世界をめぐる、銀白の翼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章 RE:BIRTH
その名より「一つ」欠けたモノを表す
「翼」人に「刃」を向けし者
そこから「一つ」を抜いて「翼刀」
その「一つ」が表すものは、「心」か、「人」か
それとも
「紫電一閃!!」
ゴッ、バガァッ!!!
エリオの電撃と共に爆ぜ出た斬撃が、寄って集ってくる模造戦士を砕いて消し去る。
今や彼の足元には多くの残骸が山積みになっており、ちょっとしたバリケードのようになっている。
「フゥッ、フ・・・・ハァ―――――!!!」
ストラーダのブースターが煙を噴き上げ、飛び掛かってきた三体をテンポよく三連撃で薙ぎ払い、突進攻撃で群像を消し飛ばす。
そしてそこから逆噴射し、今度は駒のように回転しながら岩のもとへと戻っていく。
「セッ、ハァッ!」
気合を込め、脇に槍を挟んで後ろに回し、掌を向けて構えを整えるエリオ。
汗は流れるが、いまだ劣勢という雰囲気ではない。
(だけど終わる気配がない・・・相手もだんだん耐久力が上がってるし・・・・)
エリオの思う通り、相手はだんだん倒しづらくなっている。
そして、その分こちらの魔力消費も激しい。
このままではそうかからない内に、数の暴力で圧殺されてしまうだろう。
(卑弥呼さん・・・早くッ!!)
「ストラーダ!!行くぞ!!」
《Explosion!!》
バォウッッ!!!
ストラーダが爆発的なブーストをかけ、一気に飛び出して向こう外側の模造戦士を駆逐する。
それと同時にエリオはこちら側の敵を、電気魔法で身体強化した蹴りでなぎ払う。
観測者は、動かない。
------------------------------------------------------------
封印はいたって正常じゃな・・・・・
しかし外郭がはがされておる。
この捩じれが元に戻されていたら厄介だったのだが、そうはならなんでよかったわい。
・・・・・
外が騒がしい・・・・・
あぁなるほど、エリオ殿が儂のために頑張っておるのだな!!
ムッハーーーーー!!
漢女パワー全開じゃのォッ!!!
------------------------------------------------------------
ゾクゥッ!!!
「う、うわぁぁああああ!!!!」
直後、エリオの背筋に何とも得ない恐怖が襲い掛かってきた。
しかし、それを糧にして彼は勇気をわき起こして猛然と敵を倒す。
結果オーライである。
------------------------------------------------------------
シュゥゥゥううううううう・・・・・・
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・」
焦げたような臭い
地面からシュウシュウと上がる煙
その真ん中に、息を荒くした鉄翼刀は立っていた。
あの瞬間
百代の放った気力弾は、翼刀の圧縮球を消し飛ばして、確実に命中コースの軌道に乗っていた。
しかし、ハクオロに上半身を掴まれた翼刀は両足を上げてその気力弾を脚で挟んだのだ。
そしてそのまま後方のハクオロに流すようにしてブチ当てた。
ハクオロの顔面が爆発で吹き飛び、その巨体が地面を揺らして倒れるころには、すでに翼刀は百代の目の前に到達していた。
「ッ!!!」
「フゥッッ!!!」
シュゴッッ!!
息をのむ百代、抜き手で頸動脈を狙う翼刀。
百代の優れた反射神経でその命中は防げたものの、いかんせん体力がそろそろつきそうだ。
百代の瞬間回復は体の損傷などは瞬時に直すものの、体力までは戻らない。
そもそも彼女の体力自体が異常なほど高いので、そんなこと気にしたこともなかったのだ。
そして、さっきの気力弾。
あれには彼女の気力のほとんどをつぎ込んでいた。
よもやあの一撃を回避されるとは思ってもみなかったのだ。
まさか自分の全力近いパワーを出して、倒れない相手がいるとは。
「ハハッ!!世界は広いなぁ!!」
しかし、それでも百代は楽しそうである。
最後に倒れない程度の体力しか残していないので、身体はふらついているが。
だが、それは翼刀も変わらない。
あんな威力の気力弾を挟んで流したのだ。
一歩踏み出すごとに肉離れを起こしそうだし、走り出そうものなら膝が笑って倒れてしまうだろう。
だから、頸動脈を狙った抜き手でも、そのまま地面につんのめてしまっていた。
しかし、それは脚に限った話であり
ダンッッ、ブォウッ!!
