| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

歌集「春雪花」

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

331




 空翳り

  静けき夕に

   雨そふる

 あやめ濡れにし

    風待ちの月



 空が翳ったと思ったら、しとしとと雨が降り始めた…。

 夕の黄昏時…昼の暑さを和らげるように、雨は静かに降り続ける…。

 美しく咲いたアヤメにもそぼ降り、その花弁は力なく垂れる…。

 便りなぞありもしない…そう解っていても待つしかない私…。
 しかし…それさえも無駄と解っているのだが…。

 老いるだけの今…過ぎ去るだけの今日…。


 そんなことしか感じられない…六月の入りだ…。



 月影の

  なくばいづこに

    宿るらむ

 待てや白みし

    ねやの侘しき



 夜が更けても雲は晴れず…月明かりはどこにもない…。

 こんな時…月はきっとどこかへ泊まって休んでいるのだろう…。
 きっと…暫くしたらその顔を見せ、明かりを灯してくれるに違いない…。

 一人寂しく眠れぬ夜…そんな月明かりを待っていたら、空が白み始めて朝になってしまった…。


 彼のことを考え…想い…寂しさの中で過ごす部屋は、なんと心許なく物悲しいことか…。




 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