英雄伝説~灰の軌跡~
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外伝~メンフィル・エレボニア戦争の和解調印式~ 第5話
~グランセル城・会議室~
「……シルヴァン陛下。メンフィル帝国がエレボニア帝国の内戦に介入し、内戦を終結させると仰いましたが具体的にはどのような方法で内戦を終結させるのでしょうか?やはりメンフィル帝国軍でエレボニア帝国全土で反乱活動を行っている貴族連合軍を制圧するのでしょうか?」
「まあ、貴族連合軍”如き”我が軍を介入させれば2~3日もあれば、制圧する事は可能だが、仮にもメンフィルはエレボニアと和解する事になるのだから、世間から見ればメンフィルは和解条約を破り、エレボニア侵略を続けていると見られるような露骨な真似はしない。」
「ではどのような方法で内戦に介入するのでしょうか……?」
エルナンの質問に答えたシルヴァンの話を聞いたアリシア女王は質問を続けた。
「我が国の少数精鋭部隊がアルフィン皇女を”大義名分”とし、エレボニア皇家の専用艦――――”紅き翼カレイジャス”を運用しつつ正規軍を指揮下に置き、貴族連合軍を制圧する。――――それが我が国によるエレボニア帝国の内戦終結の方法だ。」
「え……………」
「ええっ!?アルフィン殿下を”大義名分”に……!?何故そのような事を………」
シルヴァンの答えを聞いたアルフィン皇女が呆けている中驚きの声を上げたクローディア姫は困惑の表情をした。
「アルフィン皇女殿下は帝位継承権をお持ちになられているエレボニア皇族。貴国が開発を手伝った”紅き翼カレイジャス”の所有者は”アルノール皇家”。現エレボニア皇帝であるユーゲント皇帝陛下と第一帝位継承権を持つセドリック皇太子殿下が貴族連合軍によって幽閉されている以上、現状正規軍を指揮下に置いて貴族連合軍を制圧する”大義名分”になる事ができる人物はアルフィン皇女殿下のみ。そしてカレイジャスを運用する為に必要な人物はカレイジャスの所有者であるエレボニア皇家の方が必要となってきます。」
「ここにいる者達も知っての通り、カレイジャスはエレボニア皇家の専用艦として世間に広く知れ渡っている為こちらの正当性を証明しやすい。そしてオリヴァルト皇子は帝位継承権を所有していない為、カレイジャスを運用する事はできるが正規軍を従わせる”大義名分”にするには厳しいからな。よって、現状内戦を終結させる鍵となる人物はアルフィン皇女、貴女だけだ。」
「わたくしが…………」
「お、お待ちください!それはつまり皇女殿下を再び内戦に関わらせて、以前のように拉致される事や直接危害を加えられる可能性があるという事ではありませんか!皇女殿下を再び貴族連合軍の魔の手にかかる可能性があるのですからエレボニア帝国としてそのような事、承認できません!」
セシリアとシルヴァンの説明を聞いたアルフィン皇女が呆けている中ダヴィル大使は血相を変えて反論した。
「―――”皇族”とは国の有事の際には先頭に立って、兵達や民達を導く事が”義務”だ。ましてや内戦は国内の戦争なのだから、皇族が内戦を終結させる”義務”が発生する。まさかダヴィル大使はアルフィン皇女に”皇族の義務”を果たさせないつもりか?」
「たたでさえ内戦でエレボニアの民達のエレボニア皇家に対する信用は落ちている事に加えて今回の我が国とエレボニアの戦争で、エレボニア皇家の権威が地の底まで落ちていると言っても過言ではありません。そこに帝位継承権を持つアルフィン皇女殿下が内戦で”エレボニア皇族の義務”も果たさなかったと、エレボニアの民達に加えて世間にも知られれば、エレボニア皇家の権威の回復はもはや不可能なレベルまで落ちる可能性が高いと思われますわよ。」
「そ、それは……………」
シルヴァンとセシリアの説明や忠告に反論できないダヴィル大使は顔色を悪くして答えを濁し
「”皇族の義務”をわかりやすい例にあげれば、そちらのクローディア姫が一番わかりやすい例だな。」
「え…………それはどういう事でしょうか、シルヴァン陛下。」
シルヴァンに突然名指しされたクローディア姫は呆けた後戸惑いの表情で問いかけた。
「フッ、何をとぼけた事を。クローディア姫は若干16歳でありながら、2年前に国内に起こったアラン・リシャール大佐率いる”情報部”によるクーデターを未然に防ぎ、その半年後に起こった”異変”発生時には”異変”の解決の為に自らアルセイユに乗り込んで”異変”の原因である浮遊都市を攻略、そして”異変”の元凶である結社”身喰らう蛇”の使い手達と死闘を繰り広げるという”リベール王族の義務”を果たしたではないか。」
