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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  街日和


「♪いっま~ひとりひとりのむっねっのっなっか~」


そんな歌を小声で歌いながら、蒔風が車を走らせる。
車はワゴンタイプ、中は結構広い。


助手席には矢車が座っており、後部座席に右からキャロ、エリオ、影山の三人が座り、一番後ろの座席でフリードが羽を休めて寝ている、と言う感じだ。




これから向かう町は、一つの道に店が集まり、そのまま大きくなったような町である。

一つの荒野を走る街道に、一つの店が立ち、その後、その後と立ち並んでいき、やがて膨れて行って街になったらしい。
今ではもうそんなことも気にならないくらいの街になっており、立派なものになっている。

ここ数十年でさらに発展したようで、ここら周辺では真っ先に挙がる街だそうだ。




「そんな街で何かあればすぐに・・・・・なぁ?」

「ああ、そんなところで大きな事件があれば俺たちじゃなくても警察が気付く」

「こりゃ完璧に小旅行になったかもなぁ・・・・」



軽く苦笑しながら、蒔風が矢車と話しながら車を走らせる。




「エリオ、お前背ぇ伸びたな?」

「最近じゃ買った服がすぐに着れなくなって大変で・・・」

「エリオ君は私の成長養分を全部吸い取ってるんですよ」

「納得」

「そんなことないですってば!」




後ろからはそんな会話も聞こえてくる。


あはは・・・とまた少し笑い、蒔風がアクセルを踏む。
周囲に車はなく、ただ一本道がそこにあった。




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「・・・・ポイントを通過。このままだと街に入る」

『旅人か?』

「モニターからは複数人が車の中から確認できました」

『家族か友人同士か・・・・ま、いつも通りにやるだけだ』




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キィッ




車のタイヤが地面を少しだけ擦り、街の入り口で停車する。


聞いていた通り大きな街だ。


と言っても大きなビルなどがあるわけではなく、どれか一つの屋上にでも立てば街の端がぼんやり見えるくらいの高さしかない。
本当に店が集まり、そこに住む人の家が集まり、といった街なのだ。

一つの大きな、それでいてやはり同じような高さの建物。
それはある機関の研究施設らしく、そこが入ってきてからこの街はさらにここまで大きくなったらしい。



そしてその街の周囲には等間隔―――大体十メートルずつ―――に、標識のポールくらいの鉄棒が立てられ、ぐるりとまわりと囲っていて、その上がリング状の同じような鉄棒で繋がっていた。



「なんだろうな、これ」

「さあ・・・・」


柵にしては間隔があきすぎだし、造形物としては訳が分からない。
まあ、芸術(アート)だというならわからなくはないが・・・・




「あれ?外の人ですか?」



と、そこに一人の少女・・・・というには少し年を取った感じだが、女性というほど年も取っていない、そんなくらいの女性が話しかけてきた。


まあ、気にはなるだろう。
街に入らず車を止め、街を囲むそのポールをしげしげと眺めている一団なんてものは。


こんな街だから外から来る人はそうそう珍しくないのだろうか、結構あっさりと話しかけてきたその少女に、蒔風がフランクに話しかけて行った。


「ああ・・・そそ、外の人。こんなところに町があるって聞いてさ、友達と一緒に遊びに来たんだ・・・・っと、こんなところってのは失礼だったね」

「いえいえ、まあ確かにそうですよね」



蒔風の言葉にもカラカラと笑って受け答える少女。
少しだけ親しくなってから、蒔風がポールに手を当てて彼女に聞く。


「これ、なんなの?」

「これですか?昔この街ができた時、この辺には大きな鳥・・・まあ怪鳥ですね、がいたらしいんです。で、それ対策に上から頑丈なネットを垂らして、街全体を覆っちゃったらしいですよ」

