シャット＝アウト

「それで終わりだから」
「本当に？」
「ええ、黒糖焼酎ね」
　それを飲むとだ、私は言った。
「それで終わりにするわ」
「それじゃあ」
　彼もそれならという顔で頷いてくれた、そしてだった。
　私は黒糖焼酎を注文してロックのそれを飲んだ、そして飲み終えるとだ。
　彼にだ、強い声で言われた。
「ここで完全にね」
「終わり？」
「約束したよね」
　有無を言わせない口調だった。
「さっき」
「ええ、これで終わりって」
「だったらね」
「もう飲むなっていうのね」
「そうだよ」
　その通りという返事だった。
「もう絶対にだよ」
「厳しいわね」
「君飲んだら止まらないから」　
　だからだというのだ。
「幾らでも飲むから」
「暴れたり潰れたりしないわよ」
　強さには自信がある、それも絶対のものが。
「それは知ってるでしょ」
「知ってるけれど」
　それでもというのだ。
「もう止めないと」
「駄目っていうの」
「そうだよ」
「ううん、じゃあこれで」
「これ以上飲むなら切るから」
「切るって？」
「置いて帰るから」
　デートはまだしているがその途中でもというのだ。
「本気でね」
「それじゃあ」
「そう、いいね」
「そこまで言うのなら」
「わかったね」
「わかったわ」
　今度は私が不承不承答えた。
「それじゃあもう今日は飲まないわ」
「そうしてね」
「もう全部食べたし」
　肴もだ、烏賊の足も焼酎と一緒に全部食べた。
「それじゃあね」
「帰ろうね、デザート食べて」
「デザートは何にするの？」
「ケーキかアイスクリームか」
　彼はそうしたものを話に出した。
「どっちかでね」
「それじゃあ最後は」
「うん、そうしたものを食べてね」
「終わりね」
「飲むのはね」
　それで切るというのだ、そしてだった。　
　実際に飲むのはこれで終わりだった、飲むと際限のない私のそれを容赦なく切ったうえでだ、私達はお勘定を払ってお店を出た。
　後は私の部屋で一緒に過ごした、けれどだった。
　私も切らないといけないことがある、そのことを思いながら一緒に過ごした。彼だけでなくだ。そんなことを思いながら彼との夜の時間も過ごした。


シャット＝アウト　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１６・１１・２４