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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0054話『ウサギのお人形』

 
前書き
更新します。 

 



今日の町への視察は卯月と弥生に着いてきてもらっている。
終始、卯月は初めて視察に来るために鎮守府の外に来たのか目を輝かせている。

「うーちゃん、楽しみぴょん!」
「そうだね…」

そんな卯月に対して弥生は感情表現が苦手なためにしかめっ面のままだ。
だけど知っている。
弥生は感情表現が苦手なだけでその実は楽しんでいることを。
それで弥生の方へと顔を向けて、

「弥生。そのままでもいいけど町の人にそのままの顔だと勘違いされてしまうぞ?」
「…それでもいい。司令官と卯月が理解してくれるだけで弥生は、嬉しい…から」
「まぁ弥生は楽しんでいるのは分かるんだけどなぁ…まぁいいか。しっかりと楽しめ」
「はい…」

それで少し微妙だけど弥生はかすかに笑みを浮かべたような気がした。
弥生の笑っている顔というのも想像は難しいけど、微笑んでいるのなら想像できる。
いつか弥生も普通に笑える時が来ればいいんだけどな…。

「あっ!? 司令官と弥生がなにか楽しそうぴょん! 混ぜるぴょん!」

そう言って卯月が私と弥生の間に入り込んで両手を繋いでいた。

「これで卯月もみんなもハッピーぴょん!」
「…弥生…恥ずかしい…」
「良いぴょん。弥生が楽しんでくれるなら何でもするっぴょん」

卯月はまったく優しいな…。
この世界に来てから数日だけど一回みんなと離れ離れを経験したからか卯月は友情をとても大事にしている。
睦月型はもちろんの事よく遊んでもらっている阿武隈には感謝の言葉を言っている。
照れ隠しに「うっそぴょーん!」と言って阿武隈に怒られているのをよく見るが。
…阿武隈、意外に慕われているよな。やっぱり。
そんな事を頭の片隅で思いながら『なんでですか~!?』………阿武隈の声が聞こえたような気がしたが、気のせいか。
それから町内会に顔を出して色々と話を交わした後に二人と一緒に町のショッピングストアに足を運んだ。
港町だというのに意外にバラエティーは豊富にあるんだよな、この町。
…後で知った事だけどなるべく全国の鎮守府のために大本営が暮らし政策をした一環で深海棲艦に襲われる可能性があり危険だというのに港町に来る人が増えたという。
それはなぜか…?という疑問に行き着くが結局はどこで暮らしていても空襲される危険があるのなら守ってもらえる場所にいた方が安全だという逆転の発想だという。
…まぁそれでいいならいいけどね。私も一生懸命守るだけだし。



―――閑話休題



そしてとあるファンシーショップに足を踏み入れると卯月が目を輝かせて、

「ウサギさんがいっぱいだぴょん!」
「そうだね…可愛い」
「二人とも欲しいなら買ってあげるぞ?」
「いいぴょん!?」
「ああ。そのために私をここまで連れてきたんだろう?」
「うっ………嘘だと言いたいけど言ったら買って貰えなくなるぴょん…」
「卯月…今回ばかりは、司令官の、勝ちだね…」
「むすー…いいぴょん。今回ばかりは素直になるぴょん」
「よーし、いい子だ」

そう言って私は卯月の頭を撫でてやる。
そしてくすぐったそうな顔をしながらも、卯月はさらに上機嫌になってその照れ隠しか弥生の詰め寄った。

「弥生! お揃いのウサギさんを買うぴょん!」
「…いいけど、同じものが二つあると迷うよ…?」
「ふっふっふー…抜かりはないぴょん。弥生はピンクのウサギ。そして卯月は青いウサギの人形を買ってもらうぴょん」
「なるほど。それならお互いにお揃いのウサギの人形を買えるな」

それで「むふー」と偉そうな声を出している卯月はいいとして、私は卯月のご要望通りに二つのウサギの人形を買おうと思い店員さんに聞いてみたが、

「…提督さん。すみません、実はいまピンクのウサギの人形は切らしていまして…」

店員さんのその一言に卯月は分かりやすく『ガーン!』という声を出していた。
弥生も弥生で口を開きっぱなしにしていて今回は分かりやすくショックを受けているみたいだ。
…さて、どうするか。
青いウサギの人形なら数はあるんだけどな。
だけどそこで一つ閃いた事がある。

「店員さん。ここにラッピング用にピンクと青のテープはありますか? 特大サイズの」
「司令官…?」

卯月が少し不思議そうな顔になっていたけど店員さんはそれだけで私の意図をわかってくれたのか、

「ありますよ。すぐにご用意しますね」

そう言って二体の青いウサギの人形を奥へと持って行った。
しばらくして店員さんは二体の青いウサギの人形を持ってきた。
だけどさっきまでなかったのは片方の青いうさぎの人形にはでかいピンクのリボンが巻かれていて、もう片方も色が被らないように水色のリボンを巻いてくれていた。
しかも私の意図とは関係なく睦月型のマークである三日月の装飾まで施してある。さすが仕事ができる人は違うね。

「うわー…これはとてもいいぴょん!」
「うん…とても、可愛い…」
「店員さん、ありがとう。予想以上だよ」
「いえいえ。艦娘さんが喜んでくれるのでしたら頑張れますから」

まじ店員さんグッジョブだ。
そのまま二体のウサギの人形を購入して卯月は笑顔を、弥生はささやかな微笑みを浮かべてウサギの人形をそれぞれ抱きしめていた。
うん、これを見たかったんだ。
弥生も嬉しそうだ。
そんなこんなで私達は視察を終えて鎮守府へと帰還するのであった。








…だけど翌日、とある事件が起きた。
弥生のピンクのリボンがされている青いうさぎの人形が腕が千切れていたのだ…。


 
 

 
後書き
今回は卯月と弥生の回でした。
最後に次回に続く文章を添えて…。



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