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歌集「春雪花」

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 噎せし緑

  蝉も鳴きやむ

   夏風も

 虚しく思ふ

    褪せし文月



 夏草、木々、田畑…山はなくとも、田舎と同じような景色。
 夏真っ盛りと言わんばかりに噎せ返るような深緑の風景…。

 午後の夏風は正に熱風…蝉さえ鳴くことを躊躇う…。

 夏なのだ…多くの人は暑さの中に幾許かの恋を見出だすのかも知れない…。

 だが…私には虚しいばかりで、夏は…ずっと色褪せて見える…。

 愛されたい…その彼はいないのだ…。

 もうメールさえ帰ってこない…古いメールを見ても…ただただ…侘しいばかりだ…。



 月仰ぎ

  想いし影に

   焦がれしも

 逢ふはなかりき

    小夜の溜め息



 良い月夜だと見上げた空…空は広大で、どこまでも続いている…。

 彼もこの空の下にいるというのに、もう…会うことはないであろうと直感する…。

 所詮は一方通行の想い…どれだけ恋い焦がれようと、叶うはずのない片想い…。

 彼がもし…私の想いに気付いたら…遠ざけるに決まっていよう…。

 時折吹く風が…まるで溜め息のようで…。


 今はただ…この夜更けの空に溜め息をつくだけ…。



 
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