繊細な猛将
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第四章
「まさにな」
「そうですね、確かに」
「死んだ奴はいないな」
「砲撃なかったですからね」
敵がそうしてくる前に仕掛けた結果だ。
「一応点呼は取りますが」
「死んだ奴がいなかったら」
「幸いですね」
「全くだ」
キャリーはガムを噛みつつボルトに笑って返した、とりあえず戦死者はいなかった。行動不能にした「戦車は二両だった。まさに会心の勝利だった。
この戦いから数日後だった、中隊にだった。何と。
パットンが幕僚達を連れてやって来た、磨き上げられたヘルメットとブーツが印象的な如何にも誰かを殴りそうな厳しい顔の男だ。
彼は自分の姿を見て驚いて敬礼する兵士にだ、笑って言った。
「この部隊の指揮官は何処だ?」
「中尉殿でありますか」
「そうだ、すぐに呼んで来い」
こう言うのだった。
「俺の前にな」
「わかりました」
こうしてだった、すぐにだ。兵士はキャリーのところに向かった。彼は丁度ボルトと共に地図を見つつ現在地の確認を取っていたが。
兵士から話を聞いてだ、驚いて言った。
「司令がか」
「はい、ここまで来られています」
「一体何だ」
「あの、何か軍律違反でも」
ボルトも気が気でない顔で言う。
「あったとか」
「いや、それはな」
「ないですよね」
「そんなことうちの中隊にはないぞ」
「そうですよね」
「そんなことは許すか」
そこは絶対にというのだ。
「それこそな」
「そうですよね」
「ああ、じゃあ何だ」
「とりあえず行ってみますか」
ボルトはどうしてパットンがこの中隊のところまで来たのかわからなかったがとりあえず呼び出しに応じようと言った。
「何はともあれ」
「ああお呼びならな」
「そうしましょう」
こう話してだ、そしてだった。
キャリーはボルトと共にパットンの前まで行った、途中本当に何かとボルトと一緒に話をしながら。
そのうえでパットンの前に出て敬礼をした、すると。
パットンは破顔して笑ってだ、こうキャリーに言った。
「話は聞いた、よくやった」
「と、いいますと」
「フリッツ共の戦車を退散させたそうだな」
「あのことですか」
「そうだ、バズーカを使ってそうしたらしいな」
「はい、それは」
「そのことだ」
まさにというのだ。
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