FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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悲しき少女の思い出は
前書き
このお話しが今回のストーリーのメインイベントかな?
まぁこれが終わればあとはちょちょいとやっていこうと思いますので、もう少しお付き合いください
ソフィアside
昔々・・・今から9年くらい前かな?ソフィアはフィオーレにある小さな村で生を受けた。
「お姉ちゃ~ん!!」
ソフィアには6歳年上のお姉ちゃんがいた。彼女は黒くて艶々の長い髪をしていて、まるでお人形のように可愛い人だった。
「ソッフィ!!久しぶり!!」
お姉ちゃんは小さい頃から知らない人がいないというほどに強い魔導士だった。まだまだ他の魔導士たちよりも幼いのに、その中でも群を抜いていて、ソフィアにとっては憧れの存在だった。
「ソッフィじゃなくてソフィア!!ちゃんと名前で呼んでよ!!」
お姉ちゃんは色んな人をあだ名で呼びたがる。その方が親近感が湧くからと言ってるけど、ソフィアはちゃんと名前で呼んでほしい。だからなのかな?いつもあだ名で呼ぶお姉ちゃんに名前を呼んでほしくて、ソフィアの一人称は「ソフィア」になっていた。
「いいじゃんいいじゃん。怒らないの」
頭をナデナデとしながら優しく微笑みかけてくる。その笑顔を見ていると、怒っていたはずなのに、気持ちが落ち着いてきてしまう。それは喜んでいいのか、残念がっていいのか。
「それで?そんなに慌ててどうしたの?」
ソフィアが大急ぎで飛んできたこともあり、何かあったのかと質問してくるお姉ちゃん。
「ううん。お姉ちゃんに会えて嬉しかったから」
お姉ちゃんは強い魔導士だったから、家を空けることが多かった。だから、たまに帰ってくる時はこうやってベッタリ構ってもらうようにしていた。
「あぁ!!ソッフィは可愛いなぁ!!」
興奮気味にギュウッとソフィアを抱き締めるお姉ちゃん。その温もりが暖かくて、いつまでも感じていたいと思っていた。その時はその温もりを永遠に感じられると思っていた・・・あの時が来るまでは。
第三者side
大火に包まれる村。そこにはたくさんの大人たちが倒れており、周囲には血の海が出来上がっていた。
「これで全員か?」
「鍵は手に入れたのかってよ!!」
ドレッドヘアの色黒の男と金髪のボサボサの髪をした男が何かを話しているのを、草むらの影で隠れて様子を見ている小さな幼女。彼女はガクガクと体を震わせながら、男たちがその場から離れるのを祈っている。
「アズマ!!ザンクロウ!!鍵は手に入れたわ。早く引きましょう」
そこに合流するのは長い髪をした、水晶を脇に抱えている女性。彼女は何やら慌てた様子で、二人に撤退するように指示を出す。
「何をそんなに慌ててるんだね」
「ここの村の奴等は全員殺せって言われたろぉ!?」
女性の様子に違和感を覚えた男二人。金髪の男の発言が聞こえた幼いソフィアは、さらに恐怖で震えていた。
「もういいわ。もう見当たるところに人はいないし、ここ、あいつの出身地らしいの」
「あいつ?」
誰のことかわからず顔を見合わせる男たち。その二人を「いいから早く」と女性が急かすと、彼らはしぶしぶ従い、その場を去る。
「よかった・・・よかった・・・」
命からがら生還した幼女は嬉しさのあまり涙を流す。それからしばらく泣いていると、あることが気になり、草むらから飛び出してくる。
「お姉ちゃん・・・お母さん・・・お父さん・・・」
息を切らしながら、自分が逃げてきた自宅へと戻っていく。そして勢いよく扉を開くと、そこには絶望的な光景が広がっていた。
「そんな・・・」
