駄目親父としっかり娘の珍道中
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第82話 大事な場面に横槍を入れるときは相応の覚悟をしとかないと後で後悔しても遅い
前書き
今回と次回辺りはちょっぴりグロい場面が見られるかも知れません。
苦手な方はご注意下さい。
一難去って、また一難。とは正に今の状況を言うのだろう。
必死の攻防戦の末に桜月と同化した岡田似蔵をどうにか倒し、同じように艦内に潜入した新八達万事屋メンバー並びにヅラ、基桂小太郎。
そして銀時と共に潜入した後にはぐれてしまった鉄子と合流を果たし、後はこの艦からどうやって脱出するか、それをこれから考えようとしていた正にそんな時によりにもよって一番会いたくない奴に出会ってしまった。
高杉晋助―――
鬼兵隊の総統であり、銀時や桂と同じ攘夷戦争を戦い抜いた男。
その高杉が今こうして一同の前に立ちはだかるように姿を現した。
「どうした? 鳩が豆鉄砲を食ったみてぇな顔しやがって。そんなに俺に会ったのが驚きの事なのか?」
皮肉がかった物言いをしながらも、奴から放たれる異様な気迫に誰もが金縛りでもあったかの様な感覚を感じた。
銀時や桂の両者の額から冷や汗が流れ落ちる。
二人でさえこの有様だ。
神楽や新八など気迫に押され思わず得物を手に取り構え出している。
鉄子に至っては真っ青な顔になってしまっていた。
それだけこの男が放つ気迫と言うべきか。
むしろ殺気と言うのだろうか。
例えるならば、鋭利な刃を喉元に突き付けられたのと同じ感覚を覚えた。
そんな気迫を放つ男に誰が好意的な印象を抱くだろうか?
いや、居る筈がない。
絶対にない―――
「あれ、おじさんどうしたの?」
ただ一人、なのはを除いては・・・だが。
「おまっ、何親しげに話してんだ!?」
一同の視線がなのはと高杉の間を泳ぐ。
高杉が此処に現れたのも驚愕だが、何よりもそんな高杉と親し気に言葉を発するなのはに驚かされた。
「お前、こいつが誰か知ってんのか?」
「知ってるよ。私昨日おじさんと一緒に居たもん」
「なんだと・・・」
途端に銀時の視線が高杉に向かう。
その視線には怒りすら篭められていた。
「てめぇ・・・こいつに何しやがった?」
「何かした・・・と言ったらどうするんだ?」
「―――!!」
言葉を発する事なく、銀時は手に持っていた白夜を強く握りしめ、高杉目掛けて切り掛かっていった。
「ちょっ、お父さんストップストップ!!」
脱兎の如く飛び掛かる銀時の襟首を掴み地面に叩きつけるのは若干9歳の女の子。
そんな子に叩きつけられるとはお笑いならば爆笑必死な光景でしょうなぁ。
「ったたた・・・鼻打った! マジで鼻打った・・・ってか、何すんだよこらぁ!」
「それはこっちのセリフだよ! お父さんおじさんに何切り掛かってるの?」
「お前なぁ、こいつを見てまだ分からねぇのか? こいつは俺たちの敵なんだよ! そこに居るヅラよりも遥かにヤバい奴なんだよ! 言うなれば俺たちの倒すべき相手、ラスボスなんだよ分かるか?」
真っ赤になった鼻を抑えながら涙目を浮かべつつ熱弁する銀時。その彼の熱意が彼女に伝わったのか、目の前でなのはは首を横に振りだした。
「そんな訳ないよ。おじさんお父さんが言うような酷い人じゃないよ」
「あのなぁ、お前こいつの何が分かるってんだよ!」
「分かるよ。少なくともお父さんよりは出来た人だって事は分かるもん!」
「ふざけんな! こんな要注意人物より俺の方が出来てねぇってのか!? ないない、絶対ない! だって俺主人公だよ。主人公の俺がこんなサイコパスより酷いなんてあり得ないから」
よりにもよってなのはに言われた事が相当ショックだったらしい。高杉と言う危険人物を前にして銀時は頭を抱えてしまいたくなった。
