リアリズム

「そしてね」
「そして？」
「今からの仕事もね」
「マネージャーの仕事も」
「やっていこうね」
「そうですね」
　美優は今の仕事に頭を切り替えてそのうえで答えた、この辺りの切り替えもアイドルならではだろうか。
「そのお仕事に集中する」
「先に先にと見ながらね」
「そうしてですね」
「そうだからね」
　それ故にというのだ。
「先に先にね」
「見てですね」
「それと共にね」
「今やるお仕事に真剣に」
「やっていこうね」
「はい」
　美優はマネージャーの言葉に真面目な顔で頷いた、そしてだった。
　彼女は打越に言われた通りに秘密主義に徹して映画について何も言わず書かずリアルな吸血鬼に徹した、そして。
　最後の壮絶といよりかは無残に死んだ時にこう言った。
「あの、何か」
「何だい？」
「この死に方って」
　その打越に言うのだった。
「何か」
「リアルだよ」
　打越は美優に即座に答えた。
「それだよ」
「リアルですか」
「吸血鬼の最後はね」
　その死ぬ時はというのだ。
「こうなるんだよ」
「心臓に杭を打ち付けられて」
「そうして首を切断されてね」
　そうしてというのだ。
「鮮血を撒き散らしてね」
「死ぬんですか」
「君がそうなったみたいにね」
　その撮影の中でそうなった様にというのだ。
「なるんだよ」
「そうなんですか」
「それでね」
「私もですか」
「そうして死んだんだよ」
　役のその中でというのだ。
「そうなったんだよ」
「そうですか」
「うん、そしてね」　
　打越は美優にさらに話した。
「吸血鬼の屍は焼かれるんだよ」
「これからですか」
「そうなるからね」
「灰にならずに」
「それはドラキュラだよ」
　映画のその話だというのだ。
「実際の吸血鬼は邪悪な存在だからね」
「焼かれるんですか」
「屍をね」
　首を切断されて鮮血を撒き散らしたうえでというのだ。
「そうなるから」
「だから私もですか」
「そう、その撮影の時もね」
　屍を焼かれる時もというのだ。