地下三階
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章
「わかったわ、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「今度は何ですか??」
「貴女達にも芸術のインスピレーションあげるわね」
そうするというのだ。
「それが何か役に発つでしょうし」
「そうですか」
「じゃあお願いします」
「貰えるものでしたら」
「喜んで」
「その意気気に入ったわ」
貰えるものは貰っておくという二人の考えをというのだ。
「お金は後で何があるかわからないけれどね」
「こういうことなら」
「形にならないものみたいですから」
「じゃあ喜んで、です」
「貰います」
「実際にあたしは見返りは求めないから」
男もそこは言う。
「だからね」
「はい、それじゃあですね」
「これからですね」
「宜しくお願いします」
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね」
ここでだ、男は二人に投げキッスをそれぞれ与えた。しかも右目を瞑ってのうえでという変に気取ったものだった。
「あたしからのプレゼントよ」
「有り難うございます」
「それが何かわからないですが」
「とりあえず有り難うございます」
「このプレゼント使わせてもらいます」
「必要な時に出て来るから」
男は二人に笑って言った。
「楽しみにしていてね」
「そうしています」
「とりあえず何かわからないですが」
「そうさせてもらいます」
「期待していますんで」
「そうしてね、それでだけれど」
男は二人に笑顔でこうも言った。
「貴女達がここに来るべきじゃないから」
「やっぱりそうですよね」
「ここ百貨店じゃないって言われましたし」
「じゃあ何って思いますけれど」
「それでもですね」
「ええ、まああたしは閃きでね」
芸術のそれだというのだ。
「今はたまたま美術関係だったのよ」
「だから絵とか彫刻ですか」
「そうしたのを飾ってるんですね」
「そうだったんですね」
「今は」
「そうよ、これが音楽だったり他のだったりするから」
このことも話すのだった、
「たまたまね、そして」
「そして?」
「そしてっていいますと」
「貴女達は帰りなさい、元の世界にね」
こう双子に言ってだ、男は今度は二重世紀中頃のアメリカのアニメの魔女の人妻の様に口元をふんふんと動かした、すると。
颯水も利冴もエレベーターの中にいた、そうして。
二人共だ、きょとんとした顔でお互いに話した。
「あれっ、何かね」
「私達誰かとお話してなかった?」
「そうよね」
「そんな感じするわね」
こう二人で話した。
「妙にね」
「そんな気がするわ」
「どうしてかしら」
「変な感じね」
「けったいな男の人とお話して」
「何故かそう思えるわね」
二人共話をしながら首を傾げさせる、そうして。
ページ上へ戻る