普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
195 14の夏の夢
SIDE アニー・リリー・ポッター
「……嫌な夢を見た…」
まるで額の傷痕に〝焼きごて〟を押し付けられた様な痛みをこらえながらプリベット通り──ではなくグリモールド・プレイス十二番地で目を覚ます。……ブラック夫人が崩御して、今はシリウスが継いだのだと云うブラック家の屋敷だ。
シリウスの厚意でボクはその屋敷に招待されていて、一旦ダンブルドア校長先生の指示に従いダーズリー家に戻り、一日も経たずにそのままこのグリモールド・プレイス十二番地に来ていた。
シリウスがこの屋敷を継いだので、ボクが成人してホグワーツを卒業するまでの間、夏休みはこの屋敷に来て良い事になった。おばさんを始めとしたダーズリー一家もきっとボクの顔を見たくなかっただろうし、ある意味Win―Winな関係になっただろう。
……そう話が纏まる時にダドリーがやたらと喚いていたが、きっと〝そういうこと〟なのだろう。……正直、意外だったがボクには〝先約〟が居るのだ──過去にも未来にも。
閑話休題。
(いや、それよりも…)
それよりも、先程まで見ていた夢だ。
ただ、一口に〝夢〟と切り捨てるには生々しすぎた夢だった。……それこそ、〝現実に起こったことだ〟と言われた方がまだ納得出来るくらいにはリアリティーのある夢だった。
〝夢〟と云うのは大概、〝既知の情報〟からなるものらしいが、ボクが先程見た夢はどこの場所か全く検討も付かなかった。……情景が全くボヤけていなかったので、ボク自身の物忘れと云う選択肢はあまり考慮していない。
肝心の夢の内容はヴォルデモートとワームテール──ピーター・ペティグリューが、マグルの老人を──おそらくだが〝死の呪文〟で殺したところだった。
……以上からして今判ることがあるとすればそれは…
「……ピーター・ペティグリューが〝例のあの人〟と合流した」
ボクはその場に居たから今でも思い出せる。ホグワーツの〝占い学〟の教授であるトレローニー先生は去年のクリスマスにそれまで繕っていた猫なで声の様な──神秘含ませようと頑張って作っていただろう声音をかなぐり捨て、とある予言をその場にいた人達に放った。
―〝闇の帝王は、友もなく孤独に、朋輩に打ち棄てられて横たわっている〟―
―〝その召使いは12年間鎖に繋がれていた。明くる年、6が双子になりし日の宵、その召使いは再び自由の身となり、ご主人様のもとに馳せ参ずる。闇の帝王は、召使いの手を借り、より強大により偉大な存在となりて再び立ち上がるであろう。その宵、月満ちし宵なり〟―
上の句は今の夢で納得させられた。……詳しく覚えていないが、闇の魔術にどっぷりと浸かった存在をそう言って正しいかは判らないが──少なくとも〝尋常〟とは云いがたい姿だった。
それだけなら、まだ頑張って〝夢〟と割り切ったのだが、ピーター・ペティグリューとヴォルデモートは物騒な企てをしていた。……〝アニー・ポッター〟──ボクを使って、某かの事を為すようだ。
そこら辺、下の句と関連が深い様な気がする。
(……それにしても、絶対クリーニング屋にケンカ売ってるよね。この服)
寝巻きは寝汗でべたべたとなっていたはずだが、そこはロン特性の謎素材で織られた服だ。直ぐ不快感のに大半の原因である汗っ気を飛ばしてしまっていた。……ついでとばかりに臭いも…。
<ホー>
服に関しては不快感はそこまで無いものの、それでも嫌な夢を見たのは確かなので、気を紛らわすかの様にアルビオンを撫でれば擽ったそうにアルビオンは鳴く。
アルビオンはハグリッドが入学祝いに買ってくれたフクロウで、最早相棒と云っても差し支えがない。アルビオンを選んでくれたハグリッドに感謝である。……もちろん、今ボクを癒してくれているアルビオンにも感謝している。
そんなアニマルセラピーもどきが功を奏したのか、痛みはいつの間にやらひいていたのでそのままアルビオンへと礼を述べてまたシーツにくるまる事にした。
……明朝、シリウスに見た夢の事とトレローニー先生の〝予言〟について相談しようと、胸に決めながら…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
―そうか、ピーターが──よし、判った。この話はダンブルドアにも言い含めておこう―
(……まぁ、そうなりますよねー)
