英雄伝説~灰の軌跡~
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第22話
~パンダグリュエル・パーティーホール~
「そ、そんな……!”百日戦役”が勃発した理由がエレボニア帝国の自作自演だったなんて……!」
「しかも戦争を起こす為に内密に雇った猟兵達に自国の村を滅ぼさせるなんて……!」
「ひ、酷すぎるよ……!」
「リベールは完全に被害者だね……」
「余りにも卑劣で愚かすぎる話です……!」
「……そうね。人間はたまに信じられない程愚かな事をするのは確かね。」
事情を聞き終えたエリオットとマキアスは信じられない表情をし、トワとジョルジュは悲痛そうな表情をし、怒りの表情で声を上げたエマの意見にセリーヌは静かな表情で頷き
「父上、今の話は本当なのですか!?」
「ああ……残念ながらな。」
血相を変えたラウラに尋ねられたアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って頷き
「シャロンは……当然知っているのよね……?」
「―――はい。”蛇の使徒”は当然ですが”執行者”も全員”ハーメルの惨劇”の真相は知っていますわ。」
不安そうな表情をしているアリサに尋ねられたシャロンは静かな表情で頷いた。
「その……クレア大尉やミリアムは……」
「当然知っているよ~。」
「……鉄道憲兵隊も私を含めた将校クラスには全員情報が開示されています……」
複雑そうな表情をしているマキアスに視線を向けられたミリアムとクレア大尉はそれぞれ答えた。
「……”百日戦役”にまさかそのような”真実”が隠されていたとは……」
「……猟兵達に虐殺されたハーメルの人達はどんな気持ちだったんだろう……」
ガイウスは真剣な表情で呟き、元”猟兵”であったフィーは複雑そうな表情をした。
「……レン君。やはりアルフィンやダヴィル大使も”ハーメル”の件を知ってしまったのかい?」
「ええ。二人とも知らない様子だったから、それを見かねたシルヴァンお兄様が二人にも”ハーメル”の件を教えるべきだと指摘したらアリシア女王やクローゼお姉さんが教えてくれたそうよ。」
「そうか………………二人ともさぞ、ショックを受けた事だろうね……」
「殿下…………」
自分の質問に答えたレンの答えを聞いて重々しい様子を纏っているオリヴァルト皇子をアルゼイド子爵は辛そうな表情で見守っていた。
「……それで?何でメンフィルは今回の戦争の件とは無関係の”ハーメル”の件の公表を要求したのかしら?まさかとは思うけど、”剣帝”がリィンみたいに手柄をあげて、その”褒美”として”ハーメルの惨劇”の公表を要求したのかしら?」
「へ……な、何でそこで僕達をここまで案内したさっきの元”執行者”の人の名前が出てくるんですか?」
レンに問いかけたサラ教官の質問を聞いたマキアスは呆けた後困惑の表情で疑問を口にした。
「―――レーヴェ様は”ハーメルの惨劇”で生き残ったこの世で生きている数少ない”ハーメル”出身の方なのです。」
「ええっ!?」
「まさか”ハーメルの惨劇”で生き残った人達がいて、その内の一人がさっきの人だったなんて……」
シャロンの説明を聞いたトワは驚き、ジョルジュは信じられない表情で呟き
「その口ぶりだと、サラは”剣帝”が”ハーメル”の出身である事を知っていたの?」
「……ええ。」
フィーの疑問に対してサラ教官は重々しい様子を纏って答えた。
「ちなみに”ハーメルの惨劇”で生き残った”ハーメル”出身の方は二人で、残りの一人の方もそうですがレーヴェ様が”結社”入りした理由は”ハーメルの惨劇”が一番の理由と聞いておりますわ。」
