猫可愛がり

　　　　　　　　　　　　　　　　　猫可愛がり
　ミミはいきなり時田家に来た、一家の主人である佳正が休日の時に外に散歩に出ているとだ。前からやって来てだ。
　家までついて来た、そして家の中に入りそのまま時田家の猫になった。
　そのミミを見てだ、長女の佐和は言った。
「急にお家に来たの」
「お父さんが散歩をしていたらな」　
　佳正は娘にそのことを詳しく話した。
「家に来たんだ」
「野良猫が」
「随分人に慣れているがな」
　黒地の錆模様の猫だ、白や灰色、茶色も入っていて中々複雑な毛並みだ。腹は白く耳は大きい。その大きな耳から佳正はミミと名付けた。顔はミミズクに似ている。
「そうだったみたいだな」
「最初首輪なかったし」
「そういうのを見たらな」
「やっぱり元野良猫ね」
「多分そうだな」
　中学二年の上の娘に話した。
「確かに人に慣れてるがな」
「何か来てすぐにおトイレとか出来てキャットフードも抵抗ないし」
「やりやすい猫だな」
「かなりガサツだけれどね」
　行動は乱暴だ、家族にすぐに攻撃を仕掛けもする。
「そうね」
「うん、ちょっとね」
　次女の亜美も言う、小学五年で見れば二人共父親よりも母親の恭子に似ている。髪の毛の色や質、顔立ち等もだ。
「この娘乱暴よね」
「ガサツっていうか」
「元野良猫のせいかしら」
「えらく凶暴よね」
「それは仕方ないな」
　佳正はこう娘に言った、中年太りがそろそろ気になりだしている顔で。ついでに言えば髪の毛も心配になってきている。
「そうした猫ってことでな」
「お父さん猫好きよね」
「何かと」
「ああ、好きだよ」
　父も否定せずに娘達に答える。
「だから拾ったんだ」
「そうなのね、まあお母さんも好きだし」
「これでお家の猫三匹目だけど」
「ミミも可愛がるにね」
「そうするのね」
「そうするからな、やっぱり猫はいい」
　猫好きならではの言葉だった。
「じゃあ大事に育てるぞ」
「うん、それじゃあね」
「そうしましょう」　
　二人も何だかんだで猫好きなので乗ってだ、そうしてだった。
　母の真澄も入れて四人でミミも可愛がった、先に拾ってきたペコとシロと一緒にミミもそうした。だがここでだった。
　三匹共、雌の三毛猫のペコもやはり雌の白猫のシロと共にミミも甘やかした。それは特に父の佳正が酷く。
　御飯を好きなだけあげて水も飲ませる、家の中でぬくぬくと育てにこやかな笑顔だけを向けて好きなだけ寝させた。
　するとだ、次第にだった。まずは佐和が気付いた。