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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  200 四年目の〝ホグワーツ特急〟

 
前書き

祝・200話!!

……しかし、例によってただの話… 

 
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

「げ、すげぇ大雨」

9月1日。俺、アニー、ハーマイオニーからしたら4度目のホグワーツの新学期の朝は、そんな悪態から始まる。窓を打ち付ける(おびただ)しいほどの水滴は大多数の生徒たちの憂鬱な気持ちを表している様にも思える。

クィディッチワールドカップの夜から一週間が経過している。

シャルロットを魔法省の役人に預け、行きの時と同様に〝移動(ポート)キー〟でストーツヘッド・ヒルへと戻り、【隠れ穴】──我が家に戻った俺達を迎えたのは母さんの力一杯の抱擁だった。

その時、ついでとばかりに〝ふくろう〟でトチったフレッドとジョージを、その件で水に流したりする一幕(ワンシーン)も。……母さんの兄弟は≪死喰い(デスイーター)≫に殺されている。それがトラウマになっているのだろう。

母さんはフレッドとジョージには魔法省に勤めてもらいたいと思っているらしいが、フレッドとジョージは見るからに〝お堅い〟のが好きではないので母さんの望み通りになる可能性は薄いとみている。

〝WWW(ウィーズリ・ーウィザード・ウィーズ)を開く事〟。それがフレッドとジョージが望む将来なのだそうだ。

フレッドとジョージの話を聞くに、〝WWW(ウィーズリ・ーウィザード・ウィーズ)〟は云ってしまえば魔法のホビーショップで、俺が〝露店〟で売っている商品もそちらで売ろうと云う話にもなっていて、当然ながら俺もその話には一枚どころではなく噛んでいる。

〝護りの指輪〟などの実用的な商品は俺、〝カナリアクリーム〟みたいなユーモラスの商品はフレッドとジョージ──みたいな感じで住み分けも出来ていて、開店までもはや秒読みだろう。

フレッドとジョージを魔法省に勤めさせたい母さんと衝突することも屡々(しばしば)あり、昨年度、フレッドとジョージから〝ふくろう〟が終わった時点で〝呼び寄せられないバッグ〟を頼まれていて、そのバッグが幾度となく母さんの〝呼び寄せ呪文〟を弾いているのを俺は知っている。

……故に俺も母さんからジト目で見られたりもするが、〝それはそれ。これはこれ〟精神でスルー。

閑話休題。

「……ったく、どうして〝これ〟があるんだか…」

〝とあるもの〟を広げながら悪態その2を()く。その悪態の理由は今年の〝必要なものリスト〟に載っていた、とある項目だ。……ここまで云えば、【ハリー・ポッターと炎のゴブレット】を鑑賞したことがあるならピンとくるだろう。

……例のローブを母さんから渡された。フレッドとジョージの爆笑は今でも耳に残っている。

ウィーズリー家の経済力は〝原作(どこぞのせかい)〟と比べるて雲泥の差がある。それなのに中古──それも〝ひらひら〟が皆の笑いを誘うローブを渡されたのだ。……ハルケギニア時代にすら着なかったレベルの〝ひらひら〟を、だ。

(ここまでくればいっそ、一種のギャグ補正だと割りきるか…)

〝倉庫〟に突っ込んでおくことを固く決意しながら、そう自分を慰めるのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

父さんの愛車(フォード・アングリア)に揺られながら数時間。雨足は今朝からちっとも治まっておらず、母さんとの挨拶もそこそこに駅内へ──そして〝ホグワーツ特急〟へと駆け込んだ。

コンパートメントを確保するなり、代わる代わるびしょ濡れな私服から制服へと着替える。……俺は〝気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)〟──“咸卦法”で〝咸卦の氣〟を練れば水分なんて楽に蒸発させられるが、ここはコンパートメント──密閉された室内なので自重する。

「……さて、手持ちぶさたになったし──いっちょ〝決闘す(デュエ)〟るか?」

「いいよ。〝希望(ホープ)地獄〟の真骨頂、ボクが見せてあげる」

「あら、アニー。その前にどうせ私の〝バーン〟が火を噴くわよ」

「ふふ、〝植物〟のしぶとさ、嘗めない方が良いよ」

「……くくく…。俺の〝ジャンクドッペル〟に十把一絡(じっぱひとから)げに捻り潰されたのを忘れているらしいな」

(やが)て全員の着替えも済み、フレッドとジョージはリーと合流したかったらしい為に別れ、ホグワーツに到着するまでの時間を、アニーとハーマイオニーの二人に加え、そこらで捕まえたネビルと遊戯王あたりで潰そうと魔法で手頃なテーブルを出そうとした時、不意にコンパートメントの扉が開く。

