ドリトル先生と悩める画家
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第五幕その五
「早く描いてくれって」
「絵がだね」
「そう言っている様に思えて」
「絵が君に訴えかけていた」
「そうでした」
「日本の信仰だね」
先生は太田さんがそう感じた理由を察してです、太田さんご自身にお話しました。
「それは」
「神道ですね」
「うん、精霊信仰に近いあらゆる存在に神や魂が宿る」
「絵にもですね」
「実際に絵が君に訴えかけていたんだろうね」
「絵に心があって」
「キリスト教では神がそうされるけれどね」
神があらゆるものに存在しているからです、神々ではなく神というキリスト教の考えも踏まえてのお話です。
「神道ではそうだね」
「絵に宿っていた心が僕に訴えかけてくれて」
「君はその絵を描けたんだ」
「そしてその時にです」
まさにというのです。
「僕は一度描きはじめた絵はです」
「最後までだね」
「描く様にしています」
例えスランプの中でもというのです。
「それも描けるなら立ち止まらずに」
「描いていくんだね」
「最後まで」
まさにというのです。
「そういう風にしています」
「じゃあ今の絵は」
「また霧が晴れたら」
その時はというのです。
「描くよ」
「そうするんだね」
「そうします」
「そして今は霧の大学の中を観て」
「スランプを抜け出られたらって思ってます」
こう先生にお話しました。
「そのヒントを得て」
「ヒントはあらゆる場所にある」
「そうですよね」
「うん、学問にしてもね」
またこちらからお話する先生でした。
「思わぬところでヒントを得たりするからね」
「そうですよね」
「ニュートンとかね」
先生はお国の偉大な物理学者の名前も出しました。
「あの人も万有引力の発見はね」
「林檎ですね」
「そう、林檎が木から落ちるのを見てね」
「そこからヒントを得ましたね」
「そうだよ、だからね」
「ヒントはですね」
「あらゆる場所にあるんだ」
まさにというのです。
「芸術についても」
「学問と同じで」
「そう、だから君の今の行動もね」
「いいですね」
「そう思うよ」
太田さんにです、先生はにこりと笑ってお話しました。
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