朝食の席でシリウスに昨晩見た夢の事を話してみれば、ほとんど予想通りの返答だった。……まぁ、こんな──魔女だったりする身の上なので、〝何をそんな戯言を〟などと一口に切り捨てられないのは助かった。
……そこでまた〝ダンブルドア〟が出てくるのはご愛敬なのだろう。〝信頼〟と〝盲信〟の境目はいつだって難しい。
ダンブルドア校長先生はこの世界で誰より──きっとある意味ロンよりもこの世界について知悉しているのだから。……ボクもロンにそれとなく相談するつもりだ。
(……こっちはこっちでロンに相談しとこうかな)
そう内心で呟くボクのの中にはそれ以外の選択肢は無かった。
ハーマイオニーはそういった方向の知識が本の名前を教えてくれるだろうが、それはホグワーツで改めて調べれば良いだけ──と云うより、手紙に〝名前を言ってはいけない例のあの人〟の名前を書くのも躊躇われるので、ホグワーツに着くまで我慢するしかないのだ。
ネビルは〝まぁ…うん…〟といった感じだ。……慮ってくれるのは嬉しいが…。
(ネビルは──まぁ…うん…)
「あ、そういえばアニー。手紙が来てたよ」
「誰から?」
「ロンからだ」
朝食を終えて、ネビルにしてみたらいささか憤懣モノだろう事を考えながら食後の紅茶タイムに興じていたらシリウスからそう1通の便箋を受けとる。確かに宛名の欄には確かにロンの名前が記されていた。
ロンと手紙をやり取りするのは大体週に1~2回程なので、周期としてはおかしくない。しかし14になってから二回目だと考えると高揚しない事もない。
約一週間の7月31日にボクは14歳になった。バースデープレゼントを贈ってくれたのは主にロンとハーマイオニー、ハグリッドで他にもネビルとジニーもプレゼントを贈ってきてくれた。……ネビルとボクの誕生日は近いので、ネビルとは最早プレゼント交換に近かったが詳しい話は良いだろう。
もちろんシリウスは大いに祝ってくれた。
……ただ、その席でシリウスは酔い潰れて父親の面影が無いことを甚く悲しんでいたが、ボクがクィディッチのシーカーであることを理由にして再び立ち直ったり──とな場面もあったりしたが、それもまた詳しくは割愛だ。
閑話休題。
「ふむふむ」
ボクは手紙の封を切り、ざっと目を通した。
――――――――――――――
親愛なるアニーへ
前略。父さんが今夏のクィディッチ・ワールドカップのアイルランド対ブルガリア戦のチケットを入手した。(俗に云う〝コネ〟だが気にしない気にしない)
この際だからアニー喚んでしまえというわけだ。勿論ハーマイオニーへの手紙も並行して認めてある。母さんやジニーもアニーとハーマイオニーに、家に泊まっていってほしいってさ。
……俺? 当然ながら俺もだよ。言わせんなよこっ恥ずかしい。
まぁ、何だかんだでシリウスも魔法省あたりから招待されてそうだけどな。
返事は出来れば一両日中までに頼む。匆々。
PS.シリウスによろしくと伝えておいてくれ。
――――――――――――――
「シリウス、ロンがよろしくだって──それから、シリウスにクィディッチ・ワールドカップの招待が届いてるかもって話だけど、そこんところは?」
「っ!!」
ぎくり、と悪戯が見つかった悪戯小僧の様な表情を浮かべるシリウス。……どうやら、ロンの推論は図星だったようだ。シリウスは乾いた笑い声と共に弁明を始めた。
「はは…。ロンにはバレてしまっていたか。確かに私は魔法省からクィディッチ・ワールドカップに招待されているね」
シリウスはそうチケットを見せてくれる。日本対カナダのもの。
更にシリウスの話を聞いてみれば、どうやら先の件の謝罪の意味も籠められているようだ。シリウスが魔法省から貰ったと云うチケットは日本のナショナルチームが出るものだったので、ボクとしては少々悔しかった。
……シリウスのチケットはお一人様専用だったから。シリウスも悔しそうにしている。
「すまない、アニー。でもアニーもアーサーから誘われているんだろう。こちらにもその旨の手紙が来ていたよ。……イギリスでクィディッチのワールドカップが開かれるなんて向こううん十年とないだろうから、私に気にせず楽しんでくると良い」
「ありがとう、シリウス」
斯くしてボクのクィディッチ・ワールドカップ行きが決まったのだった。
SIDE END
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