カレーライスかライスカレーか

「ああしてな」
「どうでもいい話にしか思えなくても」
「だからあの人達にとっては違うんだろ」
　当人達にとってはというのだ。
「だからな」
「ああしてカレーがあると何処でも言い合うのね」
「そうだろうな、しかしな」
「しかし？」
「ああしたことを続けてたらな」
　洋佑はこうも言った。
「もう八条町のカレーがある店全部でな」
「洋食屋さんみたいにね」
「そんな言い合いするなってなるな」
「というか喫茶店でもなってるし」
「あの店もな」
「なるわよ」
「カレーがある店なら何処でも言い合ってるしな」　
　洋佑も美稀のその言葉に同意して頷いた。
「それだったらな」
「そうなるわよ」
「というか商店街全体でか？」
　個々の店に限らずというのだ。
「そうなるか？」
「なるかも知れないわね」
「本人さん達は必死でもな」
　彼等にしては、というのだ。
「周りにはどうでもよくてな」
「しかも五月蝿くて迷惑だから」
「そうなるかもな」
「そうよね、私達にしてもね」
「迷惑だよ」　
　洋佑ははっきりと言い切った。
「静かに楽しく食わせろって思うぜ」
「全くよね」
「音楽を聴きながら食うんならともかく」
「喧々諤々のしかもどうでもいい言い合いなんてね」
　美稀はここではあえて議論と言わなかった。
「それこそね」
「どうでもいいからな」
「そうよね、全く以て」
「そんな言い合い他の人は聴きたくないんだよ」
「だから商店街全体でね」
「そうした決まりが出来るかもな」
「そうなってもおかしくないわね」
　美稀は冷めた目と声で洋佑に答えた、そしてだった。
　二人で商店街の店を回って庶民的なデートを楽しんだ、そのデートから暫くしてだった。