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無精髭

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第三章

「だから毎日剃ってるけれどな」
「そうしたらもてない」
「何だよ、これ」
「それだけ御前が髭が似合うってことだな」
 だからだというのだ。
「つまりは」
「それでか」
「ああ、俺から見てもな」
 智和は悠一のその顔立ち全体を見て言った。
「やっぱり髭が似合う感じだな」
「無精髭がか」
「ヒトラーみたいなチョビ髭とか関羽みたいな髭じゃなくてな」
「無精髭か」
「口元とか顎に無造作に生やしてるな」
「そんなのがいいんだな」
「そうだよ」
 悠一の場合はというのだ。
「御前はな」
「生やすともてるか」
「似合うのは俺でもわかるな」
 肴のホッケの開きを食べつつ言う、骨から身が取れやすくしかも適度に脂っけがあるうえにあっさりとしていて実に美味い。
「御前に無精髭はな」
「そうか」
「そうだよ、だからもてたいならな」
「生やすべきか」
「俺はそう思うからな」
「そうか」
「まあ御前が決めることだ」
 そのホッケを食べ続けながら悠一に言う。
「俺も俺で今ゲットしてるからな」
「沙織ちゃんか?」
「ああ、これが凄くいい娘なんだよ」
「会社の若い娘だな」
「十歳下のな」
「それやばくないか?」
「十歳下はか」
 それだけ年齢が離れているからとだ、智和も言う。
「やばいか」
「ロリじゃないか?」
「いや、これが背が高くてスタイルがよくてな」
「性格が特にだな」
「いい娘だからな」
 それでというのだ。
「俺もアタックしてるんだよ」
「ストーカーみたいにか?」
「馬鹿、そこまでやったら会社にいられないだろ」
「それでも十歳下だろ」
「凄くいい娘なんだよ」  
 だからだというのだ。
「その娘はな」
「だからか」
「ああ、是非にって思ってるからな」
「アタックしてるんだな」
「御前もまだ一人だからな」
「もててか」
「彼女ゲットしたらどうだ」
 こう言うのだった。
「いいな」
「その為にもか」
「髭生やすか」
「そうしたらどうだ」
 こう言うのだった、しかしだった。 
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