「…………………」
「それは…………ですが、”異変”もクーデターも私一人の力では決して解決する事はできませんでした。エステルさんやユリアさんを始めとした多くの人達が協力してくれた事によって、クーデターも異変を乗り越える事ができたのですから、エレボニア帝国の内戦とは状況があまりにも違いすぎます。」
シルヴァンの話にアリシア女王が重々しい様子を纏って黙り込んでいる中複雑そうな表情で答えを濁していたクローディア姫はすぐに立ち直って、シルヴァンに指摘した。
「そうだ。クローディア姫の指摘通り例え皇族とはいえ、皇族も一人の”人”。人一人の力はたかが知れてる。だから、エレボニアの内戦を確実に終結させる事ができる”協力者”をメンフィルが用意してやると言っているのだ。」
「それと内戦に介入予定となっている我が国の少数精鋭部隊はその気になれば、貴族連合軍の全軍とぶつかり合っても互角に渡り合う所か圧倒できる戦力ですから、アルフィン皇女の身の心配は無用ですよ。」
「なあっ!?」
「僅かな人数で”軍”を圧倒できる等、常識で考えればありえないと思われるのですが………」
「僅かな人数で軍を圧倒……………―――!ま、まさか……その少数精鋭部隊にはエヴリーヌさんのような”魔神”の方もいらっしゃるのですか……!?」
シルヴァンの説明を補足したセシリアの説明を聞いたダヴィル大使は驚き、カラント大司教が呟いた言葉を聞いてある事に気づいたクローディア姫は驚きの表情でシルヴァン達を見つめた。
「―――セシリア、”特務部隊”のメンバー構成表を全員に配ってくれ。」
「かしこまりました。」
そしてシルヴァンの指示に頷いたセシリアは鞄から新たな書類を出してその書類をアルフィン皇女達に配った。
メンフィル帝国軍”特務部隊”
リィン・シュバルツァー特務准将(総大将)
ステラ・ディアメル特務大佐(副将)
フォルデ・ヴィント特務大佐(副将)
レン・H・マーシルン皇女(参謀)
セシリア・シルン将軍(参謀補佐兼メンフィル皇帝名代)
サフィナ・L・マーシルン元帥(総大将並びに副将補佐)
エリゼ・シュバルツァー男爵(特務隊員兼アルフィン皇女付き臨時専属侍女)
セレーネ・L・アルフヘイム子爵
プリネ・カリン・マーシルン皇女
ツーヤ・A・ルクセンベール准将
レオンハルト・ベルガー大佐
アルティナ・オライオン特尉
魔神エヴリーヌ(客将)
鳥人ペルル(客将)
精霊女王フィニリィ(客将)
魔神アムドシアス(客将)
幻獣パラスケヴァス(客将)
魔神ベルフェゴール(客将)
メサイア・シリオス皇女(客将)
精霊王女リザイラ(客将)
女神アイドス・セイルーン(客将)
「ええっ!?リ、リィンさんやエリゼさん達も内戦に介入するメンフィル帝国の精鋭部隊のメンバーなんですか……!?」
「し、しかもプリネさんやツーヤちゃん達までエレボニアの内戦に介入するメンフィル帝国の精鋭部隊のメンバーだなんて……!」
「………メンフィル帝国は一体どのような基準で、このメンバーを選出したのでしょうか?」
セシリアが配ったメンバー表を見たアルフィン皇女とクローディア姫は驚きのあまり声を上げ、アリシア女王は真剣な表情でシルヴァン達に問いかけた。
「私の名代であるセシリアを除けば全員和解条約で得る事になる新たなメンフィル帝国領――――元エレボニア帝国の領土を治める事になる領主やその関係者達だ。よって、将来”元エレボニア帝国の領土を治める事になる”彼らはエレボニアの内戦に介入する”権利”がある。」
「”魔神”1柱でも”国”を滅ぼす事ができると言われています。その”魔神”が3柱いる事に加えて女神が1柱、精霊の王族が2名、そして竜族が2名と、その気になれば一日でエレボニア帝国全土を焦土と化する事ができるのですから、このメンバーならば確実に貴族連合軍を制圧し、内戦を終結させる事ができます。」
「特にクローディア姫やユリア准佐は”異変”や”影の国”でエヴリーヌ達―――”魔神”や”神”の”力”を間近で見ているのだから、我々が言っている事は冗談やでまかせでない事は理解しているだろう?」
「エヴリーヌさん達の実力は勿論理解しております。だからこそ私にはわかるのです!”魔神”や”神”――――”超越者”達の”力”が戦場で振るわれる事になれば、例え相手がどれだけ数を揃えようとも”超越者”達による”虐殺”同然の一方的な戦いになる事に……!」
「…………殿下…………」
