とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
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第86話 旧10031号vsトビ
前書き
お知らせ
すみません
近日中に入院して手術してきます
更新がかなり遅れますが落ち着いたら再開致しませ
申し訳ないです
電気の供給が止まったはずの学園都市での研究棟の奥で煌々と光るディスプレイを傍らで観ながらテレスティーナは今回上から降りてきた紙ペーストの資料を指で折り曲げながら戦慄していた。
「これがこの.......都市の選択って事?いや、これで学園都市は神の領域に踏み込むことになるわ」
不可能を可能に
魔法を科学に
望みを形に
倫理を踏み躙る禁忌の技術
テレスティーナは喘息に近い呼吸をしながらも流れる汗を構わずに頭から論文の計算式、塩基配列と『不死』を追いかける。
人類が本当に追い求めていた禁じられた領域に入る瞬間を背中を凍えさせながら、慎重に頭に入れていく。
読むだけで頭を持っていかれそう甘い文章に科学的な根拠。
「ふふふ......アイツらやばいんじゃない......ここの科学者がやばいのね」
最初から妙だったし気掛かりだったのは、ゼツというこの胡散臭い奇怪な人物が当然のように学園都市でまるで教授のような地位を有していたかだ。
自由に振舞わせて、実験を行えたのも外部の人間に対して破格とも取れる待遇にしていることがテレスティーナには不可解だったが、今謎が解けた。
単純に『忍術』という従来の物理学や科学とは違う構造の事象を解明をする為に他ならない。
精神エネルギーを具現化する
全てを見透かす眼
空間を繋げる術
不死
死者を蘇らせる
十尾......
学園都市にしてみれば喉から手が出る程に欲しい技術であった。
論文には最後にこう綴られていた。
『再現出来たのは不死、輪廻眼、空間を繋げる術。かの協力者に敬意と哀悼を』
「ゼツを処分する気だ......」
******
「ま、まままだあの者を泳がせておくのですか?」
ガリガリに痩せ細った気の弱そうな白髪混じりの男性が華奢な顎から絞り出すように言う。
視線の先には科学者の元締めである木山幻生がゆっくりと腰を落ち着かせながらニコニコと微笑んでいた。
「まだね。まだ解毒剤が見つかっていないんだよ」
「げ、解毒剤ですか?」
「死者を蘇らせる......なんとも神々しく忌み嫌うべき事柄だろうか。だけどそれを止める解毒剤のようなモノが見つかっていなければ意味がないんだよ」
「は、はあ」
回転椅子をゆっくり回してモニターにスイッチをいれる。
大停電となって混乱している街中で黒ゼツと向き合うツインテールの少女が向かい合っている映像が映し出された。
「......」
「......第1位の座に据えた。相応しい地位と自由を与えよう......さあて、どうやって死者の暴走を止めるのかな......教えてくれたまえサソリ君」
******
鉄橋の下に敷き詰められた平たい石が2人の心拍と同期するようにジャリジャリと擦りあい緊張が高まる中で背中から着地したトビは一方通行の身体を捩りながらズルズルと寝返りでも打つかのように落下した。
「♪~」
筋肉の強張りや残心など微塵も構える事もなく面の下から赤い光を放ちながら垣間から相対する2人を猫背のまま見上げた。
「良いっすね~。退屈しのぎにゃ最高」
「だ、大丈夫かよ?」
本能的にヤバイと感じ取った上条は隣にいるカエル姿の女性に落ち着きなさそうに退きながら身構えた。
「ケロケロ。大丈夫ですよ......さて」
カエル姿の女性は印を結ぶと電撃を放ちながら青白く点滅すると常盤台の制服に着替えてゆっくりと頭に付いているゴムを緩めた。
「印??」
トビが首を傾げるもカエル面を取るとジィーと冷たい目をした第3位の姿にそっくりな長髪の女性が現れた。
「!!?」
「お久しぶりですね。賢明な貴方なら解るでしょうね......10031号でございます。とミサカは昔を思い出しながら宣言します」
カエル女性は切り裂かれてミミズ腫れとなっている首を見せ付けながら無機質に笑みを浮かべている。
「ビリビリ?」
「それはお姉さまの事ですね。ミサカは......外道です」
「げどう?」
ば、ばかな!?
記憶共有で確かに首を切ったはずだ
それに体内の血液を逆流させて心臓破裂を引き起こして確実に仕留めたはず
生物として生きているのがおかしい......
