嗚呼三十三対四
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第四章
だが今は違う、彼等は確信していた。
「兄貴もおるんや」
「兄貴がおるだけでちゃう」
「兄貴おる限り阪神は打つ」
「不動の四番がおるんや」
金本知則、彼の存在が大きかった。二〇〇三年の優勝も彼の存在がどれだけ大きかったかファン達は知っていた。
それ故にだ、彼等も金本には絶対の信頼を置いていたが。
彼は打たなかった、逆にロッテのマリンガン打線がだった。
六回にその攻勢がはじまった、サブローとフランコが打ち李が二試合連続のアーチを放って五点を奪った、これでだった。
試合を決めた、李は二試合目にして三ホーマーとなった。
「あの李打つな」
「韓国球界きってのスラッガーだけあるわ」
「ほんまよお打つ」
「見事なもんや」
巨人以外には優しい阪神ファンは李を素直に賞賛した。
「阪神におったらな」
「そう思うな」
「ええホームランや」
「うちに欲しいわ」
心から言う、そしてその間にだった。
八回になえりまたしても今江が打ち橋本も打ってだった、この試合もだった。
「十点か」
「十点献上かいな」
「これはあかんわ」
「今日は負けか」
今日『も』ではなかった。しかも。
渡辺は九回を被安打四無四球と抜群の投球を見せシリーズ初登板初完封を達成した。ロッテはこれで二連勝となった。
「二試合で一点かいな」
「今江は昨日ヒット四本打って今日も四本」
「シリーズ記録八打席連続安打かいな」
「二試合連続二桁得点もシリーズ初らしいわ」
「何でもかんでもシリーズ初やな」
「まあええ」
ここでこうした言葉が出た。
「三試合目から甲子園やしな」
「そやそや、二勝くらいさせてやらんとあかん」
「ロッテも格好つかへんわ」
「こっから四連勝や」
「一気にやったるからな」
「ロッテに阪神の真価見せたるで」
「うちの投手陣も真の力見せる」
「ダイナマイト打線が遂に爆発や」
「こっからや、こっから」
「やったやるで」
二〇〇三年のシリーズからの敵地での連敗記録は六となっていて金本も今岡も打っていなかったがもうそれは気にしていなかった。かくして戦場は阪神の本拠地である甲子園にと移った。ファン達にとっては聖地や。
「さあ、逆転や」
「何ていうても本拠地やからな」
「今日は勝つで」
「勝たん筈がないわ」
「四連勝や四連勝」
「それで日本一や」
口々に言う、甲子園は黒と黄色で染まっていた。先発は阪神が下柳、ロッテはが小林宏之という顔触れだった。
二回に試合は動いた、サブローにツーベースが出て。
「またかい!」
「そこでかいな!」
暴投でそのサブローが三塁に進んだ、二塁と三塁では全く違う。ここでバレンタインは的確な得点を目指した。
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