艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第十一話
前書き
どうも、今回はほとんど艦これ要素ありません。
「成る程、では長門と金剛には謹慎三日の懲罰を課す。全く、なんでアイツらは酒が入るとすぐに喧嘩始めるかな……。」
と、提督は遠い目でそう言った。
あれから、木曾があの二人をフルボッコにし、現在その後片づけ。俺は提督の所に今回の一連の流れを報告しに来ていた。
しかし、始めての上司への報告が喧嘩って……。
「いやー報告ご苦労様。それで、今日一日どうだった?」
提督は何やら書類を書きながらそう聞いてきた。いや、なんで手元を見ずに書けるんだ?
「なかなかキツかったな。ぶっちゃけ神通さんの訓練はもう二度と受けたくない。」
「ま、それでも初日に神通の訓練受けたら大体の艦娘は直ぐに実戦参加できるからね。いい教官だよ。」
それは訓練を受けながら思った。確かにキツくはあるのだが、教え方が上手なのか、それなりには上達したと思う。
「ま、その内出撃して貰うことになると思うから、しっかり準備しとくこと。あーそうそう。」
と、提督は話題をかえた。
「君の親族から荷物が届いてるよ。多分私服とかくじゃないかな?部屋に置いてあるから、帰ったら見てくれ。それじゃ、もう行っていいよ。」
ほほぅ、親父達からの荷物か。それはありがたいな。
んじゃ、片付けの手伝いにでも戻りますかね。
「んじゃ、失礼した。」
そう言って部屋から出た。
―遊技場―
俺が遊技場に戻ってきたときにはもう既にほとんどの片付けが終わっていた。机はしまわれて、散らばった酒ビンも食堂に移動させられていた。
「お疲れー。提督はなんて?」
俺が部屋に入ってきたことに気づいて、木曾が話し掛けてきた。
「あー、長門さんと金剛さんは謹慎三日だってさ。」
「俺には?」
と、少し心配そうな顔をして聞いてきた。
「何も聞いてないよ。良かったな。」
すると、木曾はホッとした顔をした。
「あー良かった。たまに俺も謹慎食らうからな。」
まてぃ。前にもこんなことあったのかよ。おっそろし過ぎるわ。次からこんな場が設置されたら主役の人に挨拶だけしてさっさと自分の部屋にでも戻ろうかね。
「んじゃ、もう仕事も無いっぽいし、部屋に戻るか。」
「あー、待て。」
俺が自分の部屋に戻ろうとこの部屋を出ようとすると、木曾に呼び止められた。
「ほれ、これ。部屋ででも飲みな。」
木曾が渡してきたのは、一本の日本酒だった。ラベルには、『海色』と書かれていた。
「え、いいのか?」
そう聞くと、木曾はニヤリと笑って言った。
「俺の親父がな?日本酒は静かに飲むのが一番旨いらしいんだ。だからほれ、持ってけ。」
と、木曾は半ば強引に俺に日本酒を渡した。
「んじゃ、俺も自分の部屋に戻るわ。そいじゃ、また明日な。」
そう言うと、木曾は遊技場から出て行った。
「…………まぁ、たまにちびちび飲むかな。」
俺は酒ビンを持ったまま、遊技場を出た。早いとこ自分の部屋に戻って荷物の整理でもするかね。
「しっかし、本当にここは深海棲艦と交戦中なのかね……。緊張感の欠片もねぇな。」
今日一日ここの連中の動向を見ていたが…………どーも連帯感がないと言うか……寄せ集めな感じが拭いきれない。
まー年頃の女の子達が集まってる訳だし、ある程度は仕方ない……のか?
「考えても無断だよな……。」
俺はそこで考える個とを止めて、自分の部屋に急いだ。
―自室―
俺はなんとか自分の部屋にたどり着けた。……うん、道に迷った。遊技場を出てからここまで二十分は掛かった。
「今度誰かに地図でも描いて貰おうかねぇ。」
俺はそう呟いて部屋に入った。すると、部屋の真ん中にあるドラム缶の前に段ボール箱が三つ、デカイの、中くらいの、少しちっせぇのとあった。
……なんで一つに纏めなかったのか。
俺はそこに疑問を感じたが、一番大きいのを開ける事にした。
中には、俺が家で着ていた私服だったりといった、日用品が入っていた。……いや、ということは残りの二箱はなんだよ。もう既に欲しいもの揃ったんだけど?