「随分な言われようだな。お前、娘に愛想尽かされてるんじゃねぇのか?」
「黙れよ。てめぇこそのこのここんな所に出てきやがって。そんなに斬られてぇってんなら望み通りに―――」
「だからダメだってば!」
銀時の道を阻むかのように高杉の間になのはは割って入って来た。
「お前こいつがどれ程危ない奴か分かってないのかよ!? こいつの肩なんて持った日にゃぁ命が幾つあったって足りぁしねぇんだぞ」
「そんなの分からないじゃない。それにこの人はお父さんが言う程酷い人じゃないんだからねぇ! 昨日だってたくさんお話したんだしさぁ」
「何それ? お父さんの目を盗んで危ない恋に目覚めちゃったとか? ダメダメ認めませぇん。お父さんそんな恋絶対認めませんよぉ」
次第に二人の口論がエスカレートしだしてる気がする。このまま放っておくととんでもなく面倒な事になりかねなさそうな気がした。
「ちょ、ちょっと二人ともその辺にして! 今はどうやってこの船から逃げるかが最優先じゃないですか!」
「その通りだ銀時! 確かに高杉に対する因縁は俺にもある。だが、今優先すべき事はここからの脱出。それが第一ではないのか?」
「そう言うのは敵の目の前で言うセリフじゃねぇだろう。お前も随分間抜けになったもんだなぁヅラ」
「ヅラじゃない、桂だぁ!」
仕舞いには高杉にまで指摘されてしまう始末。駄目だ、今のこの面子ではこの阿鼻叫喚の空気を打開する方法がない。頼りにと思った桂でさえもこのカオスな空気に呑まれてしまっているし、神楽も神楽でそろそろ限界っぽい。鉄子に至っては余りにも唐突な展開についていけずオロオロしっぱなしと来ている。
ここは自分が動くしかない。例え可能性が低くても挑戦しなければならない。それが若さなのだから。
「とにかく、今は此処で口論してる場合じゃないんですってば! 銀さんもなのはちゃんも一旦落ち着いて下さいよ」
「バーロィ! これが落ち着いていられるかぁ! 親の目の前で手塩に掛けて育てた娘に手ぇ出されたんだぞ! 黙って見送れる訳ねぇだろうが!」
「安心しろ。手は出しちゃいねぇよ。触りはしたがな」
「よし、死ね!」
完全に目が逝っちゃったモードになり銀時が白夜を抜き放つ。もう目が完全に殺る気満々って感じになってる。
「ま、俺を殺りたいってんなら何時でも相手になってやる。だが、今回は別件で来たんでな」
「別件だと?」
「返答を聞きに来たんだよ。おめぇのガキにな」
そう言うと、高杉は目の前に居るなのはに目線を合わせるかの様にかがみこむ。
互いの目と目が交差しあい互いを見ている。
「昨日の答え、もう出たか?」
「うん、結構悩んだけど出たよ」
「そうか、じゃ聞かせてくれ」
不思議な光景だった。さっきまで殺気を放ちまくっていた高杉だったのに、なのはと会話している時だけ殺気を全く放っていない。寧ろフレンドリーな感じにも見える。
え? 何、お前ら何時からそんなに親しくなったの?
次第に銀時の中に焦りと苛立ちが募りだしていく。
「高杉、その答えってのは何だ?」
「簡単な事だ。俺と一緒に来ないか? って事だよ」
「な!!!」
それには銀時は勿論新八や神楽までもが驚愕の顔色になった。高杉と共に来る。それは言い換えればなのはを鬼兵隊に加える算段と言う事になる。
「ふざけんな! そんな事容認出来る訳ねぇだろうが!」
「てめぇの意見なんざ聞いちゃいねぇ。それに、答えを出すのはこいつだろう?」
「んなの聞くまでもねぇ! もし仮にてめぇの元に行くって答えを出したとしても、そん時ぁ首根っこ引っ掴んででも連れ戻す!」
「随分大層な事言うじゃねぇか。あいつをその手で殺しておきながら」
「!!!!」
あいつ?