「シャロンさんが先程挙げた人物は自分の目の前で大切な姉君を失った事が原因で心を壊してしまい、その結果”リベールの異変”を起こし、主戦派を唆せた”結社”の”蛇の使徒”の一柱―――”白面”ワイスマンに操られ……そしてレーヴェ君は”ハーメルの惨劇”の件を知り、”人”に絶望した彼が”人という可能性”を試す為に結社入りしたとの事だ。」
「”人という可能性”……ですか。」
「アタシはてっきりハーメルの復讐の為かと思っていたけど……」
「二人が結社に入った理由も全ては”ハーメルの惨劇”によるものだったのですか………殿下、もう一人の”ハーメルの惨劇”から生き残った方は今どうしているのでしょうか?レオンハルト殿は結社から抜け、メンフィルに所属していますが………」
シャロンとオリヴァルト皇子の説明を聞いたエマは複雑そうな表情で考え込み、セリーヌは目を丸くし、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた後ある事に気づいてオリヴァルト皇子に訊ねた。
「もう一人の”ハーメルの惨劇”から生き残り、結社入りしていた人物は随分前に結社の任務で”ある高名な遊撃士”の暗殺をしようとしていたらしいのだが、暗殺は失敗し、失敗した彼は結社の者達に”口封じ”されそうになったとの事だが暗殺対象であった遊撃士が彼に襲いかかった結社の使い手達を撃退、その後遊撃士は彼を引き取って自分の家族にして、その遊撃士に引き取られた人物は色々とあったようだけど今はレーヴェ君同様”光”の道を歩んでいるよ。」
「ええっ!?こ、殺されそうになったのに、その襲撃者を守った上家族にしたんですか!?」
「一体どんな人なのかしら……?」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたエリオットは驚き、アリサは戸惑いの表情で考え込み
「遊撃士と言う事はその遊撃士の事はもしかして教官やトヴァルさんも知っているのだろうか?」
「ああ、当然知っているぜ。まあ、今は遊撃士を辞めて軍人をやっているがな。」
「ちなみにその人は以前話した帝国各地の支部を爆破した猟兵団を叩き潰す為に力を貸してくれた”頼りになる助っ人”よ。」
「そ、そうだったんですか………って、もしかしてミリアムもその人の事を知っているのか?」
ガイウスの質問にトヴァルとサラ教官は口元に笑みを浮かべて答え、二人の話を驚いた様子で聞いていたマキアスはある事に気づいてミリアムに視線を向けた。
「当然知っているよ~。何せその件でその人、ボク達”情報局”に滅茶苦茶警戒される事になったし。」
「お願いしますから、そういう事は口にしないでください、ミリアムちゃん……」
ミリアムの答えを聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中、クレア大尉は疲れた表情でミリアムに指摘した。
「話を戻すが……―――レン皇女殿下。何故、メンフィル帝国は和解条約に今回の戦争とは関係のない”ハーメルの惨劇”の公表を入れたのでしょうか?」
「うふふ、その理由も答えてあげてもいいけど、正直みんな信じられない理由だと思うわよ?」
アルゼイド子爵の質問にレンは小悪魔な笑みを浮かべてアリサ達を見回した。
「一体どんな理由なんだろう……?」
「………―――レン君、その”理由”をどうか私達にも教えてくれ。」
レンの問いかけにトワが考え込んでいる中オリヴァルト皇子は決意の表情でレンに訊ねた。
「うふふ、そこまで言うのだったら仕方ないわね。和解条約に”ハーメルの惨劇”の公表がある理由。それは………――――”空の女神”エイドスが”ハーメルの惨劇”を公表する事を望んだからよ。」
「…………………」
レンの答えを聞いたその場にいる全員は一瞬理解ができず石化したかのように固まったが
「ええええええええええええええええええっ!?」
やがて我に返ると多くの人物達が驚きの声を上げた!