「......どうやって?」
「ふふ、痛かったですよ。この首の傷は......それに血液を逆流させられた時の沸騰するような熱さ」
演説するように前に出て歩き出していく外道にトビは臨戦体勢となり印を結ぶと地面から鋭い杭が飛び出てきて外道の腹を突き破る。
「がふっ!!?」
「油断大敵っすね。死回転」
トビが未の印を結ぶと外道を突き破っている杭が食い込みながら回転を始めて中にある臓物を飛び散らせながら前から後ろに掘り進んでいく。
「ぐうぅぅ......ああがぁぁー」
「さっさと死ね」
回転数を上げると飛び散る血肉の量が格段に上がり、外道は必死に回転を止めようと手で杭を掴むが速い回転数に掴む事は出来なかった。
あまりの痛みに外道は膝をついて崩れ落ちるように倒れると上条は印を結んでいるトビの面を殴りつけた。
「やめろぉぉー!」
「っ!!?」
一般の特別な訓練もカリキュラムも受けていない学生の渾身の殴り込みはトビやゼツに対しては全く問題にならなかったが予想外の反撃、予想外の衝撃、予想外の平衡感覚の崩れにトビの頭が混乱した。
「ぐっ!?」
打ち抜かれた面の下にある口からは血が滴り落ちていて手で掬い上げて絶句した。
どういう事だ?
一方通行の能力はまだ継続中のはず......なぜ......
なぜ殴れる?
「大丈夫か?すまねぇ、いきなりだったんで遅れた」
「がは......はぁはぁ。あ、ありがとうございます」
うつ伏せになりながら抉られた傷口を庇うように抱き抱えるようにするとトビの面から滴り落ちた血を見るとロックオンしたようにニヤリとした。
「......!??」
「歯を食いしばれぇぇやー」
上条は右手で反応が遅れたトビの顎下からアッパーカットをする。サラサラと木屑が砂のように一部が欠けたように流れ出した。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!」
大きく仰け反り、頭から地面に激突しながらも体勢を整えて掌から木の槍を生み出すと上条に突き刺すべく前に繰り出した。
「や、やばっ!」
迫る鋭い木の槍に上条は腕を前に出して防御しようと身構える。
「貴様も死ね!」
トビが逃さない射程で上条の首を射抜くように木を伸ばすが右腕の二の腕に衝撃を感じて力が入らなくなり木の槍が地面に転がる。
「?!」
半袖でやや覆われた部分から血が勢い良く流れ出しており、やけに透き通るような絹ガラスのような声が響く。
「呪い発動......」
血で円の中に三角形を描いた図形に入っている外道の腕に針のような黒い棒が刺さっており、髑髏のような紋様が身体に浮かび上がっていた。
「!?」
トビは背筋が冷たくなるような感じがした。理解出来なかった『恐怖』という感情が身体から面に向かって棘のように伸びて暴れている。
身に覚えのある風貌に、首から下げられたペンダントを揺らしながら無気味に微笑んでいる。
妖しげでもあり、神秘的でもある。
「あ、あの傷は?」
上条がおそるおそる訊くが平気そうな横顔になんとなく口をつぐんだ。
「なるほど。全てを跳ね返す第1位の能力も呪いまでは跳ね返せないみたいようですね。これは良い情報になります」
「上条さま。握りしめてください。お姉さまを苦しめた罰を与えます」
「おっ、おー」
上条の右手を計算に入れた外道はズブズブと針を抜くと持ち替えて自分の足に狙いを定める。
「ひ、飛段の能力!?き、聴いてねぇぞ!どうなってんだ!?」
それを予測済みと言わんばかりに外道は続けた。
「学園都市からの伝言です。技術提供ご苦労様......君達はもう用済みだそうです」
「......」
外道は黒い針を握り締めると今度は自分の太ももを突き刺した。
外道の能力
『死司憑血(ブラッディカース)』
対象者の血を舐めて特殊な陣形に入ると自分と相手の感覚をリンクさせる事ができる。
バランスを崩して倒れ込んだトビに上条立ち塞がり静かに面を右手で掴む。
触れた瞬間からグルグルの面に亀裂が入り、形が保てなくなっていくように崩れ始めていた。
上条の右手に宿る幻想殺しがジワジワとトビの面の力を打ち消していく。
「があああー......あああ......ああ」
面から漏れ出す光が弱くなり白い木屑となった後に面は塵芥のように四散して消えていく。
そして、トビの面の下からは意識を失ったままの一方通行静かに倒れ込んだ。
「これで良いのか?」
上条が訊くと外道は陣形から出て来て髑髏の紋様を無くし呪いを解除した。
「はい......これで私達の実験は終わりました......やっとです」
幾つものミサカの死を乗り越えた存在のミサカ『外道』は眼を閉じて静かに昔の記憶をなぞる。
そこへコンテナの間から黒い子猫がおっかなびっくりに出て来て外道の足元に来るとゴロゴロと喉を鳴らして甘え出した。
「......」
「懐いているな」
「私はもう化け物になってしまいましたし......妹もお姉さまも助けられない役立たずです」
「お前は化け物じゃねーよ」
上条は外道の足元にいる子猫を拾い上げると外道に差し出した。
「少なくともコイツは化け物だと思ってねぇよ。化け物だったら擦り寄って来ねぇだろ?」
「?!」
早く外道に抱っこして欲しそうに鳴く子猫を優しく抱きしめると少しだけ涙を流した。
「ありがとうございます。私はもっと強くなります」
少女はゆっくりとカエルの面を取りながら静かに顔の斜め上に引っ掛けるとゆっくりと決意を改めた。
トビ撃破
残り
白ゼツ
黒ゼツ
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