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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  砂漠の死闘



世界四剣



それは世界を股にかけて存在する剣。

剣は所有者を認め、その所有者の生涯とともにある。



ある剣は勝利をもたらし

ある剣は世界を統べ護り

ある剣は人々の傷を癒し

ある剣は人々の心を開いた




うち二つは我々も知っている。

天剣・十五天帝
聖剣・エクスカリバー



そして、今三つ目の四剣が現れた。
その名は―――――――






「神剣・・・・・ヴァルクヴェイン?」



蒔風がふと言葉を漏らす。
目の前の剣の、その名前を。


癒しの剣、浄化の剣。



しかし、だからと言ってなんだというのだ。





癒せる、ということは脅威でないことにはならない。






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ポンポンポンポンポーーン




砂漠にそんな気の抜ける音が鳴っている。

その音は要塞G4の背後からメキメキと伸びた砲台から聞こえてきていた。



そしてトトトトトト、と地面にそれが落ちてきて・・・・・・



「「ウワオおおオオオオオオオオ!!??」」



ドン!!ドドドドドッ!!ドゴォッッ!!!




落ちてきた手榴弾(バスケットボールの大きさ)が、遠慮容赦なく爆発し、周囲に破壊を振りまいた。





「ちょっ!?」

「城壁相手にしたことはあったがよ、これはさすがに初めてだぁな!!」



相手の猛攻猛撃を受けて、ランサーとフェイトは砂漠を走り、飛び回っていた。

猛烈な爆撃の間をぬけ、ランサーは走りフェイトは飛ぶ。




バルディッシュを振るい、ハーケンセイバーを弾幕のようにいくつも飛ばし、さらにトライデントスマッシャーで要塞背後の三点を一気に攻める。

しかし、要塞の背後にも目があるのか相手は反応、迎撃してきた。

ガキョン!!と砲口が三つ、内側から伸びてきて、そこから冷凍砲が発射されてきたのだ。
更にはそれを取り囲むようにガトリングが四門、こちらも一斉掃射されてきた。



その弾丸にハーケンはすべて掻き消え、スマッシャーは三本とも凍結して砕け散った。

無論、フェイトの魔法には雷が付加されている。
しかし、電気はすべて地面に流されているために効果がない。


「クッッ!!!!」


冷凍砲撃を回避し、避けようのない弾丸はすべて電磁を織り交ぜた魔力バリアで逸らしていく。



正面ではランサーが砲撃の隙間を縫って要塞へと飛びついて行っていた。

その山を一気に駆け上がり、G4の目の前へと到達し


「ウグォッっ!?火炎放射器!!?」


G4の周囲の隙間から吹き出してきた火炎に押し返されて地面に着地する。

直後、熱を纏ったG4が即座に自分へと冷凍砲を撃って冷却する。
熱疲労でバキバキと兵器にヒビが入るが、即座に新たなものが飛び出してきて意味がない。

むしろ砕けた鉄片などを爆破で飛ばしてきて、散弾のようにして来ている。



「くそッたれ・・・近づけねェ、攻撃が効かねぇってんじゃ、どうしろってんだよ」

「本体を狙えば・・・・」

「相手もそれがわかってるみてぇだけどな」

「だよね・・・・」


そう悪態をつく二人だが、相手は待ってなどはくれない。

要塞の下段から、回転ノコギリのアームが飛び出してきて二人へと襲い掛かってきた。



それをランサーが受け止め、フェイトが切り落とす。
しかし「ピピッッ!」という音がして、その切り落とされたアームが爆発した。

フェイトがバリアを張って防御、その威力に二人が後退する。


要塞の腹の部分がグパリと開き、太陽光線を集めて一気に打ち出してきた。
瞬間的にランサーがフェイトを突き飛ばして飛びのくと、その直線状の砂漠がドロドロに溶けて飴細工のようになる。



そうしているところにロケット砲が撃ち込まれ、避けたところでトリモチ爆弾が彼らを捕えようと襲い掛かってきた。
フェイトがトリモチを焼き焦がして無効化しても、またも現れた巨大なアームが彼女を掴み、ブンブンと振り回してしまう。



