普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
201 〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟
SIDE アニー・リリー・ポッター
びしょ濡れになりつつも今年の組分けを見届け、歓迎パーティーのご馳走を堪能してハーマイオニー以外と──今日出されたデザートについて寸評を出しあっていると、ダンブルドア校長先生から〝今年はクィディッチはナシ〟と云うお達しがあった。
どうにも10月に始まり年度末まで続くイベントに先生方の労力や時間を費やすからだそうだ。
(……どんなイベントなんだろ…?)
結局、ロンからは詳しい内容は聞けずじまいで、ロンの言ったこといえば、大体はダンブルドア校長先生からの通達と同じ内容だった。
「っっっ!!」
もう一度、ロンに今年のイベントについて訊こうとした──その時、ぴしゃっああん! と云う雷鳴がボクの耳をつんざく。ロンは雷鳴にちっとも反応を示さず、とある一点──ホールの扉がある方向を見ていた。
そんなロンの視線につられて扉を注視すると、誰かが扉を開けているのが判った。フードを被っているので顔は判らない。判っているのはそいつが義足だと云う事だ。
「……っ…!」
そいつはホールに入り直ぐ様フードを脱ぐ。……まるで狙っていたかの様なタイミングの稲光にそいつの顏が露になり──息を呑むハメになる。
〝歴戦の戦士〟と云う表現が一番しっくりくるであろう、義足に義眼、そして鑿で削られまくった様な顔に圧倒されてしまった。
こつこつ、こつこつ、と義足でホールの床を鳴らしながら全校生徒の間を通り、ダンブルドア校長先生の前まで辿り着く。そしてダンブルドア校長先生と小声で某かを話し合う。
〝何を話しているのか〟とか疑問は尽きないが、その男は教職員のテーブルに着く。今このホグワーツで教師が空いている科目は〝闇の魔術に対する防衛術〟だけなので、類推するなら〝そいつ〟が新しい〝闇の魔術に対する防衛術〟の教師なのだろう。
全校生徒はいきなりの闖入者──見覚えの無い男に唖然としている。そんな皆の疑問に答えたのは、やはりダンブルドア校長先生だった。
「さて、皆も気になっておるだろうから先ほど闖入してきた方について説明しておこう。彼は新しい〝闇の魔術に対する防衛術〟の教師となったアラスター・ムーディ先生じゃ」
義足の男ことアラスター・ムーディはダンブルドア校長先生からの紹介を意にも介さず──当然生徒に挨拶もせずに食事を貪っている。だからか、生徒達からの拍手も疎らだった。
「ロン、〝ムーディ〟って…」
「今朝、話しに上がっていた〝闇祓い(オーラー)〟だろうな」
聞き覚えのある名前だったのでロンに改めてみれば、ロンは肯定しながら鷹揚に頷く。
チャーリーの話ではムーディは≪マッド‐アイ・ムーディ≫と云われていて、ロンが註釈を添えて教えてくれたように元は魔法省きっての腕利きの〝闇祓い(オーラー)〟で、アズカバンの半分を埋めたとか。
……尤も、最近では今朝の出来事の様に衰えが見えてきているらしいが…。
ダンブルドア校長先生の話はまだ終わっていなかった。
「それから、先程の話になる。……ここ数百年、久しくして開催されなかったイベントをこの【ホグワーツ魔法魔術学校】で開催出来る光栄に浴することとなった」
(マルフォイの言っていたのは〝これ〟の事か…)
いつになく勿体ぶった言い方で、生徒達も訝っている中、ボクはそんな益体もない得心を内心でしていると、ダンブルドア校長先生はそんな生徒らの空気を察知したのか、咳払いの後に宣言する。
「……えへん──まぁ、早い話、【ホグワーツ魔法魔術学校】にて〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟が開催されると云うことじゃ」
ボクは知らぬ単語に首を傾げる──その前にフレッドが「冗談だろっ!?」と声音を跳ね上げるが、校長先生は本気であると念押しする。
「……じゃが、先にも軽く触れた通りこの〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟は、開催が自粛されて幾久しい故に知らぬ者も大勢いるじゃろうて」
フレッドの〝冗談〟とな言葉で校長先生の話が逸れかけるが、マクゴナガルの咳払いで元の話に戻り、〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟とやらについての説明が始まる。
「〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟はその名を表す通り、ヨーロッパの三校──【ホグワーツ魔法魔術学校】【ダームストラング専門学校】【ボーバトン魔法アカデミー】の三校から各校から一人ずつ、〝厳粛なる審査〟によって選ばれた生徒が優勝を目指すと云う催しじゃ」
「……魔法を使ったオリンピックみたいなもの?」
「オリンピックか──当たらずとも遠からずだな」
(……オリンピック──〝オリンピック〟…?)