「そ、そ、そそそそそ、”空の女神”って事は女神様がこのゼムリア大陸に降臨したんですか……!?」
エリオットは混乱した様子で声を上げ
「バカな……”空の女神”は確か………――――!レン君、”空の女神”が”今のゼムリア”に現れたのはやはり”彼女”が関係しているのかい?」
「ええ、そうよ。ちなみにアドルお兄さん達やナユタお兄さん達も”この時代”に来ているわよ♪」
「そうか……”彼ら”もこの時代に来ているのか…………ハハ……喜んでいいのやら、悪いのやら。」
「あの……殿下は先程のレン皇女殿下のお話で出て来た”空の女神”について何かご存知なのでしょうか?」
「………………!(まさか……空の女神は”時代を越えて来た”の!?)」
レンとオリヴァルト皇子の会話の内容が気になったジョルジュがオリヴァルト皇子に質問している中ある事に気づいたセリーヌは目を細めた。
「……まあね。―――ただ悪いが”その件”についてはみんなには教えられない。空の女神が今のゼムリアの地に現れた”方法”が第3者に知れ渡れば、ゼムリア大陸自身の”歴史”が滅茶苦茶になる可能性が非常に高いからね。」
「殿下、それは一体どういう意味なのですか?」
「……………」
「ブーブー。誰にも教えないから、ボク達にも教えてよ~。」
「いや、むしろ”情報局”に所属している君に教えるのが一番ダメだろ……」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたアルゼイド子爵は尋ね、クレア大尉は真剣な表情で考え込み、不満そうな表情で答えたミリアムにマキアスは呆れた表情で指摘した。
「レン皇女殿下。”ハーメルの惨劇”を公表する事を望んだ人物は”空の女神”と仰ったが、メンフィルは何故その人物が”空の女神”であるとわかったのだろうか?」
「そ、そう言えば………」
「言われてみればそうだな………七耀教会ですら、”空の女神”の本当の姿すら知らないはずだぞ。」
ガイウスのレンへの質問を聞いたトワは目を丸くし、トヴァルは真剣な表情で呟いた。
「うふふ、実は”リベールの異変”の半年後に”影の国”というゼムリアどころか、ディル=リフィーナの人物達まで巻き込み、更には時空を超えた人物達まで巻き込んだ事件に巻き込まれてね………その時に遥か昔に生きていた”空の女神”の両親も巻き込まれて、その人達と一緒に協力して”影の国”事件を解決したのよ♪」
「ええっ!?そ、”空の女神の両親”!?」
「し、しかも異世界どころか時空をも超えた人物達まで巻き込む事件があったなんて………まさかその事件も”リベールの異変”の時に現れた”至宝”によるものかしら………?」
「………正直わからないわ。”リベールの異変”の時に現れた”至宝”が”時”に属するのだったら、恐らくその可能性が考えらえるのだと思うのだけど………」
「まさか”空の女神”にご両親が存在していたとは…………」
「なるほど………ご両親を知っていれば、ご両親のご息女である”空の女神”もご両親のどちらかに似ている可能性は非常に高いでしょうから、メンフィルは”空の女神”がどのような姿や容姿をしているのかの推測はできていたという事でしょうね………」
「七耀教会にとっては驚愕の事実だろうね。」
レンの説明を聞いたアリサは驚き、エマの疑問を聞いたセリーヌは目を細めて指摘し。ラウラは信じられない表情で呟き、シャロンは考え込みながら推測を口にし、フィーは静かな表情で呟いた。
「あ~、あの事件か~。確かあの事件はオリヴァルト皇子も巻き込まれていたから、”空の女神”についての”何か”を知っていたんだね~。」
「ミリアムちゃん!殿下に対して不敬ですよ!?」
ミリアムは意味ありげな笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめ、ミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は声を上げてミリアムを注意した。
「……殿下、今の話は本当なのですか?」
