レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十三話 狩人その五
「こうした場所に一人でいるんだよな」
「そうです」
「世捨て人みたいな生活してるんだな」
「木のお家を借りて」
「借りてか」
「はい、この辺りの領主殿から」
「へえ、ここの領主のか」
領主と聞いてだ、久志は目を瞬かせてからそのうえで順一に話した。
「厄介になってるのか」
「モンスター退治を依頼されて」
「そのモンスターがまた強いんだな」
「おわかりですか」
「だってそうでもないと依頼されないだろ」
それこそとだ、久志は順一にそこははっきりと言った。
「そうだろ」
「はい、実はドラゴンを」
「ああ、お決まりだな」
ドラゴンと聞いてだ、順一も納得して頷いた。
「そんなのがここにいるからか」
「その退治を依頼されてです」
「ずっとここにいるんだな」
「お家を借りて」
「そういうことか」
「とかく弓矢を使えば百発百中です」
そこまでの腕前だというのだ。
「ウィリアム=テルの様な」
「あの有名人レベルか」
「はい、そしてその弓矢の威力もです」
ただ正確に射抜くだけでなく、というのだ。
「太陽を撃ち落とさんばかりです」
「今度は中国の話か」
「ご存知ですか」
「ええと、名前は何だったか」
「后羿ですね」
その人物の名前は順一が言った。
「神話の人物ですね」
「ああ、そうだったか」
「中国では弓矢はこの人物でしたね」
「十個の太陽のうちの九つを撃ち落としたんだよな」
「そう言われています」
「威力はそれ位か」
「ですからドラゴン退治も依頼されています」
領主にその腕を見込まれてというのだ。
「かなり強大なドラゴンですが」
「この辺りにいるんだな、今」
「はい、滅多に姿を表わしませんが」
それでもとだ、順一は久志にさらに話した。
「この辺りにいます」
「じゃあ俺達が今遭う可能性もあるな」
「そうなりますね」
「滅多に出なくてもな」
「その可能性はゼロではありません」
ほんの僅かでも遭う可能性はあるというのだ。
「このことは事実です」
「そうか、じゃあな」
「私達が遭った時は」
「戦おうな」
「はい、その時は」
「まあそのドラゴンがどんな奴かわからないがまずはな」
「会いに行きますか」
「二人目にな、じゃあ行こうな」
久志は順一に顔を向けて微笑んで言った。
ページ上へ戻る