「(ゴッ!!)うォッ!!!」
腕に関しては、そうでもない。
「カポエイラか!!また渋いもん持ってくるじゃないか!!」
逆立ち状態になって、翼刀が百代に蹴りを打ち放っていく。
翼刀は脚に力を入れていない。回転による遠心力を用いているだけだ。
しかし鞭のようにしなるその蹴りは、重く鋭く、彼女の体を叩いていく。
そこに
「ハァァアアあああ!!」
音撃打
「ダぁッッ!!」
灼熱大砲
ドドンッッ、ジュゴゥッッ!!
真上から図太い音撃での砲撃が襲い掛かり、翼刀をズゴンッ!!と叩きつけた。
------------------------------------------------------------
「響鬼が合流しました!!!」
「今や!!唯子ちゃん、いったれ!!」
「はい!!!」
「響鬼さんの音撃と、そして唯子ちゃんなら、翼刀君は元に戻せるんや!!うちらも出るで!!」
「はい!!」
------------------------------------------------------------
凄まじいほどの音撃を紙一重で回避する翼刀だが、肩を掠めていたのか押さえている。
その翼刀に向かって、装甲声刃に自らの声を吸収、音撃に変換して、響鬼が刃を振るっていく。
その刃を片膝を立ててヴァルクヴェインで受け止める翼刀。
さらに最後の力を振り絞って突っ込んできた百代を後ろ回し蹴りで蹴り飛ばし、同じような状態で、同じように攻撃してきた羽入を掌撃で吹き飛ばした。
「ゲホッ・・・・」
「くふっ・・・ケホッ!!・・・・」
羽入の握っていた「鬼狩柳桜」が回転して飛んでいくが、それを裕理が握って神通力を流す。
そして翼刀の周囲に幻影を張り巡らし一斉に襲い掛かるが、ヴァルクヴェインからの刃の雨で、まとめて吹き飛ばされて裕理も倒れる。
「ぐぁッ!!」
そして、最後に立つ一人
二十メートルは離れた装甲響鬼に向かって、翼刀がヴァルクヴェインを振り下ろす。
その振るった軌道に刃が現れ、串刺しにせんと射出されていく。
「タァッ!!」
ドンッッ!!
しかし、その刃が音撃の波状攻撃で刃は空中で叩き落とされる。
そしてそのまま音撃は翼刀の体を叩き、衝撃に身じろがさせた。
「いまや!!」
「翼刀ォォォおおおおお!!!」
音撃にひるんだ翼刀目掛けて、唯子が飛び出していって拳を握りしめる。
「パニッシャァーーーーーーーーー!!!!」
ゴウッ!!
「パン・・・・え!?」
パシィッッッ!!
技を叫び、拳を千切れるのではないかと思うくらいに突き出した唯子。
しかし、その言葉は拳と共に止まった。
「う、受け止めたやて!?」
『いえ、それよりも、まさか!!』
「音撃が・・・効いてない?」
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ブゥンッッ!!!
翼刀が咆哮を上げ、唯子の腕を掴んでブン回し、上空のはやてに向かって投げ飛ばした。
その唯子をはやてがキャッチし、上空から様子をうかがう。
響鬼に向かって、翼刀が駆け出していた。
響鬼も音撃でそれを迎え撃つが、それを翼刀はヴァルクヴェインで弾き飛ばす。
「な、なんでや?・・・・・しかも体力だってあんなに残ってるわけが・・・」
『主はやて、あれを』
はやての疑問に、リィンフォースが翼刀を見るように促した。
見ると、翼刀が走った後に割れた注射器が落ちていた。
『おそらくあれで体力を回復したものかと』
「ホンマかい!?じゃあ・・・・いや、でも・・・・」
だからと言って、音撃が弾かれたのはなんでだ!?
はやてもリィンフォースも、まだその答えを導き出せてはいなかった。
「フンッッ!!」
「ガァッ!!?」
そうしている間にも、響鬼が吹き飛ばされて草むらに消える。
腕だけは出てきているが、その腕の変身が解けているところを見ると、完全に撃破されてしまっているらしい。
周囲には音撃や、その前にあった気力弾での煙が、地面からシュウシュウと上がっている。
その真ん中に翼刀は立ち、肩を短く上下させて呼吸を整えていた。
「ヒビキさんまで・・・・・」
「翼刀!!このバカ、目ェ覚ましなさいよ!!」
「あ、唯子ちゃん!?」
その一面の光景を見て、唯子がはやての腕を振りほどいて飛び降りて行った。
その声に反応して、翼刀が唯子の飛び降りからのキックを腕で逸らすように受けて流す。
地面に着地した唯子は受け身を取り、そのままの勢いで翼刀に向かって拳を振るって攻撃をしていった。
その拳に合わせ、翼刀も拳を振るって正面からぶち当たる。
ゴッ、バァゥッッ!!!