「は~~~、つまり大きな蚊帳、ってことか」

「そうなりますね。まあ使ってたのは昔らしいですし、私が生まれる前にもう来なくなったらしいですね。そのおかげでここまで街も大きくなりましたし」




そんな話をした後に、蒔風がこの街にホテルやらなんやらはないかと聞くと、ちょうどいい場所を教えてもらったのでそこに向かう蒔風達。

車に乗って、街の中に入る。



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教えてもらったホテルにチェックインし、街に繰り出す。


かなり賑わった街だ。
こうして中にいると、ここが荒野にある街とは思えない。



影山や矢車も街を見たいと言ってくるので、蒔風はホテルの前にバイクを三台出した。

結構前にアリスからもらったものだが、問題はないだろう。
メンテナンスは欠かしていないはずだ。



「んじゃ、またあとで」

「じゃあ俺はこっちの方を見てくる」

「俺もだ・・・少し気になるところがあってな・・・」


そう言葉を交わし、二人が別々の方向へと走り出す。
それを見届けてから、蒔風は自分のバイクにサイドカーを取り付けてそこにキャロが座れるように準備しておく。


「ふんふふ~ん♪」

「あっちの方でパレードやってるみたいですよ?」

「おっ、そりゃぁ運がいいな。見ていこっか?」

「「はい!」」




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「これは・・・すごい人だなぁ・・・・」

「キャロ、俺かエリオにしっかりつかまっとけよ?」

「ふ、ふぇえ・・・・」



そこは確かにすごい人だかりだった。
大きな広場の真ん中で、大道芸人が五人くらい、互いに背を向けながらそれぞれの技を披露していた。

更にその広場の周囲では出店もあって、珍しい外の人だからと言って三人は実にいろいろなものをごちそうしてもらっている。


「いやいやダメだって。お金払いますって!」

「そうですよ!こんなたくさんもらっちゃっても・・・・」


「がはは!!大丈夫だ!みんな一個ずつしか出してねぇんだ。それぞれの出費はそんなデカかねぇわな!!」



それでもお金を払おうとする蒔風やエリオだが、お好み焼き屋台のおッちゃんはそう豪快に笑って受け取ってくれない。

キャロなんかは差し出されるお菓子を断れず、ドンドンもらってしまっている。
さっきついに一つ目に口を付けたばかりだ。


はぁ・・・と溜め息をつき、エリオと蒔風がキャロのお菓子をいくつか持ち、フリードにはリンゴ飴をあげた。



「皆も呼べばよかったですね。こんな楽しい街」

「いやぁ、それはそれで迷惑になりそうだが・・・・」



ドンチャンとさらにやかましく音を鳴らす太鼓、上がるテンション。



結局蒔風たちは全く出費することなく、その日は満腹になってしまった。




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「そっちはどうだ?」

『兄貴、やっぱり街をすっぽり囲んでるね』

「ああ、話してもらった通りだな」


そのころ、矢車はバイクで街の周りをぐるりと、ポール沿いにバイクで回っていた。



かなり大きい。
決してゆっくり走ってるわけではないが、かれこれ三時間走っても反対から来た影山の姿も見えないのだから。



と、そこで矢車が一人の少女を見かけた。
この街に来て最初に会った、あの少女だ。


バイクの音にあっちも気づいたようで、矢車もバイクを止める。



「あ、また会いましたね」

「大きな街だな・・・・中心街が騒がしいようだが・・・・」

「あ、お祭りですね。今日はみんなでワイワイと騒ぐ日なんですよ」

「そうか・・・俺も笑ってもらうとするかな・・・・・」

「え?」


「・・・いや、なんでもない。いったい何の祭りなんだ?」

「いやぁ、そういう伝統とか興味ないまま育っちゃったんで、はっきりと覚えてないんですよね、たはは・・・・」



少し申し訳なさそうに頭の後ろに片手を当てて笑う少女。

そうか、と矢車の方も返答し、街の中心に向かうことにした。




多分蒔風はそこにいるんだろうし。




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矢車も矢車から町の中心に行くと聞いて、一足先にその会場についていた。

が、三人の乗っていたサイドカーのバイクは見つけたものの本人たちが見当たらない。


おそらくこの人ごみの中にいるのだろうが、変身でもしない限り見つからないだろう。
そして、そんなことのためにいちいちするつもりもない。



「待つ・・・か・・・・ま、俺にはこんなのがお似合いさ・・・・」

「兄ちゃん!どうだい!!」



と、そういってサイドカーの隣にバイクを止め、寄りかかって三人が来るのを待つ影山に、屋台のおっちゃんが話しかけてきた。
その手には屋台で売ってるモノだろう、お好み焼きを持ち、影山に差し出してきた。


影山としてもバイクを走らせてきたため(バイクの運転は実は結構体力を消耗するのだ)、腹も減っていたからちょうどいいと財布を取り出す影山。
しかし、屋台のおっちゃんはいいといって受け取ろうとしない。

蒔風たちと同じように、外から来た人だかららしい。


そのおっちゃんのやり取りをみて、ほかの屋台の人たちも渡してくる。


当然、影山はそれに困ってしまい、どうあっても払おうとするのだが・・・



「がはは!!大丈夫だ!みんな一個ずつしか出してねぇんだ。それぞれの出費はそんなデカかねぇわな!!」



そう言って笑うおっちゃん。
そこまで言われてしまっては受け取るほかない

受け取ったものが多いので、少し離れた場所にあるベンチに座って食べ始める影山。


食いきれるかと、少し心配になってきた。




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その少し後に、矢車もその広場に到着する。
すると例によって屋台中からもらいもの。


もうお決まりになってしまった。


やはりお金を払おうとする矢車だが


「がはは!!大丈夫だ!みんな一個ずつしか出してねぇんだ。それぞれの出費はそんなデカかねぇわな!!」


そう豪快に笑われてしまう。



と、そこに合流する蒔風たち。


途中で影山も拾ったようで、お腹いっぱいで動けない彼を担いでいた。



「お前ももらったのか」

「ああ・・・・ここの住人は眩しいぜ・・・・」

「でも・・・・」

「こんなに食えねぇ・・・」



とりあえず晩飯代は浮いた。

そう考え、五人と一匹はホテルへと戻って行く。




その後、矢車、影山、蒔風の三人は、この街に対する印象について話し合っていた。



特に何もない。

皆平和に、楽しそうに暮らしている。



一応町役場にも行ったらしいのだがなんてこともないし、あの電話の声はこういった祭りの準備をしていた時の掛け声かなんかだったのだろう。




そういう結論に終わった。




「じゃあ明日チェックアウトして、帰るか」

「だな」

「ああ」




そう言い合って、就寝する三人。










こうして、夜の闇が訪れる。








この街は、何かがおかしい






to be continued
 
 

 
後書き
街の様子はいたって普通だぁーーーー!!
街日和でございまっす!!


読者視点から見ると、何やらおかしな点がいくつかあるかも?


ぬふふ


矢車
「今オレを笑ったなぁ?」

げぇっ!?矢車さん!?




・・・ライダーキック中・・・




今回、イメージして書いたのは「キノの旅」です。

「キノ」って変換しようとしたら「鬼の」って出てきた・・・
なにこれ怖い。



楽しそうな街ですが、一体何があるのかは次回から!!

一気にこの理想の街が崩れていく・・・・・




では、また次回をお楽しみに!

 
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