レーヴァティン
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第九話 別れその七
ワインの味だけでなくアルコールの感覚も感じつつ飲んだ。
「屑も始末出来て一石二鳥だ」
「御前も悪党は嫌いなんだな」
「そうした奴の人権は不要だ」
「そこは同じ考えなんだな」
「他人の人権を脅かす奴の人権が必要か」
英雄はここでも鋭い目になっていた、言葉も同じだった。
「俺は不要だと確信している」
「全く同意だぜ、人殺しの人権なんてな」
「不要だな」
「腐った犯罪犯す奴の人権なんてな」
「そういうことだ、ではだ」
「ああ、そうした奴がいたらか」
「殺してだ」
そのうえでとだ、英雄の言葉の色は変わらなかった。
「奪い取るだけだ」
「領地や財産をか」
「そして使うだけだ」
「そういうことか」
「そうだ、いいな」
「そういうことだな、じゃあここでは誰もいなかったしな」
久志は英雄の言葉を受けてだ、そうしてだった。
肉を食ってだ、その味を噛み締めつつ英雄にこう言ったのだった。
「行くか」
「港町にか」
「そうするか」
「そうだな、どうやらこの街にはいない」
英雄もこのことを確信して言った。
「噂一つなかった」
「それじゃあな」
「行くか」
「そこまで一緒だな」
「やはり来るか」
「街まではな」
その港町まではとだ、久志は区切って言った。
「一緒に行かせてもらうぜ」
「ここで離れてもいいと思うが」
「ここまで一緒だからそこまで一緒でもいいだろ」
「どうせなら最後までか」
「そうしたいからな」
久志としてはというのだ。
「だからな」
「そうか、わかった」
「それじゃあな」
「行くか」
「ああ、明日の朝発つとしよう」
この街をだ、神殿を中心として囲んでいる街を。
「そして港町に向かう」
「いよいよだな」
「今夜は飲む」
英雄は実際に飲みつつ言った。
「そうする」
「飲むのかよ」
「ここの酒は美味いからな」
「ああ、そういえば神殿でも酒は出たけれどな」
それもワインだ、二人が今飲んでいる赤ワインだけでなくビールもあった。
「お世辞にもな」
「味はよくなかったな」
「随分質素な味だったな」
「神に仕えている場所だとだ」
「どうしても質素になるか」
「質素な素材を質素な風に作る」
あえて凝らずにというのだ。
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