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真田十勇士

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巻ノ九十 風魔小太郎その十三

「わしも退屈しておった」
「そうなのですか」
「山奥にずっとおるからのう」
「だからですか」
「それはよい、しかし」
「約束のことは」
「それは何かというと」
「申し訳ありませぬが」
 言えぬとだ、幸村は風魔に断った。
「それは」
「そうか、しかし貴殿がそこまで果たそうとする」
「そうした方との約束です」
「そうなのじゃな、ではその約束はな」
「必ずやですな」
「果たされよ」
 こう幸村に言うのだった。
「是非な」
「そうさせて頂きます」
「さもなければじゃ」
「はい、それがしはですな」
「真の武士ではない」
「幾ら強くなろうとも」
「やはりそこに心がなければじゃ」
 幾ら武芸の腕があろうともというのだ。
「所詮はな」
「その通りですな」
「まあ只の忍のわしが言うのも何じゃが」
 それでもとだ、風魔は笑って述べた。
「だからな」
「それではですな」
「そうじゃ、その約束を果たされよ」
「何としても」
「そしてじゃ」
「真の武士にですな」
「なられよ、わしもそう願う」
 風魔にしてもだ、彼はここでも幸村だけでなく由利に対しても微笑み話した。
「貴殿達ならばと思うからこそな」
「約束を果たし」
「真の武士、忍になられよ」
「さすれば」
「あくまで義に生きられ」
 そうしてというのだ。
「そうなられよ」
「さすれば」
「うむ、ではな」
 ここまで話してだ、そうしてだった。
 三人で猪鍋を最後まで食べてだった、この日はそのまま寝て朝になるとまた修行だった。そうした日々が続いていた。
 昌幸は幸村達が修行に出ているのを知っていた、しかしこのことについては咎めず共にいる股肱の臣達にこう言った。
「よいな、源次郎達はずっとじゃ」
「はい、こちらにおられますな」
「そして静かに過ごされていますな」
「実に穏やかに」
「そうされていますな」
「そうじゃ」
 そういうことにする様にというのだ。 
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