FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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ありがとう
前書き
ずいぶんと久しぶりの更新になってしまいました。
暑さとめんd・・・疲労でなかなか書く時間が取れなかったもので・・・
第三者side
「ハァッ!!」
小さな魔法陣をいくつも書き上げ、それを同時に敵へと放つ小さな少女。
「ホイホイ」
しかし、それは敵へと命中することはなかった。相手が手をかざすと、放たれた魔法は一直線に飛んでいかず、女性の脇に落ちてしまう。
「ふふっ、あなたじゃ私は倒せないかな?」
「むむむ!!」
終始サクラを舐めたような目で見ているエミの態度に、彼女はどんどん苛立っていく。しかし、サクラが敵の意識を引き付けているうちに、エミの背後に一つの影が回り込む。
「隙だらけよ!!」
手刀を振りかざし、女性の首を攻撃しようとした白髪の少女。しかし、その攻撃は読まれていたのか、容易く回避されてしまう。
「あんたは気に入らないわね。私の魔法が効かないなんて・・・」
歯軋りをさせそうなほど奥歯を強く噛み締めているエミが、忌々しそうにシャルルを睨む。その理由は、シャルルに自身の魔法が効かないからであった。
「僕も手伝うよ~!!」
「ラウもやるやる!!」
それを見て好機と考えたのか、セシリーとラウルがミリアーナを置いて攻めに出る。それに気がついたエミが魔法を使おうと手のひらを向ける。
「あれ、こいつらも・・・」
しかし、その手を女性はすぐさま引く。理由は、シャルル同様二人にも自分の魔法が通じなかったからだ。
(もしかして、シャルルたちの本当の姿と違うから、魔法がうまく機能してない?)
今は人の姿になっているとはいえ、三人はエクシードと呼ばれる猫のような姿を本来はしている。しかし、相手はそのことを知らない。そのため、うまく魔法が機能しておらず、戦いづらくなっているのだとサクラは見抜いた。
(それなら・・・)
何やら思い付いたらしく、手早く魔法陣を書き上げていくサクラ。彼女は出来上がったそれを、敵ではなく味方のラウルへとぶつける。
「んぎゃっ!!」
不意を突かれた格好のラウルは思わず声を上げた。そして文句を言おうとしたところ、自身の体に変化が起きていることに気がつく。
「え?ちょっと・・・?」
「何・・・これ・・・」
自分の手や足を見ながら嫌な汗を流しているラウルと、そんな彼を見上げているシャルルとセシリーが同じような顔をしている。
「フフッ、それはねぇ・・・」
得意気な表情を見せているサクラが、呆気に取られている仲間や敵に説明する。
「どんなものでも大きくする魔法だよ!!」
キラッと可愛らしく笑みを見せたサクラだったが、今はそれどころではない。なぜならラウルの大きさは、人のそれを遥かに上回るほどで、ちょっとでも動けば周囲に大きな被害を出しかねないほどだったからだ。
「「「デカすぎーっ!?」」」
思わず絶叫するエミ、シャルル、セシリーの三人。ラウルはもはや呆気に取られて何もできずにいる。
「さぁラウル!!そのままそいつ踏んづけちゃえ!!」
「いや!!元に戻してよ!!」
バランスの魔法を発動するには敵のサイズがきちんとわかっていないとできないことに気付いたサクラは、元々のサイズもわかっていないラウルをさらに巨大化させ、一撃で勝負を決めようとした。それに対し正気を取り戻したラウルはサクラに元通りにしてもらおうとして彼女の方を向こうとしたその時・・・
ぐちゃ
足元で嫌な音が聞こえた。
「「「あ・・・」」」
ゆっくりと足を退けると、そこには地面にめり込み意識を失っている女性の姿があった。
「やった!!狙い通りだよラウル!!」
あまりに呆気ない終わり方に唖然としている三人をよそに、一人手を叩き大喜びのサクラはピョンピョン跳び跳ねている。
「よし!!じゃあこいつをシリル先輩のところに連れてこ!!誉めてもらえるぞぉ」
完全に伸びている女性の足首を掴み、ズルズルと引きずっていくサクラ。だが、彼女に大きさを変えられたラウルは彼女に早く戻してもらおうとそのあとを追いかけ、敷地内を大いに荒らしてしまったのであった。
「どんな魔法も切り裂く剣か・・・」
衣服についた土を払いながらその場に立ち上がる二人の竜。その前に立ちはだかるのは、光のように輝いている刀を構えた女性と、彼女と共に戦っている男。立ち上がってきた二人に向け、エーメは鋭い目付きで刀を構える。
「ネイモン。お前はフォローでもしててくれ」
「しゃあないか・・・」
