提督はBarにいる。
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その発想は無かった!梅酒カクテル&梅料理特集・1
ぷちり、ぷちり。丹念に洗った梅の残ったヘタを、竹串を使ってほじくり出す。こいつが残っていると梅の実が傷み易くていただけねぇ。
「こんばんは~……って、およ?何してるの司令官」
「おっと、珍しいな睦月。今日は非番か?」
「そうだよ~、毎日提督にこき使われてますから!」
「……なんか、すまん」
今夜の最初の来客は睦月だった。普段睦月型の面々はその燃費の良さを活かして遠征に出ている事が多い。特に改二となって大発の運用が可能となった睦月・如月・皐月の3人は長距離の輸送任務が多く、鎮守府で見かける事の方が稀だ。
「別に良いのです!それだけ睦月が頼れるお姉さんって事にゃしぃ!」
むふー、と鼻息荒くどや顔をする睦月を見ていると、何となく癒される。人懐っこい猫の様だ。
「ところで何してるの?」
「あぁこれか?梅の下処理をな」
「あ!今年も梅酒漬けるの!睦月、司令官の梅酒大好きなのです!」
「残念、こりゃ梅シロップ用だ」
「えぇ~!梅酒は無いんですかぁ!?」
今年の分の梅酒はもう仕込み済み。飲み頃になるまでもう少し掛かるから、仕込んである事は内緒だけどな。
「うぅ~……残念なのですぅ」
「安心しろ、梅酒も仕込んであるよ」
へにゃ~っと萎れた睦月があんまり可哀想だったんで、バラしちまったが。それを聞いた途端、睦月は元気を取り戻した。
「じゃあじゃあ、今年の梅酒は無くても、前の梅酒はありますよね!ね!?」
「あるよ。梅酒がご注文か?」
「はいなのです!出来たらオシャレなカクテルが良いのですよ」
梅酒を使ったカクテルか。……今日は暑かったしな、清涼感のあるアレにするか。
《サッパリと飲める!梅モヒート》※分量200mlのグラス1杯分
・梅酒:30ml
・炭酸水:70ml
・レモン(又はライム):1/8個
・スペアミントの葉:10枚位
・氷:適量
モヒートといえばラムを使ったカクテルだが、これはそれを梅酒にアレンジ。グラスは底の分厚い物を用意。ミントとレモン潰す時に割れると危ないからな。カットレモンとミントの葉を入れ、麺棒等で10回程潰してレモンの果汁とミントの香りを出す。
梅酒、氷、炭酸水の順に入れて、軽くステアしてやれば出来上がり。
「ほらよ、『特製梅モヒート』だ」
「おぉ~!何だか南国気分なのですよ!」
まぁ、ブルネイは南国の部類だとは思うが。
「そういやぁそろそろ本土は梅雨の時期だな……」
「そうですねぇ、睦月、梅雨になると髪の毛の先がぴょんぴょんするので嫌いなのですよ……」
「何だ、睦月お前猫みたいな見た目の上に猫っ毛なのか?」
「うにゃああぁ!睦月は猫じゃないにゃしぃ!」
いやいや、どう見ても猫だろ。フーッ!とか唸っちゃってるし。猫耳と尻尾付けたら似合いすぎる位似合うと思うぞ?……とまぁ、からかうのはこれくらいにしといてやろう。
「そういえば司令官、何で梅雨って梅の雨って書くんです?」
チビチビと舐めるように梅モヒートを味わっていた睦月が、唐突に聞いてきた。
「元々は中国から入ってきた言葉でな。『梅の熟す時期に降る雨』って説と、黴(かび)の生えやすい時期の雨で『黴雨(ばいう)』だったのが字面が悪いんで梅の雨……『梅雨』にしたって説があるらしいな」
「確かに黴の雨より梅の雨の方が良いです!」
「ついでに言うと、梅雨の別名は五月雨ってんだ。丁度旧暦の5月が今の6月頃だからな」
「へぇ~……睦月、1つ賢くなったのです!」
何とも可愛らしいじゃないか。……っと、雨の話してたら降って来やがった。しかもスコールみてぇに一気に来やがった。こりゃホットカクテル準備しとくか?濡れ鼠でこっちに来る奴もいるからな。なんて考えてたら早速ドタドタ足音が廊下から響いてきやがったぞ。
「うわぁ~!最悪だよ、もう!」
「さ、皐月ちゃん!ずぶ濡れだよ!?」
咄嗟に早霜がバックヤードからバスタオルを取って来て、皐月に手渡している。
