終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?赤き英雄
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太陽の傾いたこの世界で
走る黒猫と灰色の少女
寄せ集めの市場街(マーケット・メドレイ)の近辺は、とにかく道が分かりにくい。目で見えているはずの場所に行きつくのに、目に見える道が使えるとも限らない。さんざん回り道をさせられたあげくに道に迷ってしまう者も少なくない。
この浮遊島でもっとも高いところにある、ガラクタ塔の上。
足元が安い金属板に覆われていて、歩くたびにガンガンとやかましい金属音が響く、そこに、回り道を繰り返してようやくたどり着く。いちおうは地元に住む者であるはずのカイトの土地勘は、そこそこ役に立ったが、そこそこ程度にしか役に立たなかった。
公用自律人形に道を尋ねたり、三叉路だったはずの道が五叉に増えていて頭を抱えたり、そこらのカーテンをぺらりとめくったら蛙面人の入浴シーンに出くわしたり、はぐれ牛の暴走に追いかけられたり、右へ左へと逃げ回っていたらなぜか鶏小屋の上に落ちて屋根をぶち抜いてしまったり、怒声をあげる球人形に謝りながらも尻に帆をかけて逃げ出したり。
「あははは、大変だった!」
少女は急に笑いカイトも苦笑する。
「俺もこんなに楽しんだのは10年ぶりかもな」
ぐるぐると街中を歩き回っているうちに、少女の口調からはどんどん遠慮が抜け落ちていった。それが本来の彼女の性格なのか、今のこの体験でテンションが上がっているだけ
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