無惨に殺害された父と母。二人の体からは大量の血痕が噴出されており、家の壁を赤く染め上げていた。
「お・・・お姉ちゃん・・・」
最愛の姉はどうなっているのか、それを確認したく家の中を見渡す。だが・・・
「あ・・・あぁ・・・」
父と母のすぐそばに、バラバラになっている手や足が転がっているのを見つけ、その場に泣き崩れる。それが姉の物なのかどうなのかはわからなかったが、状況から考えれば、それが誰のものかは小さな少女の頭でも、想像に固くなかった。
それから数日間、ソフィアは誰か村の人で無事な人がいないかを探していたが、それはただ心の傷を抉る結果になるだけだった。
絶望にうちひしがれた少女は涙を溢しながら、楽しかった思い出と悲しい思い出の入り交じる故郷を後にする。
しかし、どこに行けばいいのかあてがあるわけでもなく、幼いこともあり遠くに行くこともできない。日に日に痩せ細っていく少女は、どうすればいいのか、このまま死ぬのかと諦めかけていた時、目の前にあるものが見える。
「・・・お姉ちゃん?」
長くて艶のある黒い髪をした、自分よりも背の高い少女。その後ろ姿が見えた時、折れかけていた心に希望が満ちた。
「お姉ちゃん!!」
死んだと思っていた人物に会えたことに喜びを感じていたソフィアは、嬉しさのあまり後ろからその人物へと飛び付く。
「なんだ?どうした?」
しかし、その人物は彼女の待ち望んでいた人物ではなかった。
「・・・」
「どうした?」
予想とは異なる相手だったこともあり硬直する幼女を見て、訝しげな目をしている黒い髪の少女。すると、次第に幼女の目からボロボロと滴が溢れてくる。
「うわーん!!」
「なっ!?お、おい!!」
何が起きているのか理解できずあたふたしている少女は、泣きわめいている幼女をどうすればいいのかわからずにいた。
「カグラ!!あんた何してんだい!!」
カグラと呼ばれた少女が慌てていると、後ろから少しポッチャリとした、同じ年頃の少女が駆けてくる。
「待てリズリー!!私じゃない!!」
「じゃあなんでその子が泣いてるんだい!!」
「私に聞くな!!」
二人が押し問答をしている間も幼女の泣き声はどんどん大きくなっていく。それで正気に戻ったリズリーは、ソフィアを抱き上げる。
「よーしよし、あの怖いお姉ちゃんがごめんねぇ」
「だから私ではないと言っているだろう!!」
泣いているソフィアをあやそうと優しく声をかけるリズリー。すると、ソフィアも落ち着いてきたのか、次第に泣き止んでいく。
「お姉ちゃん、だぁれ?」
落ち着いてくると、目の前の人物たちが一体何ものなのかという疑問に狩られる。なので、彼女は涙を拭いながら、目の前の二人に問いかける。
「あたいはリズリー。で、こっちはカグラっていうんだ」
「カグラさん?」
涙の引いてきたソフィアはリズリーから離してもらうと、最初に姉と間違えた人物に歩み寄っていく。
「さっきはどうしたんだ?いきなり泣かれてびっくりしたぞ」
「ごめんなさい・・・」
ペコリと悲しそうに頭を下げたソフィアは、顔を上げるとじっとカグラの方を見つめる。
(ちょっと似てるかも)
最愛の人物によく似ている少女をじっと見つめているソフィア。そんな彼女を見ていたカグラは、ソフィアの目線の高さに合わせるように屈む。
「こんなところで何してるんだ?親は?」
これだけ小さな幼女が一人でいるのを不自然に感じたカグラはそう問いかけると、再び幼女の目から涙が溢れてくる。
「なっ!?」
「なんだい?何かあるならお姉さんたちに話してごらん?」
きっと何か事情があると察したリズリーがソフィアに問いかける。彼女は涙ぐみながら、今までの出来事を二人に語り始めた。
「そりゃあひどい目にあったねぇ」
「グスッ」
