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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  205 〝杖調べ〟


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

アニーが〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟に参加する事になるのを黙認して早数日。

俺とアニーが〝炎のゴブレット〟に選ばれた日、グリフィンドールの談話室ではフレッドとジョージの主催で祝宴が開催された。

応援されている理由は判っている。〝〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟の優勝〟と云う栄誉をホグワーツが得られる可能性が二倍になったからだろう。

しかも俺とアニーは二人ともグリフィンドールに所属しているのでその数時間前に行われたハロウィーン・パーティーを上書きするのではなかろうかと云う規模だった。

だからか、グリフィンドール生はもちろんとして他の寮生──ハッフルパフとレイブンクローの生徒からも表立ってではないが応援されている。……故に、俺とアニーは針に(むしろ)な学校生活を送っている訳ではなく、割りと長閑(のどか)な毎日を過ごせていた。

……スリザリンについては言わずもがなで、その証拠に飽きる事もなくマルフォイ、クラッブ、ゴイルの三人組は俺とアニーに絡んできているが──とりわけ、取り合ってやる理由もないので、そこそこに相手をしたりしなかったりしている。

閑話休題。

そんなある日の〝魔法薬学〟の授業中のこと。その日の〝魔法薬学〟の授業は二時限続きで、その内の三分の一──30分が過ぎた頃、気配からしてコリン・クリービーが控えめに教室をノックした。

(……あー、もうすぐ写真の時期だったか)

〝コリン=写真屋〟という等式(イメージ)が根強い。時期が時期だけに〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟に関する写真を撮るのだろうとも推察できる。

「げっ」

脳内でいろいろと考察していると、これまた控えめに開かれる。

扉を開けたのは、やはりコリンだった。コリンの顔を見て近くでネビルと組んでいるアニーが小さく苦悶の声を漏らしたのはご愛敬か。

コリンはハッフルパフ生とグリフィンドール生の、一学年上の数十の視線にさらされながら、〝ぎくしゃく〟と云うオノマトペが似合う動作で教壇に立っているスネイプ先生の前で立ち止まる。

そうなれば、スネイプ先生もコリンを無視する訳にもいかなくなった様で、不機嫌そうにコリンを()めつけた。その時点でコリンは使命感を(たた)えていた瞳を恐怖に滲ませるせる。

しかし、それも数瞬の事。いつもアニーからぞんざいな扱いをされていても懲りずにアニーに突撃しているそのガッツを思い出したのか、(やが)てここの教室に訪れた理由を訥々(とつとつ)と語り始めた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟は、いつぞやアニーが言っていたように魔法ありきのオリンピックに近い。オリンピックは押し並べて〝国際スポーツ競技大会〟で、当然、その選手らの名前等も各国に喧伝される。

どうやらこの〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟もその例に洩れなかったようで。結局のところ、コリンが来た理由は俺の考察の通り写真撮影のためだった。

……否、写真撮影の為だけではなく、代表選手へのインタビューもあった。……それだけならまだ良かったのだが、インタビュアーが問題人物であるリータ・スキータだったのだ。

(……ホニャララ・ワルドと須郷某(なにがし)以来だろうな──ここまで〝きた〟のは)

割かし堪忍袋の緒が長いはずの俺を、ここまで腹立てさせるのだからリータはある意味稀有(けう)な人物なのだろう。

リータ・スキータのインタビューはおおよそ〝インタビュー〟とは言い難いもので、色々と割愛するが──俺に対するインタビューもそうだが、アニーへのインタビューは輪を掛けて酷かった。

捏造、拡大解釈を至るところに散りばめられたインタビューに、ダンブルドア校長が矢面に立ってくれなかったら一目を憚らずに〝洗脳(おはなし)〟していただろう。

(……あまりにも酷い様だったらこちらも黙ってやらないぞ…っ)

そんな俺の決意はリータ・スキータには気付かれなくて。一息毎に図々しくなるのではなかろうかと云うリータ・スキータからのインタビューをアニーとテキトーに──ダンブルドア校長の助けを借りつつ受け流し終わると、次は競技に使う杖を調べる〝杖調べ〟とやらを執り行う事となった。

〝杖調べ〟は、その内容はその名が大体示している様に杖が競技に()いて正常に作動するかどうかを調べる儀式(イニシエーション)の様なものらしく、それを執り行うのは俺もアニーも知っている人物──【オリバンダーの店~紀元前382年創業高級杖メーカー~】が店主、オリバンダーその人だった。

(ま、妥当な人選だわな)