高杉が言うあいつとは一体誰の事なのだろうか。
新八や神楽にはわからなかった。多分桂には分かるのだろう。一応銀時の過去を知っている数少ない人間なのだし。
「忘れたとは言わせねぇ。あいつを殺したのはてめぇだ! てめぇのせいで、あいつは死んだんだ。あいつは、てめぇを守る事だけの為に全てを投げ捨ててきたってのに、てめぇはそれを仇で返した!」
高杉の怒号に銀時は答えなかった。いや、答えられなかった。
ただ、拳を固く握りしめて唇を噛む事しか銀時にはできなかった。
「てめぇにゃこいつを守る事なんて出来やしねぇ。あいつと同じように、こいつもまたてめぇは殺す筈だ!」
なのはの頭に手を乗せ、高杉は言い放つ。もしや、そのあいつとはなのはと何か関係があるのだろうか?
「誰が殺させるか! なのはは俺が今まで守り抜いてきた! これからもそうするつもりだ!」
「一端に父親気取りか? 笑わせるな。女一人守れねぇ奴がガキを守れる訳ねぇだろうが!」
「あいつとなのはは関係ねぇだろうが! あいつと・・・あいつと・・・」
言葉に詰まった。何かを言いたそうにしているのが周りに居る誰もが分かる。
銀時の肩が小刻みに震えているのが見えた。戦闘でのダメージではない。その言葉の為に銀時の体が震えてしまっているのだ。
「あいつと・・・紅夜叉となのはは関係ないだろうが!」
「やはりてめぇは何も分かってねぇんだな。紅夜叉とこいつが全く関係ない? いいや、大有りだお前には分からねぇのか?」
「何をだ?」
「言わなきゃ分からないってんなら言っても無駄だ。どの道てめぇじゃこいつを守るなんざ無理だろう。何しろ、たかだか桜月の欠片風情にそんな痛手を負っているようじゃな」
銀時の失った右腕を高杉は指摘した。それに対し銀時は黙り込んでしまった。
言われてみればそうだ。あの時岡田が使っていたのは桜月ではあったが、実際にはそれの欠片に過ぎなかったのだ。
本体ではない。
そのたかがひと欠片に腕を切られ致命傷を負わされる。高杉の言い分は間違ってはいなかった。
「おぅゴラぁ! さっきから黙って聞いてりゃ良い気になりやがって! なのはを守ってるのは銀ちゃんだけじゃないネ! このかぶき町の女王神楽様と他一名が居るアルよ!」
「他一名って何だよ!? とにかく、その通りですよ! 銀さんだけじゃない。僕達だっているんだ。決して力不足にはならない!」
「力不足? 何言ってんだてめぇら。てめぇら如き戦力の足しにもなりゃしねぇよ」
「あんだとゴラぁぁぁぁ!」
怒り狂う神楽とそれを抑える新八。そんな光景を高杉はただ冷たそうに見つめてるだけだった。
「銀時、お前なら分かるだろう。あいつの、紅夜叉がどれほど強かったかってのを?」
「あぁ、知ってるさ。あいつの強さは俺が身に染みて分かっているつもりだ」
「その通りだ。お前と言う足枷がなけりゃ紅夜叉は死ぬ事はなかった。お前が弱かったが故に、紅夜叉は死んだんだ!」
何時になく高杉が感情的になっている。普段から狂気に満ちた感じではあったが、此処まで感情的になった高杉は余り見た事がない。
それだけ、高杉にとって紅夜叉は特別な存在だったのかもしれない。かつての、銀時達が恩師と煽ったあの人と同じ位に―――
「おじさん、大丈夫?」
「ん?」
「御免ね。お父さん達って結構底意地の悪い所があるから。気に障ったんだったら御免ね」
そう言って高杉に向かい頭を下げてなのはは謝った。そんななのはを見た途端、誰もが口論をする気になれずにいた。この場の緊迫した空気の中で、彼女だけが全く別の空気を放っている気がする。
「悪かったな。お前の親父を怒らせるような事しちまって」
「気にしてないよ。お父さんは何時も誰かを怒らせてばっかりだから。だからおじさんも気にしなくて全然平気だよ」
「そうか、じゃ・・・お前の出した答えを聞かせてくれ。俺と一緒に来るか?」
高杉の問いに誰もが異を唱えたい思いだったのを堪えていた。その問いを答えるのは他でもない。なのは自身なのだから。
周りに居た誰もが彼女の出す答えを待つ姿勢になっていた。
銀時の額から冷汗が流れ落ちる。
なのはが高杉を選ぶ―――
そんな可能性が銀時の中に微かにだが宿っていたからだ。もし仮に、なのはが高杉と共に行く事を決めたとして、自分はどうすれば良い。それを体を張ってでも止めるべきか? それとも、見送るべきか?
