衛宮士郎の新たなる道
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第3章 Fate/It will rival too many Seriously
第1話 ホームステイの肉食系美少年
――――数年前。
とある町の空き地で一人の女の子が同い年位の男の子たちから虐められていました。
「や、やめて!」
「うるせぇんだよ!夜逃げしてきた悪女が!」
虐められていた理由が、今虐めている男の子の一人が言った事の様です。
女の子は事実を言われて、心から傷つき泣きそうになりました。
そこへ、この辺では見かけない男の子が颯爽と現れて、虐められている女の子とそれ以外の虐めっ子たちとの間に入り、片っ端から懲らしめて行きました。
「な、生意気だぞ!?よそ者の癖に!」
「ん?まだ文句付けて来る気概が残っていたとは驚きだ。だがこれ以上向かって来るなら考えが有るぞ?」
言うと同時に女の子を助けた赤い髪の男の子は、虐めっ子に向かって一歩踏み出しました。殺気とはまた違う圧力をぶつけながら。
「「「「「ひ、ひぃいいいいいっ!!?」」」」」
「ま、まて!?オレを置いて行くなよぉおおおおお!!?」
遂に圧力に負けた虐めっ子たちはわき目もふらずに逃げだして行きます。
それを見送った赤い髪の男の子は、直に女の子に振り返ってから頭を優しく撫でながら言います。
「もう大丈夫だ」
「う・・・・・・うわぁああああああああん!!」
虐めから解放されて緊張が解けた女の子は、自分の頭を撫でて来る見知らぬヒーローの胸を借りながら泣き出しました。
それからしばらくして泣き止んだ後、如何して助けてくれたのかと聞いた処、
「虐めを止めさせて助けるなんて、当たり前だろ?」
確かに道徳的には間違っていませんが、それを実行できる人など限られて行かますし、常識とは言えません。
ですが目の前の男のはさも当然の様に誇る事なく言う当り、大した事とは思っていない様です。
その後ちゃんと感謝してからいろいろ話をしました。
その男の子は一時的にこの町に来ただけで、一週間もすればこの町から出て行ってしまう事とか。
女の子自身も事情が有り、この町に居続けるかは判りません。
ですがこの町で唯一優しくしてくれる同い年位の子と、なるべく一緒に居続けました。
そして別れの日。
「わたし、いつかぜったいにあいにいく!だからそのときは今度こそ――――」
-Interlude-
「――――およ?」
そこで黒髪の美少女は目を覚ます。
彼女がいる場所は今まで苦労を共にしていた家であり、元私室です。
今まで住んでいた町から、とある事情で関東圏のとある町に引っ越すための荷物整理をしていた様ですが、日差しが気持ちよくてつい少しばかり昼寝をしてしまった様子です。
「寝っちゃったか。それにしても懐かしいな~」
彼女が見ていた夢は昔の彼女自身の過去の事であり、今の自分の指針を決めた大きな出来事の一つでもありました。
あの時の出会いと短いながらも楽しい時間を思い出した事で、彼女は自分の顔が赤くなっていることを自覚します。
「忘れられないのは仕方ないでしょ。だっての私の初恋だもん」
誰に聞かせるわけでもないその言葉。
それを自分に言い聞かせる事で、これからの自分の行く道への活力にする為なのでしょう。
「さて、あらかた片付いてあるし、そろそろ・・・・・・」
そこで気づいたのは父親の部屋から全く音が聞こえない事です。
「はぁ~~、おとんも昼寝してるな~?」
自分も寝てしまったので、そこについては人の事をとやかく言えませんが、自分の荷物整理はほとんど完了しているのです。
それに引き換え彼女の父親は全く片づけをしていないのです。
「よし、まずはおとんを絶命とこから始めますか!」
何やら物騒な言葉に聞こえた気がしたが、彼女は手始めにと行動し始めます。
そして数秒後。
「ぎぃやぁあああああああああああああ!!??」
近所迷惑並みの家主の悲鳴が、彼女の家の中に響き渡りました。
-Interlude-
此処は衛宮邸の居間。
現在彼の家の住人総出で、今日からホームステイする客人の出迎えが行われていました。
机を挟んだ先に居るのは、まだ15に届いていないながらも、既に王の器として完成された金髪の美少年。西欧財閥の盟主ハーウェイ家の次期当主、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイである。
そして後ろに控える様にいるのは、護衛役のリザ・ブリンカー軍曹です。
「既にお話はついているとは思いますが、改めまして私――――いえ、ボク自身から挨拶させて頂きます。レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイです。長いので気軽にレオとでもお呼び下さい。本日より宜しくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
レオの挨拶を士郎が代表して返答しました。
「並びに彼女は僕の護衛役で――――とは言っても、皆さんの方が彼女についてはご存知ですよね?」
「ええ、まぁ・・・」
士郎は別れ際の事を思い出し、軽く頬を朱色に染めました。
その士郎――――と言うより、衛宮邸の面々に対して言います。
「以前皆様にご迷惑を掛けたリザ・ブリンカー軍曹であります。此度は恥を忍んでレオ様の護衛として戻ってまいりました。不束者ではありますが、本日より宜しくお願いします」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
リザの挨拶を男3人は虚を突かれたように面を喰らっていますが、言った本人は気付いていません。
寧ろ、
(何か可笑しな事言っちゃった?)