「ッッ・・・・あ・・・・!?」


その勢いに呼吸が出来なるフェイト。
するとその腕が止まって、要塞からガキョンと二股の槍のようなものが突き出てきた。

その先端にどんどん電気が溜まって行き、二つの磁極によって鉄塊が打ち出される。


「なっ!?レールガ・・・・・」

「させるかァ!!!」


ギャギィ!!と、そのレールガンの根元にゲイボルグが突き刺さり、根元が傾いてその方向を少しだけ変えた。
根元では少しでも、先端では大きな傾きだ。

フェイトが必死になって首を逸らし、そしてレールガンが彼女の顔から二メートルのところを通って行く。


そしてランサーがアームを切り落とし、着地と同時にフェイトが要塞の中腹を斬り裂く。



ギィィいいいいいい・・・・ギョゴォン



そんな金属がきしみ、砕けるような音がして要塞が一瞬揺らぐが、そこもすぐに治っていってしまった。

無限に兵器を生み出していくG4。
もはや、個人の持つ戦力では勝てない。



「ッッアォア!!突き穿つ(ゲイ)!!!!」

ギィイイ!!ドドドンッッ!!



痺れを切らすランサーがゲイボルグを放とうとするが、そこに耳を砕こうとでもするかのような高音と共に魔法砲撃が放たれた来て地面を吹き飛ばした。

そして触手のようなアームが二本出てきて、そのハサミのような先端がガバリと開く。


その二本のアームに、魔力が凝縮されていき、巨大な球体となって集束されていく。


「集束魔法!?」

「俺たちの使った力丸々ぶち込んでくる気かよ!?」



叫ぶランサーだが、それだけではない。


「ここって内戦地区だったよね?」

「おう」

「で、みんなデバイスとかカートリッジの銃とか使ってたから・・・・・!!!」



集まる魔力は、彼等だけのものではない。

この地で行われてきた戦争。
そのすべての重みが、伸し掛かってくる。





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「オオオオオオオオおおお!!!」


ガッ、ギィ!!



蒔風の十五天帝と、青年のヴァルクヴェインが交差して遺跡内で火花を生む。

ぶつかり合って、鍔競合う。

そうして拮抗する両者だが、蒔風が青年に蹴りを入れてその隙に剣を弾きあげる。
青年の腕が上がり、そこに蒔風が拳を叩き込んできた。

が、青年はあっさりと剣を手放し、その拳を手刀で落とし、肘鉄を顔面に叩き込む。


「ガッ!?ってぇ~・・・な!!」


それを掌で受けた蒔風が、青年の足元を払う。
それを小さく飛んで回避した青年は、蒔風の胸にそのまま蹴りをぶつけて後退させる。


後退した蒔風に、地面に刺さった神剣を抜いて斬りかかる青年。


が、蒔風がそこで目をガッ!と開き、その剣筋を見切って上体を逸らした。
そして素通りしていく青年の腕を横から掴み取り、壁にガンガンとぶつけてから外に向かって投げ飛ばそうと腕に力を込める。


しかし青年は投げられてしまう、というところで地面に足を付け、めり込むほどに踏ん張る。

そうして、振り回す側と回される側が反転し、蒔風の体が壁に向かって投げ飛ばされていった。



「ッッ!?オォ!!!アッッ!!!」

バフォア!!!!



壁に激突し、その先に飛ばされそうになる蒔風は、開翼して思い切り大きく羽ばたくことでその勢いを止めた。
その風で遺跡内の小石や砂が巻きあがり、青年の全身を叩いていき、目が細められた。


その一瞬、蒔風が一気に青年へと突っ込んでいき剣を振るう。



しかし

ドゴォッッ!!!