ソフィアを自分たちが所属する魔導士ギルド、人魚の踵に連れてきた二人は、村を襲われ、家族も友人たちも、みんな殺されたことを知った。
「その姉に私が似ていたから、抱き付いてきたのか」
「でも実際はこんな怖い姉ちゃんでビックリしたんだね」
「アラーニャ!!」
ギルドに着くと、二人と同じくらいの年齢の白いドレッドヘアの女性も相席し、熱心に話を聞いていた。そのアラーニャがからかい気味にそう言うと、ソフィアは首を振る。
「お姉ちゃんじゃなくて驚いただけで、別に怖かったわけじゃないです・・・」
しかし、姉が死んでしまったという事実は彼女に取っては計り知れないほどのダメージがあった。正直これからどうすればいいのか、彼女はわからず、また泣きそうになる。
肩を震わせていると、目の前に座っていた黒髪の女性が立ち上がり、ソフィアの横にやって来る。
「ソフィア、よかったら私たちと暮らさないか?」
「え・・・」
最初は何を言っているのかわからず、声の主を不思議そうな目で見上げているソフィアだったが、カグラはそんな幼女をギュッと抱き締める。
「私たちが家族の代わりになってやる。ここにいるみんながな」
ギルド内にいるたくさんの女性たちをソフィアは見回す。みんな彼女の話を聞いていたらしく、優しげな眼差しを向けていた。
「うぅ・・・」
その優しさに幼女は再び涙を溢す。今までの絶望に包まれた涙ではなく、嬉しさのあまり、溢れてくるものを抑えきれなかった。
「よろしくな、ソフィア」
「カグラさん・・・」
自身を優しく抱き締める少女に対し、それに応えるように抱き返す。まるで姉妹のような二人のその姿に、人魚たちも嬉しそうに笑みを溢していた。
それから数ヶ月、カグラたちが面倒を見てくれたこともあり、ソフィアの心の傷も少しずつ癒えてきていた。
「カグラさん、今日は何をするの?」
「そうだな・・・」
ソフィアはギルドのみんなと仲良くなっていったが、仲でもカグラと親しくなっていた。その理由は、亡くなった姉に似ているからというのが大きいところなのかもしれない。
「ソフィアも元気になったね」
「そうだね」
初めて会った時からしばらくは、ずっと泣いてばかりでなかなか心を開いてくれなかった。しかし、今となってはそのことが遠い昔のように感じる。
仲良くギルドから出ていく二人の姿をギルドの全員が見送っていると、二人が見えなくなってから、数人があることについて話し始めた。
「ねぇ、ソフィア髪変じゃない?」
「やっぱりそうかい?」
その内容は、ソフィアについて。別に悪口を言っているわけではない。ただ、明らかに以前とは変わっているところがあるのだ。
「なんか、生え際が白くなっているような・・・」
真っ黒で艶々な髪をしていたはずの幼女。それなのに、新しく伸びてきているそれが、少しずつ色が落ちてきているのである。初めは皆気のせいかとも思っていたが、今では白い部分が誰の目から見てもわかるほどになっており、心配せずにはいられなかった。
「精神的にやられてしまうと、髪の色が落ちてしまうことがあるらしいよ。もしかしたらソフィアも・・・」
親を失い、大切な姉を失ったその記憶は、彼女の心に深い爪痕を残した。おそらくそれが原因で、彼女の髪の色彩が抜けているのだと感じていた面々。しかし、それは彼女たちがどれだけ優しく接し、心を充たそうとしても、止まることはなかった。そして・・・
「何・・・これ・・・」
ソフィアもその事実に気がついてしまった。
「カグラさん!!ソフィアの髪が・・・」
大好きだった姉とお揃いの長かった黒髪。しかし、今ではその面影は残っておらず、色が大きく抜け落ちた・・・銀のような髪色になってしまっていた。
「すまん・・・」
