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無精髭

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第四章

 悠一は自分の顎、今は奇麗なそこに手を当てて智和に言った。
「不潔って思われるのは嫌だな」
「そこがどうしても気になるんだな」
「そうだよ、どうにもな」
「難しい問題だな」
「御前がストーカーで訴えられる問題よりもな」
「そこで俺のこと言うか」
「いいから捕まることはするなよ」 
 悠一はこう念を押した。
「そのことは気をつけてな」
「沙織ちゃんゲットだな」
「そうなる様に応援はしてやるよ」
 こう焼酎を飲みつつ言った。
「せめてな」
「悪いな」
「まあ俺のことはどうしたものか考えるか」
 三十過ぎて独身で結婚のことが気になっていることも事実だ、その為にはもてることも必要だ。そしてだった。
 悠一は時々鏡で自分の顔を見て考える様になった、そして言うのだった。
「髭、生やすか」
「ああ、店長またその話ですか」
「何か最近よく言いますね」
「お髭がどうとか」
「そう言ってますね」
「何か俺は髭を生やすとな」
 智和との話を思い出しつつ言うのだった。
「もてるんだよな」
「素がいいですからね」
「何か髭生やすとダンディっていいますか」
「そうした感じになりますか」
「そうなるんですよ」
「無精髭がダンディか?」
 悠一はバイトの店員達に怪訝な顔になって返した。
「そうなのか」
「店長の場合は似合いますよ」
「それでダンディに思えるんですよ」
「店長の場合はですよ」
「そうなんですよ」
「そうか、しかし生やすとな」
 また言った悠一だった、今度は店員達にだ。
「不潔に思われるからな」
「今更そんなこと言う人ないですよ」
「無精髭位で」
 店員達はその悠一に言う。
「気にし過ぎですよ」
「そこまではです」
「気にしなくていいですから」
「それに店長毎日お風呂に入ってますし」
 このことも言うのだった。
「清潔じゃないですか」
「それで無精髭が不潔とか」
「そこまで気にしなくていいですよ」
「別に」
「だといいけれどな」
 難しい顔で言う彼だった。
「じゃあ生やしてもいいか?髭」
「実際似合うと思いますよ」
「だから生やしたらどうですか?」
「前一回生やしたんですよね」
「じゃあまたそうしたらどうですか?」
「前は面倒臭かったからな」
 だから生やしたことをだ、悠一は店員達にも話した。 
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