「……ああ。”影の国”事件が解決し、それぞれが帰還する前に”空の女神”の両親達が自分達の時代に戻り、その後に判明したんだ。―――レン君、何故”空の女神”は”ハーメルの惨劇”を世界中に公表する事を望み、そして今回の両帝国の戦争の和解条約に組み込んだんだい?」
アルゼイド子爵の確認の言葉に頷いたオリヴァルト皇子は真剣な表情になってレンに訊ねた。
「クスクス、”空の女神”が”ハーメルの惨劇”を公表する事を決めた理由はある意味当然と言えば当然の理由よ。その理由は…………――――”ハーメルの惨劇”が”空の女神”としても許し難き所業で、しかもその”大罪”を犯した事を償う所か後悔すらもせずに12年も隠蔽し続けてきた事が絶対に許せなかったそうよ?」
「それは………………」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの説明を聞いたオリヴァルト皇子は複雑そうな表情をし
「うふふ、アルフィン皇女やダヴィル大使もさぞ顔色を真っ青にしたでしょうね?―――何せ”空の女神”自身の口から”ハーメル”の件を”空の女神”は絶対に許せないって言葉を聞いたのだから。」
「何ですって!?という事は皇女殿下達も”空の女神”と邂逅したっていうの!?」
説明を聞いてある事に気づいたサラ教官は血相を変えてレンに訊ねた。
「ええ。実はアリシア女王から第六条の件をリベールに詳細な説明をして欲しいって要請された時に、シルヴァンお兄様が予め渡していた通信機で連絡して、”空の女神”をグランセル城に呼び寄せたのよ。」
「なっ!?そ、”空の女神”がグランセル城に!?」
「………まさかアルフィン達が”空の女神”と会っていたとはね。常識で考えれば貴重な体験だろうけど、”空の女神”はハーメルの件でエレボニアに怒りを抱いていたのだから二人にとっては生きた心地はしなかっただろうね………」
レンの答えを聞いたマキアスは驚き、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。
「”空の女神”に通信機を予め渡していたって事はメンフィル帝国は最初から、第六条の件については”空の女神”に説明させるつもりだったのですか?」
「当たり前よ。元々和解条約は第五条までで、第六条は”空の女神”の要請によって追加された条約なのだから、条約を追加した本人に説明してもらうのが”筋”でしょう?で、話を続けるけど”空の女神”が今回の両帝国の戦争の和解条約に”ハーメルの惨劇”を公表する事を組み込んだ理由は今回の戦争の和解調印式がちょうど良い機会だからだったそうよ。」
「……なるほど。自身を崇めている七耀教会を通じて要請した所で国際的立場で言えば”強者”であったエレボニア帝国は自ら自国の権威が地の底まで落ちる事になる”ハーメルの惨劇”の公表は絶対にしなかったでしょうが、恐らく”空の女神”は今回の戦争で”敗者側”であるエレボニアは”勝者側”であるメンフィルと和解する為ならば”ハーメルの惨劇”の公表もすると判断したのでしょうね………」
「シャロンッ!」
ジョルジュの質問に答えた後説明を続けたレンの説明を聞いてある事に気づいたシャロンの推測を聞いたアリサは声を上げてシャロンを睨み、その場にいる多くの者達は複雑そうな表情や辛そうな表情で黙り込んでいた。
「ハハ………まさか12年前のツケまで纏めて返ってくることになるとはね………”空の女神”も関わっているから、まさに本物の”天罰”だね………」
「…………………」
オリヴァルト皇子は疲れた表情で肩を落とし、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「うふふ、これで第六条の件については納得したかしら?」
「………ああ。」
「あ、あの……さっきからずっと、気になっていた事なのですが、第五条は一体どういう事なのでしょうか………?”Ⅶ組”のみんなも第五条に関わっているような事が書いてあるのですけど………」
「そ、そう言えば………」
「………しかもアタシ達が導くはずだった”起動者”の”騎神”まで関わっているわね。」
