ソードアート・オンライン~白と青の軌跡~
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一つの奇跡
前書き
今回は平和です!
では、本編へ!
「ライ……くん……?」
名前を呼ばれたライアは後ろに振り返ると、目の前には驚きと安堵でか涙目で今すぐにでも泣きそうな幼馴染みの姿。
「アス……ナ……。」
半年ぶりの再会。
容姿が変わった訳では無いが、お互いが少し大人っぽくなったと感じていた。
──アスナって……こんなにも綺麗だったっけ……?
──ライくんって、こんなにもかっこよかったかな…?
今まで隣にいて当たり前だった存在がこの世界に来てから遠くなり、気づかなかった事が沢山あったことに気づいた2人は同じタイミングで笑った。
「ふふ、あ…」
「はは、あ…」
久しぶりにお互い笑った、そう思った。
ライアは少し言いづらそうにしながらも、会話をつなげる。
「その……久しぶり……だな。」
「そうだね……」
──やばい、会話が……。
沈黙に落ちてしまった。
だが、その沈黙を破ったのは………
「ねぇ、ライくん?」
「ん?」
「少し時間あるかな…?」
「あ、あぁ。」
アスナはライアに近づき、ライアが頷いた事を確認してから手を握り走り出した。
「ア、アスナ!?」
「ついてきて!」
2人はそのまま走った。
周りからはカップルが仲良く走っているように見えていた。
「ここは……?」
アスナが走る脚を止めて周りを見渡しながらライアは尋ねた。
「ふふ、綺麗でしょ?」
ここはアインクラッド内でもあまり知られていない小さな丘。
辺りには何もなく、ただただ草原が続いていて遠い先に民家がポツンとあるだけが広く続いていた。
そんな草原と太陽が沈み、夕焼けとなっている景色を絶好の場所から見るには最適な小さな丘が今いる場所だった。
「あぁ……凄く綺麗だよ……。」
ライアはあまりの美しい景色に見とれていた。
「ここね、あまり知られてないの。」
アスナは目を細くして懐かしむかのように景色を見ていた。
「………似てる」
「え?」
ライアが零した一言にアスナは聞き返した。
「あの日、アスナと別れる時に一緒に見た夕日に似てる……」
「……ライくんもそう思った?」
「え?」
アスナは最初は驚いた表情をしていたが、ライアの言葉に嬉しかったのか笑顔でライアの顔を覗いて見ていた。
「ここに来て私は君に無理をさせてた、私が早くあの世界に戻れるように、怯えていた私に剣を握らせないように……私のせいで……」
アスナは涙目で心の内をゆっくりと話し始めた。
ライアはそんな彼女の顔を見て、ぎゅっと拳を握り声を発した。
「違う……違うんだ……アスナのせいじゃない、ただ、ただ……俺は怖かったんだ……」
アスナはライアの予想外の言葉に驚き、黙っていた。
「明日奈……君を目の前で失う事が、怖かったんだ……」
「あお……くん……。」
ライアは顔を伏せ、溜め込んでいたものを吐き出すかのように言い始めた。
「ずっと傍で守りたかった…あの時離れたくなかった、この世界に来てからも本当は……!」
ライアは気がつけば泣いていた。
彼女の傍にいたい、だが自分が傍にいたら再び悪魔の手が自分の大切な者を奪ってしまうかもしれない。
力があっても守れなかった黒猫団の仲間達のように……
彼らは自分を恨んでるかもしれない。
『青の剣士』と隠していた最低な自分を。
──何が『現世の沖田総司』だよ、俺は誰も守れない、失うことしか出来ない、それなら……。
「俺に君を守れる力は無いんだ……誰も守れない……剣術を習っていたはずなのにな……だから、せめて君を失うぐらいなら俺は傍にいな……!?」
ライアの言葉が続かれることは無かった。
何故なら、アスナがライアの唇に自分の唇を重ねていたからだった。
「そんな事無い…君は私を充分守ってくれてる。ううん、私だけじゃないキリトくんや、シノのん、エギルさんにクラインさん、この世界にいる人皆を守ってくれてる…!」
アスナも涙を流しながらライアの顔にそっと手を置く。
「君は、あおくんは充分過ぎるほどに守ってくれてるよ。だから、そんな悲しい事言わないで……!」
──そんな……俺は……あの子さえも……守れて……
「違う……俺は守れてないんだ……黒猫団の皆もユイも救えなかった……!」
ライアは限界だった。
黒猫団を救えなかったこと。
そして、自分が1人の時に出会い自分を『パパ』と呼び目の前にいる彼女は知らないが『ママ』と呼んでいた娘を目の前で失っていた。
「ねぇ、あおくん?」
ライアは声の主に顔を上げる。
「もう1人で溜め込まなくて良いんだよ、私がずっと支えるから傍にいるから……だから……。」
──あぁ……俺は、もしかしたら……。
ライアは自分が今どうしたいのか分かってしまった。
先ほど彼女の行動に驚いたが、同時に安堵も感じた。
──俺は多分……いや、きっと。
ライアは自分に言うように、言った。
「明日奈。」
「はい。」
アスナはリアルの名前を呼ばれたように返事をする。
「……こんなにも弱い俺を支えてくれないか?」
アスナはその言葉の意味が分かったのか、涙を流しながら笑顔で頷いた。
「明日奈、君の事が好きです。俺と結婚してください。」
「はい…!」
ライアはそう言ってウィンドウを操作すると、アスナの目の前にウィンドウが現れ、アスナが『Yes』をタップした。
そして、どちらかからではなく同時にお互いが近づき夕焼けと広大な草原の景色をバックに唇を重ねた。
──君を絶対に守り続ける。
──私も君を守り続ける。
お互いが心に誓いを立てて──────
次の日にはアインクラッド中に『青の剣士と閃光が結婚した』と知り渡った。
ギルド『疾風迅雷』と鼠のアルゴなどのプレイヤーによって。
デスゲーム終了まで残り……8日。
後書き
やっと、ここまで来れました…!
"ユイ"はお気づきだと思いますが、あのユイちゃんです。
ユイちゃんの話は次回に!
では、また!
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