今の自分のセリフを何度も心の中で反復させても気づいた様子はありません。
恐らくまだ日本語に不慣れなのでしょう。
その当たりを気付いたスカサハがクスリと不敵に笑いますが、指摘してあげる気は無いようです。
それを代わりに――――と言うワケでは無いのでしょうが、レオが言います。
「リザさん。『不束者ではありますが』と言う台詞はまるで、嫁ぐときのセリフですよ?それとも解って言った上での確信犯ですか?」
「えっ、そうなんですか!?」
そうして周囲の士郎達に確認を取るように見ると、顔に肯定と言う意思表示が書いてあることに気付きました。
「・・・・・・・・・っ」
「まだ日本語が不慣れならボクはドイツ語でも構いませんけど・・・」
「俺達もドイツ語で大丈夫だぞ?」
その証拠にとドイツ語で返す士郎。
士郎以外のまず2人のサーヴァントは、聖杯からの知識が中途半端な形で届いているので全世界各国の言語は生前の知識が無い場合、読み書きについては勉強しなければならないが、言葉で返す事なら可能です。
そしてスカサハですが、彼女は暇を持て余している間、辞書が少しでもある国の言語であれば、世界中の言葉を話せるほどマスターしています。
「衛宮士郎さん達もこう言ってくれていますし、厚意に甘えては?」
「いえ!御厚意は大変うれしいのですが、レオ様や衛宮邸の皆さんに気を使わせるなど以ての外です!」
「そこまで肩ひじ張らなくてもいいように思えますが・・・・・・」
「如何しました?」
自分の顔を見つめて来るレオに反応したリザですが、彼女は察する事が出来ませんでした。
非常に爽やかな美少年顔の下に隠された悪戯心に。
「厚意に甘えずに自分を律すると言う事でいいんですね?」
「えっ?あっ、はい。勿論です!」
「でしたらボクの護衛の任務中、常に滅私奉公で居続けて下さいね?」
「え゛っ!?」
満面の笑顔で冷酷無比な事を言われたリザは、表情を見る見るうちに蒼白させていった。
「ギャンブルは・・・?」
「駄目ですね」
「しろ」
「全部無しですよ。厚意に甘えず自らを律し続けるとはそういう事ですから♪」
「そ、そんな・・・・・・」
愕然とするリザに、彼女の視界に移らないように笑うレオだが、瞬時に冗談だと明かす。
「なんて、ボクは封建社会を目指している訳ではありませんし、趣味くらい許しますよ?」
「ホ、ホントですか!?」
「はい。ただ・・・」
「た、ただ・・・?」
「マルギッテさん経由でラーウィン殿から伝言を預かってますよ?」
「!」
ラーウィンの名前だけで小動物の様な反応をするリザ。
だがレオは敢えて気にせず伝言を口にする。
「『何時もの賭け事で何時もの様に大損し、衛宮殿やレオナルド様に寄生する事になれば、私の権限で一生・・・・・・』だそうです」
一番肝心の最後の部分が抜けている伝言だが、リザには効果覿面らしく、先程のレオの冗談など可愛く見えるほど顔を真っ青にし、震えている。
「ガクガクブルブルガクガクブルブル」
まるで生まれたてのチワワの様だ。
ですがレオはこれも無視して今度はマルギッテの伝言を伝える。
「猟犬殿からは『リザ、良い機会ですからこれを機に、衛宮士郎の管理されてもらいなさい』だそうです」
「は?如何しておr」
「!!」
マルギッテからの伝言に同時に反応した士郎とリザ。
士郎からすれば寝耳に水であり、リザからすれば――――。
(士郎に管理される――――つまり士郎の恋人と言う名の雌犬に成れる・・・!?それはもう、あんなことやそんな事を毎晩のように要求されて・・・・・・グヘヘヘへへ♡」
「ブリンカー君、途中から本音が漏れているぞ」
「と言うか、女性にあるまじき笑い方をしたな」
リザの漏れだした言葉にサーヴァントの2人はすかさず突っ込みを入れる。
まあ、本人は未だに妄想に浸っているので聞いていない訳だが。
「と言う事で本日より宜しくお願いしますね♪」
「宜しくするのはいいから、リザを復帰させてくれ」
「それはお断りします♪」
「即断!?」
混沌としつつも、衛宮邸に新たな住人が増えるのだった。
「あっ、そういえば、士郎さんにはお願いしたい事があったんですが」
「聞くから押し倒そうとしてくるリザを引き剥がすのを手伝ってくれ!」
「それはお断りします♪」
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