「ええ………”贈与”と言う事はリィンさんが起動できる”騎神”をエレボニアがメンフィルに贈与するという事だと思うのだけど………」
トワのレンへの質問を聞いたエリオットは目を丸くして和解条約書の第五条の部分を読み直し、目を細めたセリーヌの言葉にエマは不安そうな表情で頷いた。
「ようやくオリビエお兄さん達を呼んだ”本当の理由”でもあるその説明に移れるわね。」
「第五条が私達を呼んだ”本当の理由”…………レン君、それは一体どういう事なんだい?」
レンの答えが気になったオリヴァルト皇子は真剣な表情でレンに訊ねた。
「まず第五条の内容は簡単に言えばエレボニアの内戦をメンフィルが介入する事を承諾するって内容よ。で、”騎神”はエレボニアの代わりに内戦を終結させる”報酬”代わりよ。」
「な―――――」
「何ですって!?」
「エ、エレボニアの内戦をメンフィルが介入する事を承諾するって………!」
「レン皇女殿下!無礼を承知で意見させて頂きますが、他国がエレボニアの内戦に介入する等一種の”内政干渉”になります!何故メンフィル帝国はこのような内容を、和解条約に組み込んだのですか!?」
レンの説明を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中オリヴァルト皇子が絶句し、サラ教官とアリサは信じられない表情で声を上げ、クレア大尉は厳しい表情でレンに訊ねた。
「クスクス、ちょうど良い機会だから言わせてもらうわ。――――今回のエレボニアの内戦、このままだと最終的に現在も抵抗をしている正規軍が全て制圧され、エレボニアの覇権を貴族連合軍が握る事になり、エレボニア皇家である”アルノール家”は貴族連合軍の傀儡になると、メンフィルは判断しているのよ。何せ残存している正規軍は反攻作戦に移る所か貴族連合軍を迎撃する事すらにも限界が来ている上、皇族に関しては肝心の現エレボニア皇帝であるユーゲント皇帝と帝位継承権第一位を持つセドリック皇太子は貴族連合軍に幽閉され、皇族で唯一貴族連合軍に対して抵抗しているオリビエお兄さん―――オリヴァルト皇子の戦力は”光の剣匠”、B級正遊撃士が一人、後は士官学院の関係者達の一部と、幾らレン達メンフィルとの戦争で”総参謀”と”黄金の羅刹”を含めた貴族連合軍の精鋭部隊の一部を失ったとはいえ”身喰らう蛇”を含めた裏世界の使い手達も加勢している貴族連合軍に対して戦力があまりにも貧弱過ぎるんだから、普通に考えれば最終的にどっちが勝つかは予想できるでしょう?」
「ッ!」
「そ、それは…………」
「まあ、実際正規軍は戦力で劣っている事に加えて補給すらも厳しい状況だもんね~。」
「しかも”騎神”を所有しているバンダナ男も貴族連合軍に加勢している事に対して、こっちにはバンダナ男に対抗できる戦力―――”騎神”を所有している”起動者”もいないから、どう考えても今の状況だと貴族連合軍に対抗できないわね。」
「そうね…………」
「ハハ………頭で理解はしていても、こうして目の前でハッキリ言われると結構グサッと来るね………」
「………レン皇女殿下。和解条約で我が国の内戦にメンフィル帝国が介入する事を取り入れた理由は、貴族連合軍が勝利した場合我が国は和解条約を守らないと判断したからですか?」
レンの指摘を聞いたクレア大尉は辛そうな表情で唇を噛みしめ、マキアスは複雑そうな表情で答えを濁し、ミリアムは疲れた表情で呟き、セリーヌの言葉にエマは複雑な思いを抱えてリィンの顔を思い浮かべて同意し、オリヴァルト皇子は疲れた表情で肩を落とし、重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいたアルゼイド子爵は目を見開いた後自身が推測したメンフィルの意図をレンに確認した。
