………】
砲撃を放ったと思われる腕が完全に千切れ飛んでいる
「アイツ…!滅茶苦茶だな!」
『よっぽど貴方の事が憎いみたいね、何としてでも殺すって感じよ?アレ』
腕が千切れ飛んだにも関わらず、また身体を軋ませながら魔力を収束させている、凄まじい執念だ
「さっきの、そう何度も受けられる物じゃない
早めに決着付けないとこっちがやられる…!」
『そうね、私としてもさっきのをそう何度も受け続けるのは遠慮したいわ』
グッと力を込め、次撃に備える
ギチリ…ギチリと肉が裂けるような音をたてながら
――再度、地面が弾けた
「っらぁ!!」
ザンッ!!!
今度は真横への出現と同時に渾身の力を込めて魔剣を振り抜く
それは冥獣の魔銃を切り裂き、破壊する
「っ…!不味っ!?」
が、膨大な魔力を込めたものを切り裂けば勿論その結末は…
―――閃光と共に熱線が撒き散らされる、爆発だ
〜~~~~~~~
「……う…ぐっ……」
どうやら少しの間、気を失っていたらしい
ズキズキと痛む身体を起こし、すぐに周りを確かめる
「冥獣は…いない、か」
どうやらさっきの爆発で遠くに飛ばされたらしい
よく周りを見れば全く知らない場所だ
「いってて………で済む辺り、頑丈になったよなぁ…
で、魔剣はご丁寧に持ってる、と」
さっきの爆発を防いだせいか、少し刃が欠けていたりするが、へし折れていたりはしていない様だ
「おーい、グラムサンター?大丈夫か?」
コンコンと小突きながら呼び掛けるも、全く返事がない
「…もしかして気絶したか?」
目を回して気絶している様を想像するのは中々に愉快だが、後でバレたら怖いのでやめておく
そんな事をしながら辺りを警戒していると…
ズッ…ズッ…ズッ…
【……ァ……】
当たり前の様に冥獣がやってきた
さっきの爆発で身体の半分以上を持って行かれたようで、左半身が綺麗に消し飛んでいる
「…冥獣の身体が消し飛ぶ威力の爆発を至近で受けて痛いで済んでる俺って一体…」
これで何度目か、自らの変貌ぶりに落ち込みながら、魔剣を構えて冥獣の元へ歩く
「まぁ、何はともあれこれで終わりかな…」
冷たい金属音を鳴らしながら、切っ先を冥獣へ向けて振りかぶる
【ゥ…ァァァァ!!!!】
「ッ!?」
後数センチでその身を切り裂く、と言ったところで冥獣が突如呻き声を上げた
それと同時に身体中の傷口から赤黒い肉塊が溢れ出してきた
それは瞬時に冥獣の身体を覆いつくし、全く違う形を形作る
「オイオイ…まさかのここで覚醒ですか?」
【ra-…raaaaaaaaa!!!!】
そして、その肉塊は人の形を取り、その姿を現す
赤黒い瞳に、浅黒い肌
黒みがかった深い緑の髪は地面にまで垂れ落ちている
手には巨大な銃剣と思わしき物、それが二丁
―――明らかに魔剣レベルの代物だ
殺意、殺意、殺意
辺りの空間を満たすように殺意が充満していく
淀んだ魔力と相まって、かなり気持ちが悪い
そうしてソレは空を見上げ、口を開く
【ra…raaaaaaa■■■■■■■■!!!!】
「っ!!うるさ…っ!?」
産声を上げるかのように空に叫びをあげたソレはグリン、とその瞳をこちらに向ける
殺意が、矢のように自らを射抜くのを感じた
【raーーー…】
「…来るか?」
ソレの瞳がコチラを見つめる
―――ニヤリと、口元を三日月の様に開くと同時―
スっと両手の銃剣を構え、開戦の合図とばかりにさっきよりも巨大な砲撃を放った
「ったく…ホントについてないよなぁ!俺!!」
―――――第3ラウンドの始まりだ…
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