止めたとして、なのはは自分の事をこれからも父親として見てくれるか?
考えれば考えるほど不安が募るばかり、答えなど出る気がしなかった。
1秒1秒がとても長く感じる。まるで、何時間もこのままで居たかの様な錯覚を覚える。
「あのね、おじさん。私―――」
なのはが答えを言おうとした正にその刹那だった。突如として上空から何かが降って来た。振ってきたそれは甲板に当たると炸裂し、爆発を起こし、周囲に衝撃を与えた。
「わっ!」
「何だ!?」
「ちっ!」
突然の襲撃に一同は完全に面を食らった。衝撃と爆煙、そして同時に眩い閃光が視界を塞いでいく。
恐らく閃光弾を交えて放ったと思われる。
視界が白面一色に染まり、今地面に立っているのか倒れているのかすら分からない状態になった。
「ターゲット発見! これより確保に当たります!」
『よし、ターゲットの確保を最優先としろ。残りはすべて始末しろ! 我らの計画をこの世界の奴らに悟られてはならない』
「了解」
襲撃を指示したであろう者が物陰から手腕で指示を出す。その指示の後に船内から大勢の武装した局員達が甲板に流れ込んできた。
「う・・・うぅ・・・はっ!」
ようやく意識がはっきりしたなのはは起き上がろうとする。だが、意思に反して両手が動かない。
見れば上半身を鎖状の何かで拘束されてしまっていた。
そして、周囲には見た事のない得物を携えたこれまた見た事もない服装をした連中がぞろぞろとなのはを取り囲んでいる。
「誰? あんた達誰? お父さんは? おじさんは? 皆は?」
「目標の確保に成功。回収を急ぎ頼みます」
『了解、座標を確認した。直ちに転移する』
通信を切ると、上空に無数の空間の歪みが起こる。歪みは次第に大きくなり、やがて、その巨大な歪みから複数の巨大な飛行船が姿を現した。
その総数、実に5個師団に匹敵する程の。
「船団の到着を確認。直ちにこちらと目標の回収を頼みたい。おい、そいつを抑えつけろ!」
男が指示をし、それを受け数人の局員が動けない状態のなのはに近づく。
「こらぁ! 何すんだぁ! エッチ、変態! 幼女虐待ぃぃ!」
「大人しくしろ! ったく、なんてガキだ。S級ロストロギア用の拘束バインドで拘束してるってのにこんなに暴れまわるなんて」
「まぁ、幾ら暴れたところでそのバインドを切れる訳ないだろう。上層部もなんでまたこんなガキ一人の為にこんな血眼になってんだか?」
「そんなの俺達の知った事じゃねぇよ。とにかく、他の連中に見つかると面倒だ。さっさとずらかった方が良いだろうよ。噂じゃ、この世界にゃあのアースラ隊の連中が駐留してるって話だからな」
「そりゃ面倒だ。奴らに嗅ぎ付けられたら誤魔化すのもひと苦労だしな」
周りで局員達がなにやら不穏な事を話し合っていた。
しかし、どの単語もなのはには理解出来ない。いや、厳密に言えば覚えてないだけなのだ。
少なくとも今のなのははアースラと言う単語を覚えていない。もし覚えていればそれが何を意味するのか少しは分かっただろうが。
「離せ! 離せぇぇ! お父さぁぁん! おじさぁぁん!」
「お父さん? あぁ、さっきまで一緒に居た連中の事か? あいつらならさっきの砲撃で今頃海の藻屑だろうよ。幾ら叫んだって来やしねぇよ」
「え!?」
じたばた暴れまわり騒ぎ立てるなのはをあざ笑うかの様に一人の局員が言い放った。
もしかして、さっきの襲撃はこいつらの仕業? それじゃ、さっきの襲撃のせいで皆は吹き飛ばされて―――
「う、嘘・・・皆・・・皆・・・」
「あぁ、死んだ・・・だろうぜ」
「――――――」
その言葉を聞いた瞬間、なのはの思考が真っ白になった。
死んだ。皆死んでしまった。銀時も、神楽も、新八も、それに高杉も、皆死んでしまった。
いや、殺されてしまった。
いきなりやってきた・・・こいつらのせいで―――
(死んだ・・・死んだ・・・新八君も・・・神楽ちゃんも・・・おじさんも・・・お父・・・さんも・・・皆・・・みんな・・・みん・・・な・・・・)