遺跡に大きな穴が開いて、そこからいくつもの刃が飛び出して行き、蒔風を外に押し飛ばしていった。


飛んできた刃は、エネルギーではなくキチンとした物質だ。

形は、鍔も柄もない。
上下のどちらもが切っ先となっている。

まるで針。
緊張感のない言い方をすると、両端を削った鉛筆のよう。


発生源は、神剣ヴァルクヴェイン。
その一振りがいくつもの刃を生み、ザァッ!!と蒔風に放たれていったのだ。


「ツッ・・・・世界四剣はどれもが「多剣」ってのは聴いていたが、こういうことか」



そういって、蒔風が右腿と左肩に突き刺さった刃を掴み抜く。

どろりと血が出てくるが、身体強化の力を回して止血する。
痛みや怪我はなくならないが、とりあえず失血はしない。





蒔風は十五天帝を分解し、「風林」「火山」だけを握って青年へと突っ込む。


青年が剣を振るい、そこから刃が掃射のように飛び出してきた。

一振るい30本と言ったところか。
それを二回、三回と続け、蒔風を落そうとする青年。


「風林火山」は演舞のように動き、手数で相手を責める十五天帝の剣だ。
バトンのように手の中で回し、旋回、上昇下降を繰り返して青年への攻撃範囲に入る。

そして思い切り振り上げ、まっすぐに二刀を一気に振り下ろした。



青年は剣を横にしてそれを受けるが、蒔風がそのまま前転するように回転し、反対側の刃を叩きつける。
その衝撃で青年の膝がぐらりと崩れ、さらに回転して蒔風が最初の二刀をもう一度叩きつけた。


蒔風にとってはそれが本命だったようで、遺跡上部にいた二人は、そのまま最下層にまで床を砕いて突っ込んで行った。



------------------------------------------------------------



土煙がはれる。
そこにいたのは、青年と蒔風の二人。



ギリギリという音がして、両者の剣がせめぎ合っているが、何もその音はそこからだけのものではない。


「こ・・・・のッ・・・・!!」

「・・・・・・」


蒔風の言葉が歯の隙間から洩れ、その剣を青年が受け止める。



「強いじゃないかい・・・だけどな、俺だってまだまだ!!!」

ドォッ!!




蒔風の背中から風が吹き出し、開かれた翼がさらに大きく開いて力を発散させていく。

翼人の最大ブースト。
その押し込む力と背中からの排出の勢いで、一気に青年を攻めようとする蒔風。


しかし



「(ガクンッ)え?・・・な!?」


突如、その翼の開き具合が小さくなった。

みると、青年が何らかの力を発揮しているかのように、その手がうっすらと光っていた。


「翼人・・・封じ!?いや、これは・・・・!!!!」

ヴゥン、ドォァッ!!


驚愕する蒔風だが、そんなことを気にしている間にヴァルクヴェインがさらなる刃を生みだして、蒔風を一気に押し飛ばす。


「世界干渉による翼人の抑圧!?こいつ「渡航者」か!?」


渡航者
世界を渡る者

科学技術などに全く頼らず、自らの力を以って世界の壁を越える者のこと。


翼人でなくとも、
そういった力を持ったものはまれに存在する。

おそらくこの青年もそういった人間なのだろう。





岩の壁を突き破り、砂の大地に蒔風が飛び出して驚愕するのもつかの間、青年がさらに剣を奮って刃を飛ばしてくる。

十五天帝を使って弾く蒔風だが、先の戦闘と今の抑圧で力が落ち、剣が次々と弾き飛ばされて手から離れていく。



そして、ついに



「うわァァァアアアアアアアアアアアアアあああ!!!!!」



蒔風が刃に埋まる。

砂漠に突き刺さっていく刃は止まることなく襲いかかり、文字どおりの剣山となって蒔風を埋めてしまった。


数秒の静寂。


そののち、剣山から腕が出てきた。


蒔風のだ。




刃が擦れ、金属と金属がぶつかる音を鳴らしながら、蒔風がその山から出てきた。



全身に切り傷があり、出血も止められない。
さらに砂漠の日射と、金属に囲まれているせいでの照り返しやこもった熱で意識が遠のいていく。



「あ・・・く・・・・ぉお・・・・・」



その蒔風に、青年が剣を構えて突出してきた。


「ッッァあ!!十五天帝ェェえええエエエァあアア!!!!」


ガシャァ!!とその刃を押しのけ、さらに傷を増やし、切り込みを深くしながら、蒔風も飛び出していった。

まるで墨をふんだんにつけた筆で描くかのように、蒔風が走った跡には血が残って行っており、そしてすぐに真っ黒な跡となって砂漠にアクセントをつけている。




集え!十五天帝!!

言葉にならない叫びを蒔風があげ、その手にすべてが集結して異形の大剣となる。


開け!!翼!!

もうこれ以上開きようのない翼に発破をかけ、さらに開こうとする蒔風。
しかし、翼は力を発揮しきれていない。



そして



ガキィッッ!!