セシリアの後に問いかけたシルヴァンの問いかけに同意したクローディア姫は表情を青褪めさせて声を上げ、クローディア姫の気持ちを理解していたユリア准佐は辛そうな表情でクローディア姫を見つめていた。
「横から口を挟むようで申し訳ありませんが、私は単騎で軍を圧倒する等ありえないと思っているのですが………」
「まあ、ゼムリア大陸の者達は魔神等”超越者”が持つ圧倒的な”力”を見た事もないのに理解しろと言われても理解できないだろうな。―――アリシア女王、プロジェクターを用意してもらっても構わないだろうか?」
「構いませんが……一体何に使うのでしょうか?」
カラント大司教の指摘に頷いたシルヴァンはアリシア女王に視線を向け、視線を向けられたアリシア女王はシルヴァンに訊ねた。
「今回の戦争の屋外での大規模戦闘は全て録画してある。そしてそのデータの中に内戦に介入する我が国の精鋭部隊の一部の者達の活躍もある為、その部分だけ抜き出したデータを今ここでこの場にいる者達に見てもらい、我が国が選抜した精鋭部隊がいれば、貴族連合軍等”烏合の衆”である事を理解してもらう為だ。」
「………わかりました。すぐに用意をさせます。」
その後アリシア女王の指示によってプロジェクターが持ち込まれ、セシリアは持ち込まれたプロジェクターにデータディスクを入れて操作をした。するとケルディック街道でのエヴリーヌ達の圧倒的な戦いの様子が映った!
「こ、これは………!?」
「き、”貴族連合軍”がたった3人に圧倒されている………!?」
「し、しかもレン皇女殿下達は生身で戦車に加えて貴族連合軍の新兵器である”機甲兵”をも苦も無く破壊していますわ……!」
「これが”魔弓将”の”本気”と言う訳ですか………」
映像を見たカラント大司教やダヴィル大使、アルフィン皇女は信じられない表情をし、エルナンは重々しい様子を纏って呟いた。
「いや、あの様子では半分どころか10分の1の力も出していないだろう。エヴリーヌが本気になれば大規模な魔術や奥義で言葉通り”瞬殺”できるだろうからな。」
「なあっ!?あ、あんな圧倒的な戦いを繰り広げていながら”本気”を出していないのですか……!?」
シルヴァンの指摘を聞いたダヴィル大使は驚きの声を上げた。そして映像は変わり、オーロックス砦でのリィン達の戦いが映った。
「ええっ!?リ、リィンさんやエリゼさんまで生身で機甲兵や戦車を破壊するなんて……!」
「あの凄まじい雷撃のエネルギーを放った蒼銀の髪の女性は恐らくミント君やツーヤ君のように成竜と化したセレーネ君でしょうね………」
「……リィンの”八葉一刀流”の伝位は”中伝”でしたが、あの様子だと今の彼は”皆伝”同然の実力を持っていると言っても過言ではありませんな。」
「あ、あはは………カシウスさんの言う通りおじいちゃんが今のリィン君の実力を見れば間違いなく”皆伝”を与えて”剣聖”の名乗りを許可するでしょうね………」
「実力は”剣聖”クラスで、契約している異種族達の強さもとんでもないとか、あらゆる意味で今のエステルとそっくりね………」
「……確かに彼らのような凄まじい実力を持つ者達ならば、少数でも貴族連合軍を制圧できるというシルヴァン陛下のお言葉にも納得できますね………」
リィン達も生身で機甲兵や戦車を破壊した事にクローディア姫は驚き、ユリア准佐は映像に移っているセレーネが成長したセレーネである事に気づき、真剣な表情で呟いたカシウスの推測にアネラスは冷や汗をかいて苦笑しながら同意し、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、アリシア女王は重々しい様子を纏って呟いた。
「―――今の映像を見てもらえば、理解できるだろう?メンフィル帝国が選抜したエレボニア帝国の内戦に介入し、終結させる精鋭部隊の”力”ならば数が少なくても貴族連合軍を制圧できる事も可能であると。」
「そ、それは…………」
「………………」
シルヴァンの問いかけに対して反論できないダヴィル大使は答えを濁し、アルフィン皇女は複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「――ああ、それと。先程口にしたオリヴァルト皇子に協力している士官学院生は確かトールズ士官学院の特科クラス”Ⅶ組”だったか。”Ⅶ組”に関しては直接特務部隊の指揮下に入り、特務部隊による貴族連合軍を制圧する作戦の補助をしてもらう予定だ。」
そしてシルヴァンはアルフィン皇女にとって驚愕の事実を口にした。
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