闘う機会を取られてしまいどこか悔しそうだか、納得しているような表情を見せる男は、女性の影に隠れるようにしている。
ダッ
先頭の準備が整ったのかどうかも判断できないようなタイミングで動き出したエーメ。彼女のその動きはまるでカグラのように速く、瞬く間に二人の懐へと入り込む。
「もらった!!」
並んでいた二人の竜の首目掛け刀を振るう。しかし、その一撃は二人の首には届かなかった。
「魔法を切り裂けても、ドラゴンの鱗までは貫けないみたいだな」
「なっ・・・」
ドラゴンフォースによって全身に魔力とドラゴンのような鱗が浮き出しているスティングは、己の首もとに向かってきていた光の剣を容易く掴み取っていた。エーメはそれに対し剣を引き抜き反撃しようとするが、青年の握力が強すぎてどうすることもできない。
「エーメ!!」
それを見ていたネイモンは慌てて彼女の助けに入ろうとしたが、一人足りないことに気が付く。
「影を捉えることはできない」
「!?」
後ろから声が聞こえ振り返ると、それと同時に腹部に鈍痛が走る。痛みに耐え兼ね膝を付くと、その視界に黒髪の青年がいることに気が付いた。
「白竜の・・・」
「影竜の・・・」
「「咆哮!!」」
一瞬のうちに敵の動きを封じ込めた2頭は、隙を与えることなどせずにブレスを放ち、二人を気絶させる。
「お前たちが強いのはよくわかった」
「だけど、俺たちだって強くなってんだよ」
大魔闘演武、冥府の門との戦いで力不足を認識した彼らは、シリルたち同様に己を磨いていた。全ては憧れていながらも、容易く自分たちを払い除けた二人のドラゴンを越えるために。
ザシュッ
「ガハッ」
皆が苦戦しつつも勝利を納め始めていたその頃、唯一圧倒的な力で敵を圧倒している人物がいた。
「これで・・・」
血塗れになりつつある全身黒尽くめの人物の腹部に蹴りを打ち込み宙に上げると、体を屈め、一気に飛び上がる。
「トドメだ!!」
悲鳴を上げることすら許さずに男の体を切りつけたカグラは着地すると剣を鞘へとゆっくりと納める。
切り込まれた青年は、激痛に耐えることなどできるはずもなく、その場に力なく崩れ落ちた。
「正直、力試しにもならなかったか」
マーガレット祭でシリルに圧倒される結果になってしまったカグラは、悔しさを忘れるために、そして強くなるために今まで以上に力を付けてきた。そんな彼女からすれば、今倒れている男は相手としては物足りないのかもしれない。
「カグラさんも終わったんですか?」
弱冠不機嫌になっている剣士の元へ、敵と思われる女性を引きずってきている少女がやって来る。
「そっちも終わったか・・・って、ミリアーナじゃないのか?」
「ミリアーナさんは動きを封じられてまして・・・」
当初と予定が変わってしまったものの、結果的に敵を倒すことができたのでよしと考えていたところ、カグラの目がギョッとする。
「サクラァ!!早く戻してよぉ!!」
なぜなら彼女の後ろから、巨大なオレンジ色の少年?が駆けてくるのだから。
「な!!なんだ!!こっちに来るな!!」
「あっ!!待ってくださいカグラさん!!」
「逃げないでよサクラ!!」
危険を察して思わず逃げ出したカグラとそれを追いかけるサクラとラウル。サクラがラウルを戻し忘れたことが災いし、城内は大騒ぎとなってしまっていた。
ザシュッ
同時に動き出した二人の男女。そのうちの一人、紫色の髪をした青年の腹部に何かが刺さり、その箇所から鮮血が吹き出す。
「幻竜の・・・」
しかし、彼はそれに怯むようなことはしなかった。立ち止まることなく前進すると、右の手のひらを握り締め、魔力を込める。
「鉄拳!!」
「!!」
自身の攻撃が先に命中したことから、先ほどまでのように攻めに入れると考えていたイザベリーは、予想外の出来事に反応できず、かつての仲間の重い一撃を受けてしまう。
「やっと本気になったね!!グラン!!」
大きなダメージを受けたはずなのに、彼女は笑みを溢し目の前の青年に手を向ける。
シュッ
その手元からわずかに聞き取れるかどうかと言うほどの小さな音。それは彼女の手から魔法が放たれたこと物語っていた。
ヒュンッ
「!!」
だが、その一撃は彼を捉えることが出来なかった。すぐ目と鼻の先にいたはずの相手は、まるで予期していたかのように体をずらし、あっさりと攻撃を回避して見せた。
「ハアッ!!」
「がっ!!」
驚愕の表情を浮かべていたイザベリーは再度放たれた敵の拳に瞬く間に飲まれる。そのまま、グラシアンはがむしゃらに彼女を攻めていく。
「クソッ!!」
ただひたすらに拳を振るっているグラシアンと、なす統べなく打ち込まれるイザベリー。しかし、彼女はその中で、一つの違和感を覚えた。
(泣いてる?)