――「クィディッチワールドカップを貴賓席で見れると云う一生に一度の経験はどうだったかい、ウィーズリー?」

いつも通りの気障(きざ)ったらしい声の主は、やはりドラコ・マルフォイで。後ろに控えているクラッブとゴイルも去年と変わらぬ虎の威を借りた狐状態でこちらを嘲笑する様な表情をしていた。

……マルフォイ、クラッブ、ゴイルの見てくれからして〝狐〟と〝虎〟が逆な様な気もするが、きっと気のせいだろう。

閑話休題。

……ちなみ〝遊戯王云々~〟だが、いつぞやの麻雀の様にカードのテキストに従う様にプロテクターに魔法が掛けてあり、それに連動して専用のフィールド備え付けの計算機で自動で計算してくれる。ヘルプ機能も備わっていて、いち遊戯王ファンなら(こぞ)って欲しがるだろうセットが出来た。……〝なんちゃってTF〟とも言い換えられるだろう。しかもカードはその一枚さえ持っていれば〝双子の呪い〟でカードを増殖出来るようにもしてあり、まさに〝魔改造〟と云う言葉が一番しっくりくる。

また閑話休題。

マルフォイの気障ったらしい口上は続く。

「ところで──日々小金を稼ぐことに腐心している〝ウィーズリーのコソコソ君〟や、君は今年の催しものに参加するのかな? 賞金があれば君の家の家計からしたら大助かりじゃないか?」

「一応、参加はするつもりだ。フレッドとジョージの〝悪巧み〟への投資金にしても良さそうだしな。……ところでハーマイオニー、この前の──うーん、聖ナントカが1つの小僧っ子が言っていた〝日々小金を稼ぐことに腐心している〝ウィーズリーのコソコソ君〟〟に成績において君にも完膚無きままにノされたのは〝どこ〟の〝誰〟だったけ?」

「……っ、きっと今も滑稽にコンパートメントを通せんぼしている〝聖ナントカが1つの小僧っ子〟だったはずよ…。……ぶふっ!」

「くふっ…!」

俺がこれまで散々マルフォイがハーマイオニーに吐いていた暴言の意趣返しとしてハーマイオニーに訊いてみれば、ハーマイオニーは俺の意図を理解したのか、これまでの鬱憤を晴らすかの様にマルフォイを()き下ろす。

割りと笑いのツボが弱かったりするアニーにもハーマイオニーの皮肉に吹き出している。

……常日頃から〝≪(けが)れた血≫〟とハーマイオニーを揶揄(やゆ)して心理的優位性を自意識の内だけでも保ちたかったマルフォイからしたら、当然面白い訳が無く…

「っ! ……よくも≪穢れた血≫ごときが〝それ〟を口にしたな──っ!」


――“武器よ去れ(エクスペリアームズ)”


顔を面白いくらいに赤くして激昂するマルフォイ。最早その怒りは止まるところを知らずに杖を抜き放ち、杖先をハーマイオニーを向けた瞬間──俺がマルフォイを挑発していた辺りから、〝こう〟なる事を予測していたのだろう。杖を隠しながらも抜いていたアニーの〝武装解除〟がマルフォイの呪いよりもずっと先にマルフォイの杖へと炸裂して、アニーの手元に杖が納まる。

「……くふ…っ──はい、杖」

アニーは先ほどの笑いの余韻に浸りながらマルフォイの杖を手元で数回玩(もてあそ)び、わざわざ杖の持ち手部分をマルフォイに向けて杖を返還するがマルフォイは肩を余計に肩を震わせる。怒りのボルテージは更に加速しているようだ。

「ポッター、どうやら〝友達〟を間違えたようだな。予言してやる。もうすぐ魔法界は生まれ変わる。その時まで身の振り方を考えておく事だな、ポッター」

「……今度はパパに泣き付くつもり?」

「何とでも言うが良いさ。いいか、もう一度言ってやる。魔法界は生まれ変わる──確実にだ。そこの≪穢れた血≫も覚悟しておくことだな」

「首でも洗って待っているわ」

「……僕に与えたこの屈辱、いつか絶対晴らしてやる…っ!」

そうマルフォイは「クラッブ、ゴイル、何をしている。行くぞ!」と、負け犬の遠吠えよろしく吐き捨ててはクラッブとゴイルを引き連れ、自分のコンパートメントに戻っていく。

(……おお見事なまでの負け犬の遠吠え…)

「おちょくり過ぎたか──うん?」

なんて、心にも思ってないことをコンパートメント内に投げ掛けてみれば三人からは何かを推し量る様な視線が俺へと注がれていた。

……三人から今年の〝催しもの〟について()かれたのは云うまでもないことだった。

SIDE END 
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