声を潜めながら隣のロンに聞いてみればロンから返ってきたのはどっち付かずの答えで。ロンの口から改めて聞いた〝オリンピック〟と云うワードで違和感が沸き上がる。
オリンピックなら定期的に開催されていてもおかしくないが、〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟なんてワードには聞き覚えや見覚えが無かったのだ。
その違和感を解消してくれたのもやはりダンブルドア校長先生だった。
「当時は〝親善〟と云う名目で5年毎に各校で順繰りに主催しておったらしいのじゃが、次第にぱたり、と開催されなくなってしまった。……開催を自粛するよう、取り決めがなされたのじゃ──〝夥しい死者〟が出たのでの」
(なるほど…)
〝それじゃあ最初の一人の時点で見直せば良かったんじゃないですかねぇ〟などとか突っ込みどころが見つかるが、〝今より人間の命の価値が低かったのだろう〟と、聊か無理矢理にではあるが得心しておく。
「エントリーするぞ!」
「乗った!」
命懸けだと云うのに、他寮の生徒もだが──グリフィンドール生もフレッドとジョージを中心に〝我こそは〟と色めきだつ。……しかしそれは見越していた様で、ダンブルドア校長先生から〝待った〟が掛かる。
「全ての生徒が〝優勝の栄をホグワーツに〟と決意していただいているところで悲報になってしまうのじゃが──魔法の腕を競い合うにあたって用意される障害は生半可なレベルではない。……あぁこの際じゃ、はっきり言っておこうかの。成人した者──つまりは17歳未満の生徒の立候補を〝制限〟する」
「何て事をっ!」
その宣言により息巻いていたフレッドが怒声を上げる──否、フレッドだけではなく、大多数の生徒達からブーイングが巻き上がるがダンブルドア校長先生は何のその。
「何百もの年月を経て〝国際魔法協力部〟と〝魔法ゲーム・スポーツ部〟の方々と共に、今回は一人の死者も出ない様にと取り組んだ上での決定じゃ」
(あれ? 何で〝禁止〟しないんだろう──あ、そうか)
ダンブルドア校長先生は未成年の魔法使いの参加を〝制限〟こそすれど〝禁止〟していない事に気付く。……そして、その理由についても何となくだが思い至ってしまった。
自慢になってしまうが──ボクやロン、ハーマイオニーは教師に迫る手腕を持っていると自負している。……ロンに至っては、ダンブルドア校長先生と打ち合えてもおかしくはない、と云うのがボク、ハーマイオニー、ネビルの見解だ。
……早い話、要は〝篩〟なのだろう。
(……ん…?)
ダンブルドア校長先生からもたさらされた〝賞金は1000ガリオン〟と云う言葉を聞いていると、ふと疑問が沸いた。
悪目立ちを好まないロンが、このイベントに参加する気だったのを思い出す。ロンは〝金のため〟と嘯いていたが、どうにも怪しい。ロンは1000ガリオン程度のお金なら3年ほど着実に〝露店〟なりで商品を捌けば簡単に稼げるはずだなのだ。
……そこで、〝この世界は物語の世界に準じた世界だ〟──と云う風に少しばかりメタファー的な観点へと変えて見ることにした。
(……んー。……まぁ、ボクはほぼ確定だとして…)
こういってはアレだが、このテのイベントに〝主人公ポジ〟──ボクが参加する事になるのは半ば確定している事だろう。……と云うことはイベントにさせる事で〝利〟がある者も居るわけだ。
その事から類推出来る事があるとすれば…
(ロンが出るのはボクを出場させない為…?)
ボクはロンがダンブルドア校長先生の言う〝制限〟を突破出来ないとは最初っから考えていない。ロンはどちらかと云うと、〝やる〟と言って手掛けた事なら有言実行にヤり通すタイプだから。
とりあえずはそんな風に自身を納得させる。……ロンの本当の狙いが明らかになるのは、今から二ヶ月近くも先の事だった。
SIDE END
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