自身の攻撃している青年が、ポロポロと涙を溢しながら彼女を攻め立てているのだ。その表情は、悲しみと悔しさに苛まれていた。
「アアアアアッ!!」
まるで迷いを振り切るかのように、ただひたすらに声を上げながら、自分の思考も追い付かないほどに拳を繰り出すグラシアン。
(やっぱり・・・グランは優しいね)
脳裏を過るのは彼との楽しかった思い出の数々。さらには今までに死んでしまった仲間たちの顔だった。
(ハル・・・ユウ・・・ヒナ・・・グランはみんなが思ってたような人じゃないよ・・・)
目から小さな雫が溢れてくる。痛みからではなく、彼を裏切り者として恨んでいた仲間たちに、本当のことを伝えられなかったことが、悲しくての涙だった。
(ヒナに会えたら言おうかな?あ、でももう会えないのかも)
きっと自分は彼の手によって捉えられ、また不自由な身になるのだとわかっていた。しかし、また辛い日々に逆戻りのはずなのに、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ありがとう、グラン」
そう呟いた瞬間、休まることなく振るわれ続けた彼の攻撃が止まった。
それにより彼女は、力なく地面へと倒れ、攻め続けた青年も、力を使い果たしたのか、彼女に被さるように倒れる。
「重いよ、グラン」
「ごめん・・・」
イザベリーは覆い被さっている青年にそう言い、彼はなんとか体を持ち上げるが、そこから動くことができない。
「ごめん・・・ホントごめん・・・」
何度も何度も謝罪を繰り返すグラシアン。それがどういうことなのか、彼女にはすぐにわかった。
「いいの。それがグランのやるべきことなんだから」
涙を溢す青年の頬を拭いながら、彼を慰める女性はどこかスッキリした表情をしている。
「私の気持ち・・・もっと早く伝えてたら、違う未来になっていたのかな?」
以前彼女が彼に伝えたその気持ちは、ウソなど微塵もない。本当に彼のことを愛していて、そして一緒になりたいと思っていた。
「それでも俺が悪いやつなのは変わらないぜ」
「そんなことないよ。グランはとっても優しい人なんだから」
それから互いに何を言えばいいのかわからず、ただ沈黙の時間が流れていく。どのくらいの時間が経っただろうか、青年はゆっくりと立ち上がると、起き上がることのできない彼女をお姫様抱っこする。
「あれ?何コレ役得?」
冗談めかしたような口ぶりで青年の顔を見上げるイザベリー。それに対しグラシアンは小さく口角を上げる。
「もうこんなことできないかもしれないから、いい思い出にしろよ」
「フフッ、そうさせてもらおうかな」
それからグラシアンはゆっくりとした足取りで、他の魔導士たちが集まっているはずの場所へと歩を進めていた。その間二人の間にやり取りは一切なかったが、二人ともスッキリとした笑顔を浮かべていたのが、非常に印象的だった。
後書き
いかがだったでしょうか。
これでホッパー以外の敵は全滅です(端折りすぎ!!)
次は当ストーリーラストゲームです。
それから本編の方に戻っていこうかな?
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