カグラは申し訳なさそうに項垂れる。彼女は、ソフィアにこの事を気付かれまいと必死にこの事実を隠していた。鏡の前に立たなくていいように、ブラッシングや毛先のカットなど、色々な処方を取り入れた。しかし、長い髪を好むソフィアは、とうとう気がついてしまったのだ。
「こんな・・・」
再度訪れた絶望に心を掻き乱された少女は、近くにあったナイフを手に取る。
「こんなの!!ソフィアの髪じゃない!!」
「ソフィア!!」
自身の髪を掴み、根本から切り裂こうとナイフを押し付ける。しかし、その髪が切り落とされることはなかった。
「やめろ、ソフィア」
髪に押し付けられていたナイフを掴む少女の手。その手から流れ出た鮮血が、ソフィアの頭に降り注ぐ。
「カグラさん?」
「そんなことをしても意味はない。自分が辛くなるだけだぞ」
「でも・・・」
大好きだった姉とお揃いだった黒髪を失い、思い出が消えかけそうになっていた彼女の心は折れる寸前だった。そんな彼女を助けるかのようにカグラはソフィアを抱き寄せる。
「キレイだよ、その髪も。お姉ちゃんも、きっとそう言ってくれるだろ?」
「・・・うん」
カグラの言葉に救われ、ギュッと抱き返す。
ムニュッ
(ノーブラだぁ!?)
その際触れた彼女の胸の感触が、ソフィアを変態の道へと突き進める大きな要因になってしまったのだった。
シリルside
「いや!!最後ので台無しだわ!!」
なんかソフィアの過去を聞いて、なんて苦労したんだろうとか同情してたけど、最後のオチで全部持っていかれたよ!!ふざけんなよ!!そのオチいらねぇよ!!
「だからこの写真のソフィアは黒髪なんだ」
「うん。まだ元に戻るって思ってるから、ソフィアは今の自分は自分だって納得してないんだって」
だから相手の脳を騙して操る魔法の使い手なら、自分がなんとかできるって思ったわけか。辛い思い出があったのに、立候補してくれたよな。
「でも黒髪のソフィアかぁ・・・ちょっと想像できないかも」
「えぇ?似合いそうな気がするけどなぁ」
今が依頼中だということも忘れて呑気におしゃべりしている俺たち。王様もお姫様もこの静かな雰囲気にすっかり気が抜けてしまっていた。
ドゴォン
「「「!!」」」
そんな時だった、部屋の外から爆音が響いてきたのは。
「なんじゃ!?」
「アルカディオス様・・・」
部屋の前の扉から大きな音が聞こえてきた。すっかり気の抜けていた俺たちも、すぐさま立ち上がり引き締め直す。
ガチャッ
爆音から数秒後、部屋の扉がゆっくりと開かれる。そこにいたのは、黄緑色の髪をした青年だった。
「アルカディオス様!!」
その後ろには白目を向いて倒れているアルカディオスさんを始めとした餓狼騎士団の皆さん。全員意識を失っているところを見ると、この男が突破してきたのだとすぐに理解できた。
「やはりここにいるのは治癒魔法の使い手たちか。他のものはすべて出払っているようだな」
俺たちの顔を見ながら冷静な分析をしている黄緑色の頭をした青年。すると、彼を見たシェリアたちが俺に耳打ちしてくる。
「あいつだよ、レオンの攻撃を止めたの」
「たぶん向こうのリーダーの人だよ」
「へぇ」
初めて見た敵のリーダー格。リオンさんの危惧していた通り、こいつが抜け出てきたのか。
「絶対止めるよ!!ウェンディ、シェリア」
「「了解!!」」
王様たちを後ろに下げて前に出る。ここは意地でも抜けさせないぞ!!
後書き
いかがだったでしょうか。
一番やりたかったソフィアの過去無事に終了です。おかげでちょっと燃え尽きてきてます・・・
そろそろこちらのストーリーも終わりそうです。みんな飽きてきたんじゃないですか?(笑)
あと少しなんで、もう少しお付き合い願いますm(_ _)m
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