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ドリトル先生と悩める画家

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第十幕その八

「何かね」
「ひょっとしてスランプから抜け出ようとしてる?」
「そうかも」
「前よりも明るくなって」
「そうなってる?」
「少なくとも前向きなままだね」
 先生はこう皆に答えました。
「彼は」
「うん、そうだね」
「むしろ前よりも前向きだよ」
「あれじゃあスランプ抜け出られそうだよ」
「すぐにでもね」
「そんな感じがするわ」
「トンネルを出るのは近いかな」
 実際にこう言った先生でした。
「彼は」
「じゃあもう一押し?」
「太田さんがスランプ出るには」
「じゃあ先生もね」
「太田さんの背中をだね」
「押せられたら」
 それならとです、先生も言いました。
「そうさせてもらおうかな」
「先生はここで強く動きはしないけれど」
 トートーは先生のことの性格を指摘しました。
「必ず動きよね」
「先生流の穏やかで落ち着いた押し方でね」
「そうしてるわね」
 チープサイドの家族も言います。
「こうした時はね」
「いつもそうだよね」
「だから今回も」
 ダブダブは先生の横で木に巻き付いてボールみたいになっているエメラルドボアを見つつ言うのでした。
「そうするのかな」
「あれしろこれしろって押し付けないけれど」
 ホワイティは先生のその気質をよくわかっています。
「穏やかなアドバイスがいいんだよね」
「その人の状況を見た的確なものだし」
 老馬はこのことを指摘しました。
「いいんだよね」
「口調も穏やかで強制とか絶対にしないのがね」
 まさにとです、ポリネシアも言いました。
「またいいのよ」
「だから皆聞くんだよね」
「先生の言うことを」
 オシツオサレツもよく知っていることです。
「強制されたら反発する人もいるけれど」
「穏やかなアドバイスだからね」
「そうそう、先生の言うことだとね」
 チーチーはうんうんと頷いています。
「素直じゃない人も聞けるんだよね」
「だから太田さんにしても」
 ジップは太田さんのことを考えるのでした。
「聞いてくれるね」
「きっとそうね」
 ガブガブが最後に太鼓判を押しました。
「先生の言うことなら」
「うん、僕でよかったら」
 先生もいつもの銚子で言います。
「お話させてもらうよ」
「そうだね、じゃあね」
「太田さんにアドバイスしてあげましょう」
「気付いたことがあったら」
「そうしましょう」
「それが彼の今回のスランプ脱出の最後の一押しになるのなら」
 先生は微笑んで言いました。 
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