剣がぶつかり合う。
その一撃で、蒔風の手から十五天帝がはじけ飛んで遠くへと消える。



ズッッ

神剣が蒔風の右肩に切れ込みを入れ


バァッ!

そのまま左腰にまで振り抜かれた。



ザラァッッ!!

そしてその後を追うようにしていくつもの刃が全く同じ部分を切りつけていった。
後続の刃が斬り、そしてまたその後続が、後続が、後続が、後続が



「ごフッ・・・・」


蒔風の体が、ズシャリと地面に落ちた。

力なく開かれた腕
握られた拳がほどけ
膝がもう体重を支えていられない


血が思ったより出ないのは、もうすでに出しようがないからだ。




《連れて来なさい》




青年の首輪から、そんな声が聞こえてきた。


蒔風に、青年の腕が伸びる。




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「受けきれんのか!?」

「無理だね」

「逃げられるか!?」

「無理」


ランサーの言葉に、フェイトが立ちつくして答える。

圧倒的な魔力。
この内戦での魔力がすべてこの化け物に集まっている。


いくら優れているからといって、個人が太刀打ちできる魔力量をすでに超えている。

阻止しようにも、猛撃で止められる。
逃げようにも、回避しようにもその範囲が広すぎる。



もしも、これを相手にできるとしたらそれは




「じゃあ、あの魔力奪ってやろっか?」




人の範疇を越えた翼人(モノ)だろう。




「は!?」

「か、一刀!?」



二人の背後に現れ、声を発した男。


蒼青の翼人、北郷一刀



その彼が、手にレイジングハートを握ってその矛先をG4に向けた。


「絆で借りたこの力で」


ゴォ・・・・


「どっちの集束が強いか、勝負だ!!!」



そして彼もまた、集束を始める。

頼りになる戦力が、やってきてくれた。



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「!?」

ドンドンドン!!
ザァッ!!



青年が蒔風に腕を伸ばし、直後にその腕が弾かれたかのように阻まれた。
さらにその場に魔法弾が飛んで来、青年がそこから下がる。



「大丈夫ですか!?」

「舜さんを・・・ここまで・・・・・!?」



飛んできた弾丸は、ルネッサによるシルバーダガーからのもの。
驚愕の声は、倒れる彼の頭を抱えあげたティアナのものだ。




「用事が済んだので来てみたら・・・・」

「一刀に一緒に来てもらって正解だったみたいね」



薄れる意識の中、蒔風が口を動かす。



「や・・・めろ・・・・」



しかし、彼女らには届かない。

彼をここまで追い詰めた敵に、立ち向かうことがどういうことかは十分わかっている。



だが、だからと言って引けるものか。
目の前の犯罪は、そしてもしかしたら保護すべきであろう対象を、見逃すようならば執務官にはならない。



「私の恩師かつ元教官にここまでして、許せないわね」



クロスミラージュを構えるティアナ。
蒔風に防護バリアを張るルネッサ。




頼りになる戦力が、やってきてくれた。




しかし、勝ち目はあるのだろうか。



to be continued

 
 

 
後書き

久しぶりに蒔風ボロボロシーンを描いて楽しかったです!!


さて、今回出てきましたるは「神剣・ヴァルクヴェイン」

設定をば書きますと


特性としては「癒し・浄化」の力を持つ剣。
しかしやはりそこは世界四剣ですから、強力であることは変わりありません。

認識としては「治癒も、浄化も、あるんだよ」ということです。
出来る、というだけでそれだけでないんです。

そしてその力は「多刃」です。
振るえば矢のようにいくつも飛んでいき、斬りつければその後からも連続して切る。

どちらも戦闘で使ってましたね。



世界四剣はどれも「多剣」である、というのは


十五天帝・・・見たまんま、十五剣一対の剣
エクスカリバー・・・強力な一本の光線→一つにまとめ上げた一撃
ヴァルクヴェイン・・・振れば多くの刃を生む


ということです。


ちなみにまだ出てきていない一本は

???・・・その名を冠し、特性も同じ剣(同一のものではなく派生剣)がある。

ということです。


仮面ライダーみたいな感じですね。
いくつも有りますが、その大元が四剣になっているのですな。





さて、助けに来たのは一刀にティアナ、ルネッサ。

彼らは勝てるのだろうか!?



次回、戦闘終了・・・まで持っていけるといいなぁ

ではまた次回

 
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