「大正解♪エレボニアの覇権を貴族連合軍が握る事になれば、エレボニア帝国は今回の和解調印式で調印した和解条約書の無効を主張して条約内容を一切守らない所か、今回の戦争によって受けた被害に対する”報復”をする為にメンフィル帝国との戦争を続行する事は目に見えているでしょう?だから、エレボニアとの戦争を和解したメンフィルとしてもエレボニアの内戦は正規軍―――いえ、エレボニア皇家である”アルノール家”に勝利してもらう必要があるから、反乱軍である貴族連合軍を制圧できる力も無いエレボニア皇家に代わってメンフィルが介入するって事よ♪」
「そ、そんなっ!?エレボニアの内戦に他国が介入して、内戦を終結させてしまったらエレボニアの国際的立場は……!」
「間違いなく地の底に落ちる事になるだろうね…………」
「そ、そんな………」
「でも、内戦が起きた挙句内戦の最中に起こったメンフィルとの戦争で敗北して、和解する為に多くの領土とアルフィン皇女がメンフィルに差し出した挙句”ハーメルの惨劇”も公表するんだから、その時点で既にエレボニアの国際的立場は地の底まで落ちているような気がするけど。」
「フィー!言って良い事と悪い事の区別もつかないの!?」
レンの答えを聞いてある事を推測でき、表情を青褪めさせたトワの言葉に続くように重々しい様子を纏って答えたジョルジュの答えを聞いたエリオットは悲痛そうな表情をし、静かな表情で呟いたフィーの言葉を聞いたサラ教官は声を上げてフィーに注意した。
「あら、”西風の妖精”はよくわかっているじゃない。レンから言わせてもらえば、エレボニアの権威なんて第五条の件がなくても既にどん底まで落ちる事は決まっているのだし、もはや”国の威信”を気にする必要もないのだから、せめてエレボニアの民達の信頼を少しでも早く取り戻す為に、恥も外聞も捨てて内戦を確実に終結させる方法に頼るべきだと思うのだけど?」
「クッ………!」
「悔しいがある意味正論でもあるな………」
「それ以前に既にアルフィン皇女殿下がユーゲント皇帝陛下の代わりにメンフィル帝国がエレボニア帝国の内戦に介入する事を承諾する事も条約に含まれている和解条約に調印なさっていますから、もはやエレボニア帝国は今回の内戦にメンフィル帝国が介入する事を拒否する事すら許されませんわ。」
「シャロンッ!」
不敵な笑みを浮かべたレンの指摘に反論できないクレア大尉は悔しそうな表情で唇を噛みしめ、トヴァルは複雑そうな表情で呟き、静かな表情で呟いたシャロンの言葉を聞いたアリサは声を上げてシャロンを睨んだ。
「…………………レン君。メンフィルはどのような形でエレボニアの内戦を終結させるつもりなんだい?この条約書通りだと、”Ⅶ組”も関わっているようなんだが。」
重々しい様子を纏って黙り込んでいたオリヴァルト皇子はやがて口を開いてレンに質問した。
「ああ、その件ね。まずメンフィルがエレボニアの内戦を終結させる方法……―――それはエレボニアの内戦を終結させる為にメンフィルが選出した少数精鋭部隊ー――――”特務部隊”がアルフィン皇女を”大義名分”とし、エレボニア皇家の専用艦――――”紅き翼カレイジャス”を運用しつつ正規軍を指揮下に置き、貴族連合軍を制圧する事よ。」
「ええっ!?ア、アルフィン皇女殿下を”大義名分”にして、しかも”カレイジャス”を運用……!?」
「一体どういう事なんだ……?」
オリヴァルト皇子の質問に対するレンの答えを聞いたエリオットは驚き、ガイウスは真剣な表情で考え込んでいた。
「アルフィン皇女はみんなも知っての通り、帝位継承権を持っているでしょう?更に”カレイジャス”の所有者は”アルノール皇家”で、エレボニア皇家の専用艦として世間にも広く知れ渡っているお陰でこっちの正当性を証明しやすいわ。現エレボニア皇帝であるユーゲント皇帝と第一帝位継承権を持つセドリック皇太子が貴族連合軍に幽閉されている以上、現状カレイジャスを運用できるかつ正規軍を従わせて、貴族連合軍を制圧する為の”大義名分”になる事ができる人物は帝位継承権を持っている人物で唯一貴族連合軍から奪還したアルフィン皇女だけだから、アルフィン皇女を貴族連合軍が”反乱軍”である事を証明し、”特務部隊”指揮下の”エレボニア帝国軍”に正当性がある事を証明する為の”旗印”にするって事よ♪」
「そ、それって……!」
「ユーゲント皇帝陛下達を幽閉して”大義名分”にしている”貴族連合軍”のやり口と同じじゃねぇか!?」