オリバンダーの〝杖〟に関する慧眼(けいがん)には目を(みは)るところがある。……などとオリバンダーを称賛していれば、オリバンダー老はいつの間にやらフラーとクラムの杖を調べ終えていた。

……フラーとクラムの杖は、前者(フラー)が紫の(まゆみ)で長さは24センチ。しなりにくく、芯には祖母だと云うヴィーラの髪の毛を用いているらしい。後者(クラム)は、材木には熊垂(くましで)が、芯にはドラゴンの心臓の琴線が使われているらしく、26センチでかなり頑丈との事。製作者はグレゴロビッチと云う人なのだとか。

閑話休題。

そして俺の番。

「次はウィーズリーさんの杖じゃな。覚えておるとも。……どちらの杖もよく磨かれている。確かトネリコとドラゴンの心臓の琴線の33センチでよくしなる」

一応、オリバンダー老にはトネリコの杖とウェールズの赤い龍──ア・ドライグ・ゴッホの角が使用されている杖の二本を渡していて、オリバンダー老はトネリコの杖の情報を懐かしげに述べる。

……次に赤い龍の角の杖を手に取ったオリバンダー老だったが様子が変わった。

「……ふむ、やはり良い杖と云うものは何度見ても良いものじゃな。……柳にウェールズの赤い龍の角、長さは34センチ。良質で──この上なく従順…!?」

「従順? あれ、確かその杖って〝頑固〟だったんじゃ…」

「ええ、確かにそうでした。……ですがこの杖は貴方を〝真の主〟と定めています。……もはや〝武装解除呪文〟でもこの杖から貴方への忠誠心を奪う事は出来ないでしょう。本当に(まれ)な事です。……いやはや、良いものを見せて頂きました」

「はぁ…」

(……あー、もしかしなくても〝あれ〟の所為だよなぁ…)

一息にそう語るオリバンダー老に引きかけるが、よくよく考えてみれば、そんな事──杖の性質が変わってしまった理由には(いささ)か覚えがあった。

十中八九〝〝双籠手〟と杖を同化させたら杖無しで魔法使えるのではなかろうか〟と云う安直な考えのもとでの実験が原因だろう。実験の結果はオリバンダー老の言葉から判るとおり、成功を収めた。

「もし他人が悪意を持ってこの杖を振るったとしたら、その下手人に呪詛が倍になって返る事となるでしょう──んっん! 話が逸れましたな」

咳払いをして、オリバンダー老は俺に杖を返却する。それからアニーの杖を〝(ひいらぎ)、不死鳥の羽根28センチ、良質かつしなやか〟と鑑定して、〝杖調べ〟の儀は終わった。

その後、代表選手四人と三校の校長とで写真を撮ることになり、リータ・スキータがアニーを集合写真の中心にもってこようとしてグダグダになったり、マダム・マクシームがその長身ゆえに写真から見切れたりと色々あったのだが、それは別の話。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

俺の〝探知〟の範囲は、常時でも──〝吸魂鬼(ディメンター)〟などが居ない時は半径1kmくらいだ。……当然、それが最大半径ではなく、少し気を張ればある程度は伸ばせる。

……つまり、何が言いたいのかというと…

「〝ドラゴン探知余裕でした〟──てな」

「いきなりどうしたのさ」

今日の日付は11月24日。第一の試練の日だ。実に意外だったのが午前中は普通に授業があったことで、競技は午後から開催されるらしい。

今、俺とアニーは昼食を済ませた後にマクゴナガル先生に連れられ、【禁じられた森】の周りを歩いている最中で、(やが)てマクゴナガル先生はいつの間にやら張られていたテントの前で立ち止まる。テントの中にはフラーとクラム、そしてバグマン氏の気配も感じられるので、そこが選手の控え室だと云うことを類推するのは難しいことではなかった。

「この中には既にバグマン氏と二校の選手は居ます。中ではバグマン氏の指示に従って下さい」

テントの前でマクゴナガル先生はそう言うと、俺とアニーに向き直る。しかしマクゴナガル先生の瞳からは〝心配〟がありありと感じられた。

やはりマクゴナガル先生は厳格なれど、良い先生なのを改めて確認する。

「……ウィーズリー、ポッター、貴方方は我がグリフィンドール──ひいてはホグワーツに於いても、類を見ないほどの才子です。貴方たち二人とミス・グレンジャー以外の他の生徒でしたら気をもんでいたのでしょうが、貴方たち二人なら、必ず課題を突破出来ると信じています」

それはいっそマクゴナガル先生自身への激励とも取れるが俺とアニーは、それを指摘するほど野暮ではなかった。

そんなマクゴナガル先生の激励を背に、俺とアニーはテントを潜った。

SIDE END 
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