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嗚呼三十三対四

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第一章

                 嗚呼三十三対四
 二〇〇五年阪神タイガースはセリーグを制した、好調の打線と先発投手陣もよかったがやはり何といってもだった。
「中継ぎ抑えの安定がよかったわ」
「JFK最高や」
 ジェフ=ウィリアムス、久保田、藤川の三人だ。この三人が出ればもう試合は勝った様なものだった。そこまでの中継ぎ抑えだったのだ。
「阪神を打とう思ったら六回までや」
「七回までいったらこっちのもんや」
「もっと六回までもそうそう打たせへんで」
「井川とかはそう打てんわ」
 伝統的に投手陣のチームだがこのシーズンは特にだったのだ。
「リーグ制覇も当然や」
「さあ、次は日本シリーズや」
「ソフトバンクでもロッテでもやったるで」
「圧勝したるわ」
「日本一や、日本一」
「絶対になるで」
 それこそとだ、ファン達は心から笑顔で言っていた。だがまずは相手が決まることからだった。
 そしてその相手はだ、何処かというと。
「あっ、ロッテ勝ったわ」
「二位やったロッテがかいな」
「ソフトバンクまたクライマックス負けたんかいな」
「まさかやな」
 阪神ファン達はこのことは少し意外に思った。
「第三次御堂筋決戦かって思ったら」
「まあホークス今は福岡におるけれどな」
 かつての阪神と南海のシリーズが御堂筋決戦、関西球団同士のシリーズだったのでこう呼ばれていたのだ。
「二〇〇三年の雪辱って思ったけど」
「相手ロッテか」
「シリーズではじめての組み合わせやな」
「そやな」
「それでロッテってどないやねん」
 相手の千葉ロッテマリーンズのことも話された。
「強いんかいな」
「監督ええで」
 ボビー=バレンタインのことが最初に話された。
「智将やで」
「何しろ戻って来てくれって声が何年もあった位や」
 一度ロッテの監督になっていたが一年で当時ロッテのゼネラルマネージャーだった広岡達朗がコーチ陣との対立を聞いて解任したのだ。
「とにかく采配が上手い」
「選手のことも相手のこともわかっとる」
「ほんまの智将や」
「そのバレンタインが相手か」
「勝てるか?」
「アホ、勝てるわ」
 こうした時のお約束の展開が為された。
「今年の阪神やったらな」
「打線はええしピッチャーも揃ってるからやな」
「特にJFKがな」 
 自慢の中継ぎ抑えがやはり大きかった。
「六回終わったら点はやらん」
「それで負ける筈がないわ」
「勝つのはうちや」
「阪神タイガースや」
「ボビーが何ぼのもんや」
 ファン達は怪気炎をあげていた、絶対に日本一になると確信していた。そのうえでシリーズを迎えたのだった。
 第一試合は千葉マリンスタジアム、ロッテの本拠地で行われた。阪神の先発はエース井川慶、ロッテはやはりエースの清水直行だった。
 関東にも阪神ファンは多い、巨人というマスコミの過剰宣伝北朝鮮のそれと変わらない洗脳にも似たものでファンが増えていたがそれもネットの普及で終わった。戦後日本の歪みを象徴する巨人崇拝の歴史は終わったのだ。 
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