「とりあえずそれで身体と頭拭きな。今身体の温まるモン作ってやっから」
「う、うん。ありが……ふぇっきし!」
やれやれ、急いで作るとするか。
《ホットでもアイスでも!梅ジンジャー》※比率で書いてあります
・梅酒:1
・生姜湯:2
※アイスの場合は生姜湯をジンジャーエールに。
こいつは簡単。梅酒1に対して生姜湯を2注ぎ、軽くステアしたら完成。アイスの場合はグラスに氷を入れ、生姜湯の代わりにジンジャーエールを注いでステア。
「ほらよ、『梅ジンジャー』のホットだ」
「うわ、ありがとう!」
よくハチミツを入れた生姜湯にレモン汁を入れたりするが、梅の酸味とアルコールで更に温まるぞ。風邪引いた時なんかに卵酒とかの代わりに飲むのも良いかもしれん。
「いやぁ大変だったよ?前線の基地に食糧届けに行ったら、敵の水雷戦隊とかち合っちゃってさぁ」
どうにかほぼ無傷で撃退はしたものの、そのせいで時間を食ってしまい、雨にふられてずぶ濡れに……という事だったらしい。
「カッカッカ、そりゃ災難だったなぁ」
「ホントだよ、まったく……」
ブーブー文句を垂れながらも、梅ジンジャーをゴクゴクやっている皐月。
「さてと、遠征帰りなら腹減ってるだろ?皐月。何か食うか?」
「そうだね、どうせなら梅酒のカクテル色々と飲んでみたいから……何か梅を使った料理を出してよ、司令官」
梅酒カクテルに、梅を使った料理か……今夜の『Bar Admiral』は梅尽くしらしい。
「あいよ。じゃあ適当に作っから、その間飲んで待っててくれ」
そう聞いた途端、睦月と皐月はグビグビと猛烈な勢いで飲み始め、杯を空けると
「「おかわりっ!」」
とズイッと突き出してきた。やれやれ、見た目ロリっ娘なのにこんな飲兵衛でいいんだろうか?……今更か。注文を聞くと、『オススメ、冷たい梅酒カクテル』とのご所望だったのでチャチャッと作るとしよう。
《ビールを飲みやすく!梅ビア》※分量は比率です
・梅酒:1
・お好みのビール:2
これも混ぜるだけのお手軽カクテル。梅酒1に対してビールを2。氷を入れたグラスに注いでステアするだけ。ビールは銘柄には拘らねぇが、出来るだけ苦味の少ない方が良いぞ。IPAとかはあんまり合わねぇ。まぁ、アサヒとか日本のビールなら大概イケるけどな。梅酒の酸味と甘味のお陰でビールの苦味が薄まるから、ビール苦手な奴にもオススメだ。
さて、もう一杯も手早く行こう。
《赤でも白でも好きなので!梅ワイン》※分量は比率です
・梅酒:1
・お好みのワイン:1
こっちも混ぜるだけ、簡単カクテルレシピ。グラスにお好みで氷を入れ、梅酒とワインを1:1でビルド。軽くステアしたら出来上がり。ワインの渋味が苦手……という方にオススメ、梅ビア同様に梅酒の酸味と甘味が渋味を和らげてくれる。
赤、白、ロゼ……それぞれスパークリング有り無しで試したが、一番美味く感じたのは白のスパークリングだな。白ワインと梅の酸味がスパークリングの炭酸で爽やかさを更に増して飲める。
「ハイよ、『梅ビア』と『梅ワイン』な」
さて、ツマミは何にするか……まずは軽く摘まめるお通し的な奴を一品。
《オクラと海苔の梅わさび和え!》
・オクラ:10本くらい
・梅干し:大きめ1個
・みりん:小さじ2
・醤油:小さじ1/2
・顆粒だし:小さじ1/3
・わさび(チューブで):3cm~お好みで
・もみ海苔:適量※たっぷりが美味いぞ!
・白いりごま:適量
さて、作っていこう。オクラは板摺りをして産毛を落とし、塩を洗い流す。ヘタを切り落として下処理をしたら、塩を入れた熱湯で湯がいて粗熱を取っておく。
梅干しは種を取り除き、包丁で叩いて梅肉にしたら醤油、みりん、顆粒だし、わさびを混ぜてタレを作る。辛いのが苦手ならわさびは無くてもOKだ。
茹でたオクラを斜めに半分に切って、タレと合わせる。そこに焼き海苔を揉んで砕き、加えて和える。器に盛って白いりごまを散らせば完成だ。梅とわさびの防腐効果で弁当にもオススメだ。
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