「キャアッ!?」
『くっ!!これほどの衝撃を・・・!?』
ピリピリと大気を振動させたその衝撃は、ユニゾンしていた上空のはやての姿勢を崩すほどの物だった。
そんな衝撃の元になった二人は、それを発しながら拳をぶつけて押し込み続けていた。
一歩も引けば、周囲にばらまかれているこの衝撃分、自分に襲い掛かることを知っているのだ。
しかしそんな拮抗状態は長く続かず、バチィ!とはじけて両者が後退しあう。
翼刀がバックステップで下がり、唯子が地面を滑るように後退した。
弾けた衝撃に翼刀が腕で顔を覆い、それを外す。
その瞬間、唯子が蹴り飛ばしてきた土くれが顔を叩き、視界を遮った。
「くっ・・・」
「貰ったぁ!!」
ズンッッ!!
目を少し細めてしまった翼刀の腹部に、踏み込み足刀をぶちかます唯子。
そしてそのまま全身の軸を捻り、不動衝撃を叩き込む。
が、翼刀はその場でバク宙することでその衝撃を逃がし、二、三回転したのち地面に着地、瞬時に足払いをしてきた。
それを小ジャンプで回避し、右踵落しからの左後ろ踵回し蹴りで翼刀の側頭部を強打する。
しかし、唯子のその左足を翼刀は掴み取り、合気を以って逆に投げ飛ばし、唯子を大木に叩きつけた。
「が・・・けっほ・・・・!!」
肺の空気がすべて押し出され、胸を押さえて唯子が地面に倒れる。
「最後の夜天の王・・・・確認」
上空にいるはやてを睨み上げ、ヴァルクヴェインを振るう。
もちろん、はやても空間魔法でそれを迎え撃った。
しかし、射出されてきた刃一本一本が揺らぎを携えており、それぞれの間に捩じれを生じさせている。
二つの力の間に生じる捩じれだけでも、本来とんでもない威力。
しかし、今のこれはその数を優に超えており・・・・!!!
ギュオッ、パンッッ!!!
大気がはじける音がして、はやてが内部からの衝撃に血を流しながら落ち、倒れた。
捩じれで歪んだ空間。
それが一気に解放されたことによる大気の押し出し。
一瞬生まれた「真空」という状況に、人間は耐えられるほどの強度を持っていない。
「ケふッ・・・ッハ!!」
「ぐ・・・ッ・・・」
地面に倒れ伏し、ユニゾンも解けてしまうはやてとリィンフォース。
そこに向かって、翼刀が剣を振り上げ――――――
ガガガガガガガガガガッギィンッッ!!!
放たれた刃が、蒔風の剣によってすべて弾かれて消えていった。
「!?」
どこからか飛来してきたその剣が地面に突き刺さると同時に、もう一本が飛んできて剣と剣がくっついた。
二本合わさり「林山」となったその剣は、エネルギードームを作り出してその中のメンバーのダメージを少しずつだが、癒し始めている。
その剣に気を取られる翼刀だが、直後にその身体を衝撃が襲った。
なんてことはない。
ただ単に、一人の男がぶつかってきただけのことである。
「テメェ・・・好き勝手やってくれてんじゃねぇか!!!」
「ッ!!!」
ゴォンッッ!!
蒔風の衝突でそのまま押し出され、共にドームの中から出ていく翼刀と蒔風。
数十メートル吹っ飛んだところで、翼刀が大地に足をつけてそれを受け止めきる。
両者の剣が鍔競合って、小さな火花を散らす。
「・・・・・」
「・・・・おい、いつまでダンマリしてんだお前」
「・・・・・・・・」
「音撃は効かない、的確な判断能力・・・・つまりはお前・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「洗脳、解けてんだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・ああ」
蒔風が聞き、返答が返って来た。
to be continued
後書き
今回、クラウドさんたちは少しお預けです。
次回、良心の呵責と安堵と悪
ではまた次回
ページ上へ戻る