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歌集「春雪花」

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 夏の香の

  風にいざなう

   初蝉の

 鳴きてや虚し

    君を想えば



 梅雨の晴れ間…夏の香りを運ぶ風に誘われるように、今年初めて聞く蝉の鳴き声…。

 もう夏真っ盛りと言わんばかりに鳴く蝉…。

 しかし…私にはそんな蝉の鳴き声さえ、虚しく響いてしまうのだ…。

 彼に会えない四季に…一体、何の意味があるのかと…。

 ただ流れゆく四季に…溜め息をつく…。



 思ひわび

  ふりさけ見れば

    久方の

 雲間に惑ふ

     寂寥の月



 叶わぬ恋に暮れ…淋しさに空を仰ぎ見れば、久しく見なかった月が見える…。

 梅雨の雲間に見え隠れする月…遠くにあるような…近くにあるような…。

 彼は今頃、何をしているのだろうか…ふと、そんな詮ないことを考え、より淋しくなってしまった…。



 
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