『―――ブチンッ!!―――』
その瞬間、何かが切れた―――
「お、やっと大人しくなったか。ようやく諦めがついた―――」
動かなくなり安心しきった瞬間、一瞬にしてなのはの近くに居た局員達の視界は見えなくなった。
いや、最早見る事などないだろう。
何しろ、そいつら全員頭部が無くなってしまったのだから。
「どうした!?」
「たたた、隊長!! こここ・・・このガキ・・・このガキがぁぁ!」
間一髪難を逃れた局員は立っている事も出来ず、その場にへたりこんでしまった。
見ると股間の辺りが湿りだしている。どうやら失禁してしまったようだ。
そして、その失禁した局員の周りには、頭がなくなり地面に転がっているかつての仲間の無残な姿がそこにあった。
「なん・・・だと・・・」
男は言葉を失った。最初に命令を聞いた時は簡単な任務だと思っていた。異世界に居る魔力を持った子供を確保する。過去に何度も行って来た任務だ。失敗する要素など有る筈がない。
そう思っていた。今日この瞬間までは―――
「・・・・・・」
無言。辺りは無言の空気が漂っていた。先の攻撃でその場に居た局員の実に半分が即死した。
残っていた局員達も一瞬で起こったその惨状を前に言葉も出ない。
そんな連中が見守る中、ゆっくりと彼女は立ち上がった。
「・・・・・・邪魔」
ボソリと、そう言ってのけ、立ち上がったなのはは自身を拘束していたバインドを苦も無く引き千切ってみせた。対S級ロストロギア用に用いられる強力なバインドをだ。
その光景を目の当たりにした局員達は皆が青ざめてしまった。
***
自身を拘束していたバインドを引き千切り、なのははその場に放り捨てる。まるでゴミを取り払うかの様に苦も無くそれを引き千切り、周りを見渡す。
さっきまで強気で自分を抑え込んでいた局員達は今では顔面蒼白になりこちらを見ている。
そして、足元にはそいつらの仲間と思わしき躯が転がっていた。
「こいつらが・・・こいつらが・・・こいつらが・・・こいつらが・・・こいつらが!!」
その単語を連呼しながら、なのはは既に事切れていた局員の死体をひたすら踏みつぶし続けた。足を甲板に押し付ける度に肉片の飛び散る光景と形容しがたい音が辺りに響き渡る。
やがて、動かなくなった死体に興味をなくし、今度は生きた標的に視線を向ける。
「ば・・・ばばば・・・化け物・・・こいつぁ・・・化け物だぁ!」
「違う! こいつは悪魔だ! 悪魔の子だぁ!」
口々にそんな事を言って来る。悪魔の子?
別にそれでも構わなかった。こんな奴らに言われても痛くも痒くもないし気にするつもりもない。
何よりも、こいつらを生かしておくつもりなど毛頭なかったからだ。
「私が悪魔なら・・・あんた達は何? ま、どうでも良いか・・・どうせ、お前等全員許さないから!」
なのはの激しいまでの怒りの言葉が発せられた。それと同時になのはの体から凄まじいまでの魔力が放出される。放出された魔力が酸素と結合し、化学反応を起こしたのかどうかは定かではないが、そのせいだろうか?
なのはの体から青白いオーラの様な物があふれ出て来ているのが見えた。
そして、彼女が纏っていた赤黒い色をしたバリアジャケットは、瞬く間に変色し、白と青を基調とした色合いへと変わっていった。
そう、以前ジュエルシード事件の際になのはが纏ったのと同じ色のバリアジャケットの色を―――
「お前らのせいで、私は大事な家族を・・・大切な人を失くした・・・だから・・・お前ら・・・皆・・・ココデコロシテヤル」
つづく
後書き
今回でようやく白いバリアジャケットを纏いましたなのはちゃん。
だけど、雰囲気が今までとまるで違う。ってか、完全にヤバい方向へスイッチさせちゃいました。
次回はかなりグロイ展開になる予定なのでご注意を(;´・ω・)
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