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第三章

「だから言ったんだ」
「最低最悪だと」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「こんな連中が軍を率いて戦うとなると」
「負けますか」
「しかも相手はアッディーン司令だ」
 オムダーマンきっての名将と謳われている彼だというのだ。
「それで勝てるとはな」
「到底ですか」
「絶対に無理だ」
 ハットゥーシは言い切った。
「本当にな」
「それでは」
「我が国は滅びるな」
 断言だった。
「まともな戦いをしなくてな」
「国力はうちが勝っていても」
「数もな」
「それでもですか」
「優勢でも馬鹿な人間が国を動かしてな」
「軍隊を動かすと」
「負ける」 
 そうなるというのだ。
「これじゃあな」
「そうですか」
「いい国だった」
 ハットゥーシは自分の祖国のことをだ、遠い目になって言った。
「それでもな」
「滅びますか」
「ああ、それをこの目で見るな」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 彼はもう祖国の話はせずにだ、仕事に専念した。フィルドゥシーもその彼に付き合った。だがサラーフ軍はというと。
 ミツヤーンとホリーナムが軍のトップに立ちキヨハーム達がそれぞれの艦隊を指揮してアッディーンが率いるオムダーマン軍に向かった、だが。
 サハラ北方で頭角を表してきていたメフメット=シャイターンは駐在武官から聞いた彼等の艦隊編成や人事を聞いてだ、その鋭利で陰のある整った顔でこう言った。
「戦いは終わった」
「と、いいますと」
「勝敗は決したと」
「そうだ」
 まさにというにだ。
「ナベツーラが首相になって決まっていたが」
「それでもですか」
「今のサラーフ軍の状況ではですか」
「負けますか」
「そうなりますか」
「そうだ、絶対にだ」
 確実にというのだ。
「あの国は敗れてだ」
「滅びる」
「そうなりますか」
「オムダーマンに滅ぼされますか」
「そうだ、勝つのはオムダーマンだ」
 この国はというのだ。
「あの国が勝つ」
「そしてサラーフが滅びてですか」
「サハラ西方はあの国が統一しますか」
「そうなりますか」
「絶対にな」
 こう言ってだ、彼は軍勢を進ませた。彼の戦略に従い。
 そしてハットゥーシやシャイターンの言う通りにだ、ミツヤーン達が率いたサラーフ軍はオムダーマン軍に敗れた。それもただ敗れたのではなく。
 壊滅的な敗北を被り国家の滅亡も決定付けた、そうしてだった。
 サラーフ王国は滅び国王は連合に亡命しそこで生きることになった。そして滅亡の責任者であるナベツーラ達はというと。 
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