俺は疑問に思いながら、中くらいの箱を開けた。
「……バスケットボールとバッシュ?」
そこには、俺がずっと使ってきた傷だらけのバスケットボールとボロボロになったバッシュ(バスケのシューズ、略してバッシュ)が入ってあった。
「……ここでもバスケしろってか?全く……こりゃ親父の仕業だな。」
この粋な計らいは絶対親父だな、と思いながら、バスケットボールはベッドの上に、バッシュは机の上に飾っておいた。
「んじゃ、後はこの箱……って待てやおい。」
俺は最後に残った箱に貼ってある紙に書かれてる住所を見て、危機感を覚えた。
それは俺の友人その二である長谷川 拓海の家の住所だった。
「……なんであいつから荷物が届いてんだよ。」
でもまぁ、悠斗からじゃなくて良かった。アイツなら絶対なんかおかしなモン入れるからな。
俺は少し気を緩めて箱を開けた。
そこには、人の生首とおぼしきものが入っていた。
「のわぁああああああああ!?」
俺は思わず後ろに後ずさって、そのまま後ろに置いてあったドラム缶に頭をぶつけた。この二日間で何回くらい頭をぶつけただろうか。
まぁそれはさておき、今はこの生首だ。……いやまぁ、当たりは付いてるんだけどさ。
「やっぱり……これ、ゴーゴンさんじゃねぇかよ……!」
その生首は、如何にも作り物といった感じの目や顔付きをしていた。
これは、拓海の実家が美容院だから、その練習に使う物だ。色々なあだ名がつけられているらしいが、俺達はこれをゴーゴンさんと名付けていた。
「んで、ゴーゴンさんと……こりゃ、ICレコーダー?」
箱の中にはゴーゴンさん以外にもうひとつ、ICレコーダーが入っていた。
「……ファイルは一つしかねぇな。取り敢えず聞いてみるか。」
俺は自前のイヤホンを挿して、そのファイルを再生した。
『うーい!どうだー千尋ー、元気してるかー!?』
『いやいや、悠斗…そんなに大声出さなくても聞こえるって。』
『いやー、なんかこう元気出してかねぇと俺じゃない感じだしさ!テンション上げてけ!』
『まぁ、それもそうだね。と言う訳で、久しぶりだね、千尋。なんか大変な事になったらしいね。』
『いや、大変ってレベルじゃねーだろ!あの深海棲艦と戦う事になっちまったんだぜ?そんでもしかしたら今頃怖くなってションベン漏らしてねぇか心配でこれ送ろうって事にしたんだろ?』
『そ、そこまで心配してないでしょ……?』
『おう、全く?だってあの千尋だぜー?なんやかんやでなんでもこなしちゃう千尋くんだぜ?どこ行っても大丈夫だっての!』
『ま、本当のこと言うと、そんな千尋に激励しようって事になったんだけどね。』
『これって激励できてるか?』
『いや、悠斗が言わないでよ……。』
『しっかし、名誉なことじゃねぇか!俺らのダチがあの深海棲艦と戦うってんだぜ?誇らしいだろ!』
『正直、僕は死んじゃわないか不安で仕方ないんだけどね……。』
『でもほら、な?』
『だね。』
『『千尋なら大丈夫だ、だろ?』だよね?』
『ま、そーゆーことだから俺達は全く心配してないからな。』
『むしろ千尋がそこで深海棲艦をボッコボコにしてるんだろうなってことを想像してるよ。』
『実際にボッコボコにしてたしな。』
『そうだね。』
『ういじゃま、頑張れよ!』
『もし休暇が取れたら、帰ってきて、またみんなでバスケでもしようよ!』
『そんじゃ、』
『『Good Luck!!』』
「全く……ゴーゴンさん入れてた意味全くねぇじゃねぇかよ……。」
俺は、ICレコーダーを机の上に置いて、そう呟いた。
全く……。
「あのバカ共が……頑張るしかねぇじゃねぇかよ……!」
俺は、そのまま窓辺に移動して、空を見上げた。
空には下弦の月が浮かんでいた。
後書き
読んでくれてありがとうございます。次回からは時間が飛びまして、一週間後のお話になる予定です。
それでは、また次回。
追記
リア友が「バッシュは分からねぇ」とのことで直しました。バッシュって分かんないかな…。
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