レンの答えを聞いてある事を察したトワは不安そうな表情で声を上げ、トヴァルは怒りの表情で声を上げた。
「や~ね、どの道貴族連合軍を制圧する為には”大義名分”である帝位継承権を持つアルノール皇家の人物が必要なんだから、怒るなんて筋違いだし、それに………――――オリヴァルト皇子も元々そのつもりでトヴァルお兄さんにアルフィン皇女の護衛を頼んだのでしょう?」
トヴァルの指摘に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンは不敵な笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめて指摘した。
「っ!」
「なっ!?それは一体どういう事なんですか!?」
「…………………」
レンの指摘を聞いたオリヴァルト皇子は息を呑み、マキアスは驚き、事情がわかっているアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「うふふ、本来はトヴァルお兄さんと一緒に貴族連合軍の捜索をかわしていたアルフィン皇女と合流した後、アルフィン皇女をカレイジャス運用の正当性を証明する”後ろ盾”にしてⅦ組を含めたトールズ士官学院の学生達にエレボニア東部で内戦を終結させる為の活動をさせて、自分自身はエレボニア西部で第七機甲師団や他の中立勢力と連携して活動するつもりだったのでしょう?オリビエお兄さ―――いえ、オリヴァルト皇子?」
「ハハ…………私の考えも全てメンフィル―――いや、君にはお見通しだったのか…………改めて君を敵に回せば、どれだけ恐ろしいのかを思い知ったよ………」
不敵な笑みを浮かべたレンに見つめられたオリヴァルト皇子は疲れた表情で乾いた声で笑ってレンを見つめて呟き
「ええっ!?そ、それじゃあ……!」
「殿下、先程のレン皇女殿下の推察は本当の事なのですか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中アリサは信じられない表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情でオリヴァルト皇子に訊ねた。
「ああ。君達の意志で内戦によって厳しくなり続けている今のエレボニアの状況を少しでも良くしたいと決意してくれたのならば、その”足掛かり”に必要なカレイジャスを君達に預けるつもりだったのさ。」
「そして先程レン皇女殿下が仰った通りこれ以上、罪なき民草を戦火に巻き込まない為にも我々は艦を降り、帝国西部にて第七機甲師団や他の中立勢力と連携して活動するつもりだったのだ。それを遂行するにあたってこの艦はいささか目立つのでな。そなたたちに預けた上で―――帝国東部を任せようと考えていたのだ。」
「そうだったんですか…………」
「殿下のお考えは父上もご存知だったのですね………」
オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵の答えを聞いたエマとラウラは複雑そうな表情で呟き、他の”Ⅶ組”やトールズ士官学院の関係者達もそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「だが”カレイジャス”は和解条約の実行の為にメンフィルが運用する事に………」
「ぼ、僕達はこれからどうすればいいんですか……?」
「うふふ、それを考える前に第五条に”Ⅶ組”が関係している理由を説明してあげるわ。”Ⅶ組”が第五条に関係している理由………―――それは”Ⅶ組”は”特務部隊”の直接指揮下に入って”特務部隊”と共に活動する事―――つまりは”Ⅶ組”は”特務部隊”をサポートする為の部隊になるからよ。」
そしてガイウスが複雑そうな表情で呟き、エリオットが不安そうな表情でオリヴァルト皇子に訊ねたその時レンが驚愕の事実を口にした―――――
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